第二部 第15話 飛行訓練
無言聖域
第二部 門戸温泉郷編
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回の第15話では、門戸温泉郷の「空」を守る存在達――竜達が登場します。
巨大な竜。
飛行訓練。
そして、それを当然のように受け入れている温泉郷の日常。
普通の人間から見れば恐怖でしかない存在も、こちら側ではすでに“住民”として暮らしています。
また、玲桜とジェットの関係も少し描かれる回になります。
作品の設定や登場人物については、作者ブログでも少しずつ整理しています。
https://applebrother.wordpress.com/
門戸温泉郷の空に。
巨大な影が差した。
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ゴォォォ……
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風が揺れる。
湯気が流れる。
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市役所職員達が止まる。
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西署側も空を見上げた。
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「……何だあれ」
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市民課の男が青ざめる。
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「ドラゴン!?」
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巨大だった。
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黒い翼。
長い尾。
鋭い爪。
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空を横切るたび。
空気そのものが震える。
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「嘘だろ!?」
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「大丈夫なのかよ!!」
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上空を。
黒い巨大な影が通り過ぎていく。
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温泉街の住民達は。
普通だった。
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「あー」
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「今日は飛ぶ日か」
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「風強いなぁ」
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市役所側だけが混乱している。
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吉見が小さく言う。
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「慣れろ」
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「無理です!!」
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山城も空を見上げる。
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「いや俺もまだ怖い」
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その瞬間だった。
玲桜が静かに言った。
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「今日は」
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「ジェット飛行訓練だって言ってましたね」
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市役所側が振り返る。
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「飛行訓練?」
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玲桜は普通だった。
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「はい」
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「最近、長距離移動が増えているので」
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市民課職員が震える声で聞く。
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「……誰が?」
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玲桜が静かに答えた。
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「ジェットです」
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その瞬間だった。
空から声が響く。
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「おーい!!」
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ドラゴンが。
急降下してきた。
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「うわぁぁぁっ!!」
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市役所側が悲鳴を上げる。
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だが。
地面へ着く直前。
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巨大な身体が光に包まれる。
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そして。
そこに立っていたのは。
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黒髪の青年。
耳には銀のピアス。
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ジェットだった。
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市役所側が止まる。
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「……人?」
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ココアが笑う。
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「変身できるよ!」
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「先に言え!!」
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ジェットは普通に手を振った。
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「玲桜ー!」
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玲桜が小さくうなずく。
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「お疲れさまです」
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ジェットが近づいてくる。
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かなり仲が良さそうだった。
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市民課職員が小さく聞く。
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「知り合い……?」
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ココアが答える。
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「兄弟」
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「兄弟!?」
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黒姫が静かに補足する。
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「とても仲が良いです」
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ジェットが笑う。
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「玲桜が耳開けたんだよ」
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市役所側が止まる。
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「耳?」
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ジェットがピアスを指差す。
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「これ」
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玲桜は静かだった。
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「頼まれましたので」
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ジェットが楽しそうに笑う。
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「最初めっちゃ怒ってた」
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玲桜が少し目を逸らす。
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「動いたので」
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ココアが吹き出した。
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「ジェット暴れたんだよね!」
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マロくんも笑う。
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「泣いてた」
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ジェットが抗議する。
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「泣いてない!!」
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温泉街に笑い声が広がる。
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市役所側だけがまだ固まっていた。
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市民課の男が小さくつぶやく。
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「……ドラゴンがピアス」
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吉見が肩を叩く。
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「もう考えるな」
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その瞬間だった。
ジェットが空を見る。
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「ん?」
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玲桜も視線を上げる。
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空の向こう。
さらに大きな影が揺れていた。
第二部第15話を読んでいただきありがとうございました。
今回は、門戸温泉郷の空を飛ぶ竜達と、「竜の飛行訓練隊」が描かれました。
ジェット達は変身して人型になることもできますが、本来は竜として飛ぶ存在です。
そしてその飛行能力は、単なる力ではなく、
・長距離移動
・通路上空の警戒
・物資輸送
・観光誘導
など、門戸温泉郷そのものを支える役割にもなっています。
また、玲桜とジェットの兄弟らしい関係や、ピアスの話など、少し日常的な空気も描かれました。
一方で、市役所側から見れば、竜が普通に温泉街を飛び回っている時点で、すでに理解の限界を超えています。
ですが門戸温泉郷では、それもまた「日常」です。
ここから先は、さらに様々な種族や、“こちら側”で暮らす住民達の姿も描かれていきます。
ブログでも世界観や登場人物について整理していますので、よろしければそちらもご覧ください。
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