第二部 第22話 崩壊の獣
無言聖域
第二部 門戸温泉郷編
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回の第22話では、門戸温泉郷へ“危険存在”が現れます。
異世界。
通路。
竜。
これまで様々な存在が登場してきました。
ですが今回現れるものは、それらとは明らかに違う存在です。
見てはいけない。
理解してはいけない。
名前すら危険。
そんな、“世界を壊す側”の存在が、ついにこちらへ姿を現します。
そして、この回では金竜の少女の過去にも少し触れられていきます。
作品の設定や登場人物については、作者ブログでも少しずつ整理しています。
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「通路が開いた!!」
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温泉街に緊張が走る。
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玲桜が静かに立ち上がる。
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ココア達も笑顔を消した。
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空気が違う。
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吉見が気づく。
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「……なんだ?」
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山城も顔を上げる。
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「嫌な感じがする」
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その瞬間だった。
通路の奥。
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黒い影。
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ゆっくり。
こちらへ近づいてくる。
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最初は形がわからなかった。
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獣なのか。
人なのか。
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判別がつかない。
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だが。
わかることがひとつだけあった。
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禍々しい。
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その存在そのものが。
空気を圧迫している。
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温泉街の湯気が揺れる。
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住民達の顔色が変わる。
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「……やばい」
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誰かが小さく言った。
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全員が同じことを思っていた。
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“やばいものが来た”
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その瞬間だった。
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バァン!!
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黒い存在の周囲へ。
光の結界が展開される。
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空気が震える。
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市役所職員達が悲鳴を上げた。
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「なっ!?」
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「結界!?」
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玲桜が静かに前へ出る。
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黒姫。
ソラ。
錫。
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全員が戦闘態勢だった。
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その時。
上空から。
巨大な影が降りてくる。
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金色の竜。
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だが。
着地した瞬間。
少女の姿へ変わった。
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長い金髪。
黄金の瞳。
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そして。
震える声。
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「……来てしまったか」
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ココアが振り向く。
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「知ってるの?」
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少女は黒い存在を見たまま答えた。
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「私たちの世界の」
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少し間。
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「崩壊原因です」
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空気が止まる。
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市役所側が凍りつく。
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少女は続けた。
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「ここへ逃げてきたのは」
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「こいつのせい」
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声が震えていた。
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「向こうにはもう」
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「生物は何もいない」
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沈黙。
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温泉街が静まり返る。
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誰も動かない。
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黒い存在は。
結界の中で。
ゆっくり蠢いていた。
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獣のようで。
人のようで。
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見ているだけで。
頭が痛くなる。
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市役所職員が後ずさる。
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「な、なんなんだよ……」
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玲桜が静かに言った。
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「認識災害型」
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吉見が聞き返す。
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「は?」
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玲桜は黒い存在から目を離さない。
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「見るほど」
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「理解するほど」
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「侵食されます」
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市役所側の顔色が変わる。
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ココアが珍しく真面目だった。
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「だから見ないで」
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黒姫が静かに言う。
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「思考を合わせないでください」
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ソラも続ける。
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「名前を考えない」
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「正体を想像しない」
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錫が小さく言った。
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「それだけで近づきます」
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市役所職員達が青ざめる。
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「怖すぎるだろ!!」
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その瞬間だった。
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ビキ……
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結界に亀裂が入る。
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空気が凍る。
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金竜の少女が小さく震えた。
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「逃げて」
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「これは」
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「世界を壊す」
第二部第22話を読んでいただきありがとうございました。
今回は、「認識災害型存在」という非常に危険な存在が登場しました。
ただ強いだけではありません。
理解するほど侵食される。
認識することで近づいてくる。
それは、普通の“怪物”とはまったく違う脅威です。
また、金竜の少女の
「私たちの世界の崩壊原因です」
という言葉からも分かるように、実際に世界そのものを滅ぼした存在でもあります。
つまり、門戸温泉郷へ逃げてきた異世界住民達の中には、“滅びた世界”から来た者達もいるということになります。
そして今回、玲桜達が即座に戦闘態勢へ入ったことからも、彼らが単なる温泉街の住民ではないことが改めて描かれました。
門戸温泉郷は、優しいだけの場所ではありません。
ここは、“外側”から世界を守る境界でもあります。
ブログでも世界観や登場人物について整理していますので、よろしければそちらもご覧ください。
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