第二部 第42話 そのためにきた
無言聖域
第二部 門戸温泉郷編
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回の第42話では、ライが見せた“終わった未来”に対して、小雪が語る「まだ変えられる未来」が描かれます。
クルミが死ぬことで崩壊する聖域。
その先にある世界の終わり。
ですが未来は、まだ確定していません。
だからこそ、小雪はここへ来ました。
静かな回ですが、聖域にとって「クルミ」という存在がどれほど大きいのか、改めて見えてくる回になっています。
また、第二部第41話「死なせてしまった」は、作者ブログ「DEGUだよ。」にも掲載しています。
ライが見せた未来の話を、あらためて読み返したい方は、ぜひそちらもご覧ください。
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静まり返っていた。
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誰も動けない。
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クルミが死ぬ。
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聖域が壊れる。
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世界が終わる。
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あまりにも。
重すぎる話だった。
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長儒会の老人達の顔色は真っ白だった。
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吉見も。
山城も。
言葉を失っている。
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その中で。
小さな声がした。
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「アレは」
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静かな声。
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「その後の未来だよ」
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全員が止まる。
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いつの間にか。
そこに。
白い少女がいた。
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長い白髪。
赤い瞳。
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ふわりとした空気。
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小雪。
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ココアが振り向く。
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「えっ」
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「小雪!?」
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ジェットが肩を跳ねさせる。
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「いつの間に!?」
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ハクまで驚いていた。
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小雪はくるりと一回転する。
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その瞬間。
張り詰めていた空気が。
少しだけ和らぐ。
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小雪は静かに続けた。
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「未来だから」
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「防げる」
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空気が静かになる。
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小雪は。
長儒会を見る。
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「そのために」
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少し間。
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「ぼくはきたんだ」
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白い瞳が揺れる。
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「きたんだよ?」
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優しい声だった。
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だが。
そこにあるのは。
強い意思。
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長儒会の老人のひとりが。
震える声で言った。
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「……止められるのか」
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小雪は静かにうなずく。
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「うん」
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「だから」
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「やらなければいい」
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シンプルだった。
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捕らえない。
傷つけない。
恐れない。
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それだけ。
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ココアが笑う。
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「小雪らしい!」
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クルミは困ったように笑っていた。
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「大げさだなぁ」
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その瞬間。
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ピシ……
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また空間が揺れる。
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山城が即座に叫ぶ。
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「だから照れるな!!」
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吉見が頭を抱える。
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「なんで感情で世界揺れるんだよ!!」
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小雪はそんなクルミを見る。
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そして。
少し寂しそうに笑った。
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「クルミは」
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「自分がどれだけ大切かわかってない」
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静かな声。
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空気が止まる。
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ももがぎゅっとクルミへ抱きつく。
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「だいじ!」
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コスピもうなずく。
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「必要」
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あいは黙ったまま。
クルミから離れない。
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ハクが静かにつぶやく。
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「聖域は」
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「この者を中心に回っておる」
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長儒会は。
もう理解していた。
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これは。
国家でも。
権力でも。
管理できるものではない。
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その瞬間。
小雪がくるりと回る。
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ふわり。
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白い光が広がった。
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そして。
長儒会の老人達の疲れた顔から。
ほんの少しだけ。
恐怖が消えた。
第二部第42話を読んでいただきありがとうございました。
今回は、小雪の
「未来だから、防げる」
という言葉が中心になる回でした。
ライは“終わった未来”を見せました。
ですが小雪は、その未来を「変えられるもの」として見ています。
同じ未来視でも、二人の在り方は少し違います。
また今回、長儒会側もようやく理解し始めています。
クルミは単なる強者ではなく、
「聖域そのもの」
であること。
だからこそ、失われれば世界そのものが揺らいでしまう。
そして、それを守ろうとする子供達や家族の姿も、今回の大切な要素になっています。
物語はここからさらに、聖域の核心へ近づいていきます。
世界観や登場人物については、作者ブログ「DEGUだよ。」でも少しずつ整理していますので、よろしければご覧ください。
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