第二部 第34話 連れだ
西署前。
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黒塗りの車が並ぶ。
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重い空気。
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黒スーツ達は緊張していた。
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目の前にいるのは。
聖域の中心。
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クルミ。
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誰もが理解していた。
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この存在は。
軽く扱ってはいけない。
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黒スーツの男が。
静かに車のドアを開ける。
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「どうぞ」
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「お入りください」
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「ご案内します」
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丁寧だった。
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先ほどまでとは明らかに違う。
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クルミは小さく笑った。
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「ありがとう」
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そして。
車へ向かう。
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……はずだった。
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ダダダダッ!!
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突然。
小さな影が走り込んでくる。
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黒スーツ達が止まる。
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「なっ!?」
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「どこから!?」
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デグーだった。
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一匹。
二匹。
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いや。
もっといる。
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黒。
白。
銀。
茶。
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小さなもの達が。
次々とクルミへ駆け寄る。
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ココア。
黒姫。
コスピ。
あい。
もも。
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さらに。
いっちゃん達までいる。
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黒スーツ達が完全に混乱した。
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「待て待て待て!!」
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「どこにいた!?」
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「いつの間に!?」
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吉見が遠い目をする。
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「始まった」
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山城が小さく言う。
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「聖域側の本気だ」
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クルミは困ったように笑った。
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「みんな」
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「来ちゃったのかい」
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ももが当然のように言う。
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「行くもん❤️」
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コスピもうなずく。
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「一緒」
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あいは無言で。
クルミの服を掴んでいる。
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黒スーツの男が言葉を失う。
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「……これは」
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「どういう」
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クルミが静かに答えた。
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「構わないでくれ」
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少し間。
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「連れだ」
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沈黙。
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市役所側が吹き出しそうになる。
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「連れ……」
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ジェットが肩を震わせる。
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「雑!!」
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ココアが笑う。
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「家族って意味だよ!」
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黒姫が静かに補足する。
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「護衛でもあります」
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その瞬間。
黒スーツ達の顔色が変わる。
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小さい。
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可愛い。
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だが。
本能が理解していた。
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“危険”
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特に。
コスピ。
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漆黒の瞳が。
全員を観察している。
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あいの周囲には。
小さな火が揺れていた。
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ももが笑う。
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だが。
空気が妙に色っぽい。
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黒スーツの一人が顔を逸らした。
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「なんなんだこいつら……」
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玲桜が静かに言った。
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「聖域の子供達です」
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その一言で。
さらに空気が重くなる。
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クルミは小さくため息をついた。
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「……大丈夫かなぁ」
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月なら絶対止める。
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だが。
スピネルは笑って送り出した。
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つまり。
許可済みだった。




