第二部 第28話 特殊案件捜査課
西署の前。
⸻
黒塗りの車が止まっていた。
⸻
一台。
二台。
⸻
普通ではない。
⸻
市役所職員達が窓から見る。
⸻
「……誰だあれ」
⸻
吉見が顔をしかめる。
⸻
「来たか」
⸻
山城が疲れた顔で言った。
⸻
「面倒なのが」
⸻
黒いスーツ。
無駄のない動き。
⸻
明らかに。
普通の警察ではない。
⸻
その男達が。
西署の奥へ入っていく。
⸻
『門戸温泉郷担当部(仮)』
⸻
そう書かれていたはずのドア。
⸻
だが。
今は違った。
⸻
『特殊案件捜査課』
⸻
マジックで書き換えられている。
⸻
市役所職員が止まる。
⸻
「変わってる……」
⸻
ココアが笑う。
⸻
「昇格?」
⸻
山城が即答する。
⸻
「嫌な方向にな」
⸻
その瞬間。
ドアが開く。
⸻
黒スーツの男達が入ってくる。
⸻
空気が変わる。
⸻
先頭の男が言った。
⸻
「西署特殊案件捜査課」
⸻
「責任者は」
⸻
安城が静かに立ち上がる。
⸻
「安城です」
⸻
男は書類を差し出した。
⸻
「本部特別監査室」
⸻
「異常事案対応班」
⸻
市役所側が小さくつぶやく。
⸻
「名前からして嫌だ……」
⸻
男は部屋を見渡す。
⸻
通路資料。
異世界住民登録。
温泉郷地図。
⸻
そして。
普通に座っているココア達。
⸻
男の眉がわずかに動く。
⸻
「……本物か」
⸻
ココアがニコッと笑う。
⸻
「本物だよ?」
⸻
黒姫が静かに言う。
⸻
「何を確認しに?」
⸻
男は少し黙った。
⸻
そして。
低い声で言った。
⸻
「“消えた案件”だ」
⸻
空気が止まる。
⸻
吉見が顔をしかめる。
⸻
「……どっちの」
⸻
男は即答した。
⸻
「両方だ」
⸻
市役所側が止まる。
⸻
「両方?」
⸻
男は資料を机へ置く。
⸻
写真。
⸻
行方不明者。
⸻
そして。
監視カメラ映像。
⸻
“映ってはいけないもの”が映っていた。
⸻
市役所職員が青ざめる。
⸻
「これ……」
⸻
玲桜は静かだった。
⸻
男が玲桜を見る。
⸻
「お前が」
⸻
「玲桜か」
⸻
玲桜も静かに視線を返す。
⸻
空気が少し揺れる。
⸻
ココアが小さく言った。
⸻
「……なんか嫌」
⸻
黒姫も静かだった。
⸻
錫が小さくつぶやく。
⸻
「監視系」
⸻
ソラが窓の外を見る。
⸻
「増えますね」
⸻
安城は男から書類を受け取る。
⸻
そして。
小さく息を吐いた。
⸻
「……始まりましたね」
⸻
その瞬間。
西署の外で。
また一台。
黒塗りの車が止まった。




