第二部 第38話 愚かな所業
景色が戻る。
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屋敷。
長儒会。
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黒塗りの車。
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全て。
元に戻っていた。
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だが。
誰も動けない。
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山城が膝をついている。
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市役所職員は顔面蒼白。
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黒スーツ達も言葉を失っていた。
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そして。
長儒会の老人達。
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初めて。
表情が崩れていた。
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中央の老人が震える声で言った。
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「……何が」
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「何があったのだ」
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沈黙。
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老人はさらに言う。
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「今のは」
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「なんだ……」
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誰も答えない。
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静かだった。
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その中で。
ハクが一歩前へ出る。
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銀髪が揺れる。
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赤い瞳が。
長儒会を見下ろす。
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そして。
静かに告げた。
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「お前達が」
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少し間。
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「これから行う」
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「愚かな所業の結果を」
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「見せられたのだ」
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空気が凍る。
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老人達が止まる。
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ハクの声は静かだった。
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だが。
そこにあるのは。
竜としての確信。
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「支配なぞ」
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「できぬぞ」
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その瞬間。
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ゴォ……
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空気が揺れる。
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聖域側。
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クルミは何も言わない。
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ただ。
静かに座っている。
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なのに。
その存在だけで。
周囲の空間が安定している。
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ハクが続けた。
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「聖域の中心と」
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「戦うなど」
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少し間。
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「言語道断じゃ」
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その瞬間。
長儒会の一人が震える声で言った。
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「……中心?」
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玲桜が静かに答える。
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「クルミです」
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老人達がクルミを見る。
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クルミは困ったように笑った。
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「そんな大したものじゃないよ」
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その瞬間。
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パキ……
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屋敷の柱へ。
小さな亀裂が入る。
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誰も触れていない。
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ただ。
クルミが少し困っただけ。
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長儒会が凍りつく。
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吉見が小さくつぶやく。
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「今の何」
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玲桜が即答した。
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「空間圧です」
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「もっと怖いこと言うな!!」
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山城が叫ぶ。
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クルミは慌てた。
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「あっ」
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「ごめん」
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その瞬間。
亀裂が戻る。
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何事もなかったように。
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市役所職員が遠い目をした。
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「……神様じゃん」
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ココアが即答する。
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「違うよ?」
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「おとうさん!」
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もも達が嬉しそうにうなずく。
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「おとうさん❤」
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「クルミ好き❤️」
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あいは無言で抱きついていた。
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長儒会の老人達は。
もう理解していた。
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これは。
管理できる存在ではない。
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その瞬間。
ライが小さくつぶやく。
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「……まだ」
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全員がライを見る。
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ライの赤い瞳が。
静かに長儒会を見ていた。
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「今なら」
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少し間。
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「戻れるよ」




