表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無言聖域ーーデグーたちの記録  作者: おじさんヒーロー
PR
62/94

第二部 第32話 おとうさん

通路側の空気が揺れる。



温泉街とも。


竜とも違う。



もっと深い。



“聖域そのもの”の気配。



黒姫が止まった。



「……どうして」



声が震えている。



ココアも笑顔を消した。



玲桜が静かに目を細める。



動いてはいけないものが。


動いた。



通路の奥。



静かに。


ひとりの男が現れる。



柔らかな空気。


穏やかな瞳。



だが。


その存在感だけで。


周囲の空間が安定する。



クルミ。



市役所側は理解できない。



だが。


本能だけが告げていた。



“中心だ”



黒姫が小さくつぶやく。



「……おとうさん」



沈黙。



黒スーツ達が止まる。



吉見も止まる。



山城が聞き返す。



「……え?」



市役所職員が完全停止した。



「お、おとうさん……?」



ココアが普通にうなずく。



「うん」



「おとうさん」



ハクまで止まっていた。



ジェットが小さく肩をすくめる。



「出てきちゃったかぁ」



クルミは静かに歩いてくる。



怒ってはいない。



むしろ穏やかだった。



それが。


逆に怖い。



クルミは静かに言った。



「今回は」



「ぼくが来た方がいい」



少し間。



「三人一致の意見だよ」



玲桜が小さく目を伏せる。



三人。



クルミ。


スピネル。


月。



聖域の核。



クルミは。


西署前の黒塗りの車をちらりと見る。



「……アレは」



「迎えなんだろう?」



空気が凍る。



黒スーツ達が息を呑む。



クルミは静かに言った。



「なら」



「行く」



その瞬間。


黒姫が前へ出る。



「でも!」



珍しく。


感情が強かった。



「おとうさんは……!」



だが。


ココアがそっと黒姫を制した。



「黒姫」



静かな声だった。



ココアも。


もう笑っていない。



そして。


真っ直ぐ言った。



「私たちも行く」



黒姫がココアを見る。



ココアは静かに続けた。



「絶対に」



「何もさせない」



少し間。



「わたしたちのおとうさんには」



空気が静かになる。



その瞬間。


西署の全員が理解した。



スピネルが“最強”。



なら。



クルミは。



“聖域そのもの”なのだと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ