第二部 第14話 出張所完成済み
無言聖域
第二部 門戸温泉郷編
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回の第14話では、門戸温泉郷の中に設けられた「出張所」が登場します。
異世界。
温泉郷。
そして合同庁舎。
普通ではありえない組み合わせですが、門戸温泉町はすでに「人が暮らす町」として動き始めています。
住民登録。
観光受付。
通路管理。
こちら側も、少しずつ“現実”として整備され始めています。
ですが、その空気は相変わらず少し緩く、どこか門戸温泉郷らしいままです。
作品の設定や登場人物については、作者ブログでも少しずつ整理しています。
https://applebrother.wordpress.com/
門戸温泉郷の湯気が揺れる。
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市役所派遣組はまだ呆然としていた。
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温泉。
旅館。
異世界住民。
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しかも。
普通に生活している。
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山城が小さく言った。
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「……ほんとに町だ」
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吉見もうなずく。
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「しかも発展してる」
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ココアは楽しそうだった。
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「でね!」
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嫌な予感しかしない。
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ココアがビシッと指をさす。
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「出張所はあります!」
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市役所側が止まる。
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「……は?」
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ココアがニコニコしている。
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「見えますか?」
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指差した先。
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温泉街の少し奥。
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そこには。
小さいながらも。
立派な建物が建っていた。
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白い壁。
木造の屋根。
落ち着いた外観。
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しかも。
かなりしっかりしている。
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市役所側が固まる。
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「……え」
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「早くない?」
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吉見が小さく言う。
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「もう作ったのか」
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ココアが胸を張る。
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「うん!」
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山城が建物を見る。
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「……合同庁舎ってやつ?」
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ココアが元気にうなずく。
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「そう!」
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「部屋いっぱいあるよ!」
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市役所側がさらに止まる。
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「部屋?」
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ココアが当たり前みたいに続けた。
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「どこでも好きなとこ使ってよし!」
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沈黙。
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吉見が頭を押さえる。
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「軽いなぁ……」
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黒姫が静かに補足する。
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「西署側」
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「市役所側」
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「住民対応」
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「通路管理」
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「観光受付」
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「一応分けてあります」
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市役所側が止まる。
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「観光受付!?」
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ソラが静かにうなずく。
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「必要です」
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錫が続ける。
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「予約管理も」
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山城が遠い目をする。
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「ほんとに観光地化してる……」
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その瞬間だった。
合同庁舎の入口が開く。
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中から。
エルフの女性が出てきた。
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普通に書類を抱えている。
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「すみません」
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「住民登録はこちらで?」
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市役所派遣組が完全停止した。
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ココアが笑顔で答える。
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「うん!」
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そして。
後ろを振り返る。
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「ほら!」
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「仕事きたよ!」
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市役所職員達の顔が死んだ。
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安城だけは静かだった。
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ゆっくり。
合同庁舎を見上げる。
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そして。
小さく息を吐く。
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「……始まっていますね」
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玲桜が静かにうなずく。
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「はい」
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「もう止まりません」
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その瞬間。
温泉街に鐘の音が響いた。
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湯気が揺れる。
笑い声が聞こえる。
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門戸温泉郷は。
今日も。
少しずつ広がっていた。
第二部第14話を読んでいただきありがとうございました。
今回は、門戸温泉郷がさらに「町」として形を持ち始める回になりました。
特に、合同庁舎や出張所の存在は、「異世界だから管理できない」ではなく、「異世界でも人が暮らしている以上、管理や生活基盤が必要」という流れを象徴しています。
一方で、それを当然のように受け入れているココア達と、まだ理解が追いつかない市役所側との温度差もかなり大きく描かれています。
また、エルフの女性が普通に住民登録へ来る場面など、門戸温泉郷では“異世界住民の日常”がすでに当たり前になり始めています。
そして玲桜の
「もう止まりません」
という言葉。
これは、世界樹が根づき、門戸温泉郷が“存在する世界”として動き始めたことを意味しています。
ここから先は、さらに多くの住民達や、現実側との関わりも増えていくことになります。
ブログでも世界観や登場人物について整理していますので、よろしければそちらもご覧ください。
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