第二部 第30話 戦争でも?
西署。
特殊案件捜査課。
⸻
空気は重かった。
⸻
黒スーツ達。
監視。
そして。
西署の外に停まる黒塗りの車。
⸻
明らかに。
“普通の案件”ではない。
⸻
だが。
そんな空気の中。
ココアがぽつりと言った。
⸻
「わたし」
⸻
「やっぱり安城さん好き❤️」
⸻
沈黙。
⸻
黒スーツ達が止まる。
⸻
吉見が吹き出しそうになる。
⸻
山城が顔を逸らした。
⸻
安城は。
ほんの少しだけ固まった。
⸻
「……は?」
⸻
ココアはケロッとしている。
⸻
「だって」
⸻
「ちゃんと言ってくれるんだもん」
⸻
「偉い人とか関係なく」
⸻
「ダメなことダメって」
⸻
安城は少し黙った。
⸻
そして。
小さく眼鏡を押し上げる。
⸻
「……当然です」
⸻
ココアが嬉しそうに笑う。
⸻
「好き!」
⸻
黒姫が静かに言った。
⸻
「懐かれましたね」
⸻
山城が小さくつぶやく。
⸻
「終わったな」
⸻
吉見もうなずく。
⸻
「聖域側に認定された」
⸻
安城が少し困った顔をする。
⸻
だが。
次の瞬間。
⸻
ココアの表情が変わった。
⸻
真面目だった。
⸻
そして。
窓の外を見る。
⸻
「さて」
⸻
静かな声。
⸻
「戦争でも始めるつもりなのかな?」
⸻
空気が凍る。
⸻
黒スーツ達が止まる。
⸻
玲桜も静かに窓の外を見る。
⸻
西署前。
⸻
黒塗りの車。
⸻
その向こう。
⸻
さらに。
“別の車”が来ていた。
⸻
アンテナ。
黒いガラス。
⸻
そして。
隠す気のない監視機材。
⸻
錫が小さく言う。
⸻
「盗聴」
⸻
「映像記録」
⸻
「電波解析」
⸻
ソラが続ける。
⸻
「こちら側の測定開始」
⸻
吉見が顔をしかめる。
⸻
「……本部か」
⸻
山城が小さくつぶやく。
⸻
「いや」
⸻
「もっと上だ」
⸻
空気が静かになる。
⸻
ココアは笑っていなかった。
⸻
「やめた方がいいのに」
⸻
静かな声。
⸻
「聖域を」
⸻
「敵に回すの」
⸻
その瞬間だった。
⸻
ゴォ……
⸻
外の空気が揺れる。
⸻
温泉街側。
⸻
通路の奥から。
巨大な気配が動いた。
⸻
黒スーツ達の顔色が変わる。
⸻
玲桜が静かに言う。
⸻
「警告です」
⸻
「まだ」
⸻
「こちらは我慢しています」
⸻
その瞬間。
西署の照明が全部落ちた。
⸻
闇。
⸻
そして。
窓の外。
⸻
巨大な“竜の眼”が。
黒塗りの車を見下ろしていた。




