第二部 第16話 竜の飛行訓練隊
無言聖域
第二部 門戸温泉郷編
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回の第16話では、門戸温泉郷の空を飛ぶ「竜の飛行訓練隊」について、さらに描かれていきます。
空を飛ぶ竜達。
それを普通に見送る住民達。
そして、まだ現実へ追いつけない市役所側。
異世界でありながら、ここにはすでに“生活”と“役割”があります。
また、竜達が単なる強大な存在ではなく、門戸温泉郷を支える一員でもあることが少しずつ見えてくる回になります。
作品の設定や登場人物については、作者ブログでも少しずつ整理しています。
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空の向こう。
巨大な影が揺れていた。
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市役所側が青ざめる。
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「ま、まだいるのか!?」
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吉見が遠い目をする。
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「いる」
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山城も疲れた顔で言った。
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「しかも増える」
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市民課職員が頭を抱える。
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「なんなんですかここ……」
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ジェットは空を見上げたまま笑っていた。
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「あー」
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「来た来た」
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その瞬間だった。
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ゴォォォォ……
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風圧。
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温泉街の湯気が吹き飛ぶ。
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空を。
数体の竜が飛んでいく。
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赤。
白。
銀。
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それぞれ姿も大きさも違う。
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市役所側が完全停止した。
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「増えたぁぁぁっ!!」
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ココアが笑う。
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「今日は飛行訓練!」
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「訓練!?」
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ジェットが小さくうなずく。
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「変身しなくても飛べるけどさ」
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「竜の飛行訓練隊兼ねてるんだよな」
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玲桜が静かに補足する。
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「現在」
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「長距離移動」
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「物資輸送」
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「通路上空警戒」
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「観光誘導」
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「様々な用途があります」
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市民課職員が震える声で言った。
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「観光誘導って何」
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ココアが元気に答える。
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「空から案内!」
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「やめろ!!」
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ジェットが笑う。
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「まぁ最初はみんな叫ぶ」
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黒姫が静かに言う。
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「落ちなければ大丈夫です」
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「落ちる可能性あるの!?」
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錫が静かに補足する。
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「初心者はたまに」
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「怖い怖い怖い!!」
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その瞬間だった。
空から一体の銀竜が急降下してくる。
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ドォン!!
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着地。
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温泉街が少し揺れる。
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市役所側が悲鳴を上げた。
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だが。
銀竜は普通に言った。
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「腹減った」
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市役所側が止まる。
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ココアが笑う。
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「おかえりー」
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銀竜が光に包まれる。
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現れたのは。
銀髪の青年。
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市民課職員が遠い目をする。
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「もう誰が誰なんだ……」
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玲桜が小さく言った。
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「訓練は大切です」
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ジェットも真面目な顔になる。
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「通路増えてるからな」
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空を見る。
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「飛べる奴が必要なんだ」
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その瞬間。
温泉街の上空を。
竜達が旋回した。
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巨大な翼。
響く風。
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だが。
門戸温泉郷の住民達は。
もう誰も驚かない。
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子供達が手を振る。
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旅館の女将が笑う。
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温泉へ浸かっていた老人が言った。
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「今日は多いねぇ」
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市役所側だけが。
まだ現実へ追いついていなかった。
第二部第16話を読んでいただきありがとうございました。
今回は、「竜の飛行訓練隊」という存在が正式に描かれました。
ジェット達は、ただ空を飛んでいるわけではありません。
通路上空の警戒。
物資輸送。
長距離移動。
そして、増え続ける通路への対応。
門戸温泉郷が広がるほど、彼らの役割も大きくなっています。
また、温泉街の住民達が、竜を見ても普通に生活している様子からも、“こちら側”ではすでにそれが日常になっていることが分かります。
一方で、市役所側の人間達はまだ完全に理解しきれていません。
ですが、少しずつ「異世界を受け入れるしかない現実」へ近づき始めています。
ここから先は、さらに様々な種族や、門戸温泉郷を支える仕組みも描かれていくことになります。
ブログでも世界観や登場人物について整理していますので、よろしければそちらもご覧ください。
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