第二部 第36話 長儒会
第二部 第36話 長儒会
黒塗りの車列は。
山奥へ入っていた。
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高速を降り。
さらに奥へ。
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一般人が来る場所ではない。
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やがて。
巨大な門が現れる。
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古い屋敷。
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だが。
空気が違う。
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警備。
監視。
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そして。
“権力”。
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吉見が小さく言った。
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「……なんだここ」
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山城が顔をしかめる。
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「政治家の別荘?」
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玲桜の声が無線から静かに響く。
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『違います』
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『もっと古いものです』
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黒塗りの車が止まる。
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黒スーツ達が降りる。
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クルミも静かに車から降りた。
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その周囲。
デグー達。
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コスピ。
もも。
あい。
黒姫。
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全員がいる。
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ハクは車の上から周囲を見渡した。
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「……ふむ」
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静かな声。
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「呼び出した者達は」
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「肝が据わっておるな」
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ジェットが肩の上で苦笑する。
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「まぁ普通逃げる」
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ハクは小さくうなずいた。
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「クルミと」
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「デグー達を見ても」
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「動じないところは認めよう」
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その瞬間。
屋敷の扉が開く。
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中から。
老人達が現れた。
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七人。
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全員が静かな和装。
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だが。
空気が異常だった。
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“支配する側”の目。
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吉見が本能で理解する。
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「……ヤバい」
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山城も小さくつぶやく。
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「警察の相手じゃねぇ」
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玲桜が静かに告げる。
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『長儒会』
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『裏からこの国を動かしてきた者達です』
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空気が重くなる。
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政界。
財界。
軍。
警察。
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表へ出ない支配者達。
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そして。
彼らは。
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“異世界”すら。
管理できると思っていた。
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中央の老人が。
静かに言う。
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「ようこそ」
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「聖域の代表」
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クルミは小さく笑った。
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「どうも」
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老人達は。
デグー達を見ても。
竜を見ても。
表情を変えない。
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それが逆に異様だった。
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「我々は」
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「対話を望んでいます」
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ハクが小さく鼻を鳴らす。
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「支配ではなく?」
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老人は即答した。
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「共存です」
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その瞬間。
コスピが小さく言った。
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「嘘」
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空気が止まる。
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老人達の目が。
初めて。
デグー達へ向いた。
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クルミは静かだった。
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だが。
玲桜の声だけが。
無線越しに少し低くなる。
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『……始まります』
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その時だった。
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屋敷の奥。
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ずっと静かだった白い小さな影が。
ゆっくり顔を上げた。
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ライだった。
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白銀の毛。
赤い瞳。
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眠そうだった。
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だが。
その瞬間。
ハクが止まる。
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ジェットも。
黒姫も。
玲桜までも。
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空気が変わった。
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ライが。
小さくつぶやく。
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「……あ」
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次の瞬間。
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時間が。
“ずれた”。




