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無言聖域ーーデグーたちの記録  作者: おじさんヒーロー
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70/100

第二部 第40話 娘のようなもの

無言聖域

第二部 門戸温泉郷編


ここまで読んでいただきありがとうございます。


今回の第40話では、クルミと三人娘――もも、コスピ、あいの関係が、少し静かな形で描かれます。


聖域の中心。

最強格。

そう呼ばれる存在達であっても、そこにあるのは「家族」の空気です。


そして長儒会もまた、クルミという存在を通して、“聖域”の本当の姿を少しずつ理解していきます。


今回は大きな戦いではありません。


ですが、「何を守ろうとしているのか」が見える回になっています。


作品の設定や登場人物については、作者ブログでも少しずつ整理しています。


https://applebrother.wordpress.com/

第二部 第40話 娘のようなもの


静かだった。


⸻


長儒会はもう。


先ほどまでの余裕を失っている。


⸻


誰も軽口を叩かない。


⸻


ライが見せた未来。


⸻


あれが。


“可能性”でしかないことが。


逆に恐ろしかった。


⸻


クルミは小さく息を吐く。


⸻


そして。


静かに言った。


⸻


「……そっとしておいてほしい」


⸻


空気が止まる。


⸻


クルミは穏やかな声のまま続ける。


⸻


「ぼくたちは」


⸻


「ただ」


⸻


「静かに暮らしたいだけ」


⸻


それは。


願いだった。


⸻


支配でもない。


侵略でもない。


⸻


ただ。


静かに。


家族と。


暮らしたい。


⸻


その瞬間。


⸻


ももが。


クルミの右腕へ抱きつく。


⸻


「クルミ❤️」


⸻


コスピも当然みたいに。


左腕へしがみついた。


⸻


「一緒」


⸻


あいは何も言わない。


⸻


ただ。


そっと。


クルミの背中へ抱きついている。


⸻


長儒会の老人の一人が。


三人をちらりと見た。


⸻


その視線に。


コスピの目が細くなる。


⸻


空気が少し張る。


⸻


だが。


クルミが困ったように笑った。


⸻


「あぁ」


⸻


「この娘たちは」


⸻


「ぼくが育てたので」


⸻


少し間。


⸻


「娘のようなものです」


⸻


沈黙。


⸻


ももが即座に抗議した。


⸻


「ような、じゃないもん!」


⸻


コスピもうなずく。


⸻


「娘」


⸻


あいは無言でさらに抱きつく。


⸻


クルミが少し困る。


⸻


「はいはい」


⸻


「ごめんね」


⸻


長儒会の老人達が。


その様子を静かに見ていた。


⸻


そして。


気づく。


⸻


最強。


聖域の中心。


⸻


そんな存在なのに。


⸻


やっていることは。


普通の父親だった。


⸻


吉見が小さくつぶやく。


⸻


「……なんか」


⸻


山城もうなずく。


⸻


「普通なんだよな」


⸻


ハクが静かに言った。


⸻


「だからじゃ」


⸻


全員がハクを見る。


⸻


ハクはクルミを見たまま続ける。


⸻


「この者は」


⸻


「聖域の中心たりえる」


⸻


空気が静かになる。


⸻


クルミは苦笑していた。


⸻


「大げさだなぁ」


⸻


その瞬間。


⸻


ピシ……


⸻


屋敷の空間がわずかに揺れる。


⸻


誰も触れていない。


⸻


ただ。


クルミが照れただけ。


⸻


長儒会の顔色が変わる。


⸻


山城が頭を抱える。


⸻


「照れて空間歪ませるな!!」


⸻


ココアが笑う。


⸻


「おとうさんだから!」


⸻


玲桜だけが静かだった。


⸻


そして。


小さく目を伏せる。


⸻


“家”。


⸻


それが。


クルミの核なのだと。

第二部第40話を読んでいただきありがとうございました。


今回は、もも、コスピ、あいの三人娘と、クルミの関係が強く描かれる回になりました。


三人にとってクルミは、


「聖域の中心」


である前に、


「育ててくれた人」


です。


だからこそ、自然に寄り添い、守ろうとします。


また、長儒会側から見ると、クルミは世界を揺るがす存在でありながら、やっていることは普通の父親のようにも見えています。


そのギャップこそが、聖域の異質さなのかもしれません。


そして今回、ハクが語った


「だから聖域の中心たりえる」


という言葉も、かなり重要な意味を持っています。


力だけではなく、“家”そのものだからこそ、クルミは中心なのです。



なお、第二部第41話は、作者ブログ「DEGUだよ。」へ先行掲載予定です。


少し先の未来――

ライが見せた「終わった世界」。


よろしければ、そちらもご覧ください。


https://applebrother.wordpress.com/


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