第二部 第29話 訂正させていただきます
西署。
特殊案件捜査課。
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空気が張り詰めていた。
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黒スーツの男達。
本部特別監査室。
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そして。
玲桜。
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男が言った。
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「お前が玲桜か」
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その瞬間だった。
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空気が止まる。
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ココアが目を細める。
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黒姫も静かに視線を向ける。
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吉見が小さくつぶやく。
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「……あーあ」
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山城が頭を押さえる。
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「踏んだな」
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だが。
一番先に動いたのは。
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安城だった。
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静かに。
だが。
一歩前へ出る。
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そして。
毅然と言った。
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「あなた方」
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黒スーツ達が安城を見る。
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安城は一切引かなかった。
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「何か」
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「大変な勘違いをしているようですので」
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少し間。
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「訂正させていただきます」
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空気が変わる。
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黒スーツの男が眉をひそめる。
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「……何?」
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安城は静かに続けた。
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「誰が」
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「どのような報告をされたかは存じません」
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「ですが」
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玲桜へ一瞬視線を向ける。
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「ここにいらっしゃる方々は」
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「聖域の代表として来られているのです」
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市役所側が止まる。
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吉見も少し驚いていた。
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安城は続ける。
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「決して」
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「どこの誰とも名乗らない者が」
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少し強く。
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「呼び捨てにして良い方ではありません」
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沈黙。
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黒スーツ達の空気が変わる。
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だが。
玲桜は静かだった。
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むしろ。
少し困った顔をしている。
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ココアが小さく言う。
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「安城さん怒ってる」
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黒姫が静かにうなずく。
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「かなり」
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男が低い声で言った。
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「……警察が異世界側につくのか」
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その瞬間。
安城の目が冷えた。
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「違います」
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即答。
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「私は」
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「現場側です」
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空気が止まる。
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安城は静かに続けた。
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「あなた方は報告書しか見ていない」
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「ですが」
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「私は見ています」
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「ここで生活している人達を」
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『小料理屋 未唯』
温泉街。
帰還者。
子供達。
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安城の中で。
全部繋がっていた。
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「彼らは」
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「管理対象ではありません」
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「住民です」
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その瞬間。
温泉街の鐘が鳴る。
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玲桜が静かに安城を見る。
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そして。
小さく言った。
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「……ありがとうございます」
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安城は少しだけ目を伏せた。
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その時だった。
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パチッ。
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部屋の電気が一瞬消える。
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錫が小さくつぶやく。
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「……来ましたね」
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ソラが窓の外を見る。
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「監視開始」
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黒スーツ達が振り向く。
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西署の外。
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黒塗りの車の窓に。
“何か”が映っていた。




