第二部 第33話 三人娘
聖域には。
十七匹の子供達がいた。
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最初に五匹。
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次が六匹。
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その次が六匹。
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全部で十七匹。
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黒。
銀。
灰。
茶
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様々な毛色。
様々な力。
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だが。
共通していることがあった。
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この子達の親は。
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月。
そして。
スピネル。
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月は。
子供達をあまり構わなかった。
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嫌いなわけではない。
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ただ。
不器用だった。
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静かに見守るだけ。
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何も言わない。
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スピネルは違う。
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ただ。
愛していた。
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圧倒的なほどに。
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だが。
子供達を育てていたのは。
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クルミだった。
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ご飯。
寝床。
怪我。
喧嘩。
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泣けば抱き上げ。
怖がれば隣にいた。
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だから。
子供達は自然に呼んだ。
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「おとうさん」
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クルミを。
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ももが笑う。
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「おとうさん、だいすき❤」
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コスピが当然のように言う。
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「ずっと一緒❤️」
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あいは。
何も言わない。
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ただ。
そっとクルミへ抱きついていた。
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クルミは困った顔で笑う。
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「はいはい」
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「みんな甘えん坊だねぇ」
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子供達は知っている。
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実の父は。
月。
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だが。
育ててくれたのは。
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クルミ。
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だから。
“おとうさん”だった。
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ある日のこと。
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いつものように。
クルミが庭にいた。
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ももが近づいてくる。
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だが。
少し違った。
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そして。
小さく言った。
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「……クルミ」
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クルミが止まる。
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「え?」
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今までずっと。
おとうさんだった。
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コスピも静かに続ける。
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「クルミ」
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あいが止まったまま動けない。
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コスピが。
そっと背中を押す。
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あいが小さく言った。
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「……クルミ」
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クルミは戸惑った。
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困ったように笑う。
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「どうしたんだい?」
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三人は顔を見合わせる。
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少し照れたように。
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でも。
嬉しそうに。
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その日から。
三人の態度が変わった。
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距離が近い。
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視線が違う。
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外へ出る時。
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必ず。
そこにいる。
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クルミが聖域を出る時。
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もも。
コスピ。
あい。
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三人娘は。
必ず隣に立っていた。
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月は何も言わない。
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ただ。
少しだけ。
不機嫌そうだった。
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スピネルは。
静かに笑っていた。
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そして。
玲桜は理解していた。
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“変わった”のだと。
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家族として。
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そして。
それ以上に。




