第二部 第31話 白銀の竜
西署の灯りが落ちる。
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闇。
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誰も動けなかった。
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窓の外。
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巨大な竜の眼だけが。
黒塗りの車を見下ろしている。
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黒スーツ達の顔色が変わる。
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「な……」
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「なんだあれ……」
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その瞬間だった。
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ゴォォォ……
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風。
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巨大な影が降下する。
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西署前の道路へ。
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ズゥゥン……
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静かな着地。
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黒塗りの車が揺れる。
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だが。
現れたのは。
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白銀の美少女。
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長い銀髪。
透き通る瞳。
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そして。
その肩。
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黒いデグーが乗っていた。
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左耳には。
銀のピアス。
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ジェットだった。
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市役所側が止まる。
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「乗ってる……」
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吉見が小さく言う。
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「またか」
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山城が遠い目をした。
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「もう驚かん」
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白銀の少女が。
静かに黒塗りの車を見る。
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その空気だけで。
周囲が圧迫される。
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そして。
少女の口から。
静かな声が落ちた。
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「何故に」
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少し間。
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「お主らは」
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「無遠慮に」
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「我らを探ろうとするのじゃ」
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空気が凍る。
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黒スーツ達が言葉を失う。
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少女の声は美しい。
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だが。
そこにあるのは。
怒りだった。
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肩のジェットが小さく言う。
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「まぁまぁ」
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「ハク」
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白銀の少女。
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ハクが静かに目を細める。
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「ジェットは甘い」
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「我らは」
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「世界を失ったのだぞ」
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空気が静かになる。
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黒スーツの男が一歩前へ出た。
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「我々は確認を――」
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その瞬間だった。
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ゴッ……
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見えない圧力。
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男が膝をつく。
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「ぐっ……!?」
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市役所職員達が青ざめる。
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ハクは冷たい目を向けたまま。
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「確認?」
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「測定?」
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「解剖でもする気か?」
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空気が凍る。
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黒スーツ達が動けない。
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玲桜が静かに前へ出る。
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「ハク」
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ハクが少しだけ玲桜を見る。
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玲桜は静かだった。
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「落ち着いてください」
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少し間。
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「まだ」
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「敵ではありません」
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ハクはしばらく黙っていた。
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そして。
小さく息を吐く。
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圧が消える。
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黒スーツ達が崩れるように息を吐いた。
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ココアが小さく笑う。
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「怒ると怖いよね」
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黒姫もうなずく。
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「竜ですので」
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ジェットが肩の上で苦笑する。
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「だから言ったじゃん」
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「あんまり刺激すんなって」
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その瞬間だった。
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西署の奥。
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通路側から。
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さらに別の気配が現れた。




