第二部 第35話 高速道路異常あり
高速道路。
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夜。
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黒塗りの車列が走っていた。
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普通ではない。
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なにしろ。
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車の上に。
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銀髪の美少女が仁王立ちしている。
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高速道路で。
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風が吹き荒れる。
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なのに。
少女は微動だにしない。
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長い銀髪だけが揺れている。
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その肩。
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左耳にピアスをした黒いデグー。
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ジェットだった。
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後続車がざわついている。
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「えっ」
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「人いる!?」
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「上に乗ってる!?」
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「撮れ撮れ!!」
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スマホが向けられる。
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だが。
錫の能力か。
映像が乱れる。
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ブレる。
ノイズ。
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そして。
なぜかピントが合わない。
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ハクが静かに言った。
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「飛んだ方が」
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「早い気がするのだが」
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見た目は完全に美少女。
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なのに。
口調が古竜。
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肩のジェットが即答する。
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「目立つからダメだ」
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沈黙。
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その瞬間。
車内から声。
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「聞こえてるぞー」
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クルミだった。
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ハクが少しだけ視線を下げる。
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ジェットが苦笑する。
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「もう十分目立ってるよな」
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無理矢理。
車内へ詰め込まれている山城が死んだ目で言う。
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「翌日のニュースになってそうだよな……」
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吉見も遠い目をした。
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「いや」
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「もうなってるだろ」
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どうやら。
“招致”されたのは。
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クルミだけではなかった。
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吉見。
山城。
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西署側も同行だった。
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市役所側は。
全力で断った。
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だが。
西署側は。
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「現場責任者だから」
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で終わった。
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山城が頭を抱える。
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「なんで俺らなんだよ……」
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吉見が即答する。
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「現場だから」
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「クソが」
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その瞬間。
前方の黒塗りの車。
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窓の奥。
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黒スーツ達が。
何度もバックミラーを見ていた。
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怖いのだ。
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車の上に。
竜が立っている。
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しかも。
時々目が合う。
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ハクが小さく言った。
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「怯えておるな」
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ジェットが肩をすくめる。
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「まぁ」
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「怖いだろ」
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ハクは少し考えた。
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「我は優しいぞ?」
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車内の山城が即答する。
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「説得力ゼロ」
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その瞬間だった。
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ゴォォ……
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空の上。
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さらに巨大な影が並走していた。
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竜。
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飛行訓練隊だった。
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吉見が窓から見上げる。
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「……護衛か」
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玲桜の声が無線から静かに響く。
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『当然です』
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『聖域の中心が外へ出ていますので』
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山城が遠い目をした。
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「国家元首かよ……」
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その瞬間。
高速道路脇の電光掲示板が。
一瞬だけ。
文字化けした。




