第二部 第12話 こちら側
無言聖域
第二部 門戸温泉郷編
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回の第12話では、ついに市役所側の人間達も「通路」を通り、門戸温泉郷へ足を踏み入れることになります。
異世界。
世界樹。
通路。
これまでは話の中だけだったものが、ついに「現実」として目の前に現れ始めます。
一方で、こちら側の住人達は相変わらず自然体です。
怖がる市役所職員達との温度差も含めて、門戸温泉郷らしい空気の回になっています。
作品の設定や登場人物については、作者ブログでも少しずつ整理しています。
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市役所派遣組は呆然としていた。
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完全に。
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話についていけていない。
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異世界。
世界樹。
適合。
呼ばれた。
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しかも。
西署側はもう普通に会話している。
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市役所側の男が小さく言った。
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「……スルーされてません?」
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誰も否定しなかった。
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吉見が肩を叩く。
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「慣れろ」
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「無理です!!」
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ココアが吹き出した。
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黒姫も少し笑う。
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安城は静かだった。
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そして。
玲桜へ視線を向ける。
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玲桜が小さくうなずいた。
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「では」
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静かな声。
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「ついてきてください」
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沈黙。
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市役所派遣組が止まる。
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「……え?」
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玲桜は普通だった。
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「現地確認を行います」
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市役所側の一人が青ざめる。
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「げ、現地って」
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ココアがニコッと笑った。
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「門戸温泉郷!」
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「温泉あるよ!」
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「今そこじゃないだろ!!」
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山城がツッコむ。
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市役所側は完全に怯えていた。
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「えぇっ!?」
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「こ、ここ入るんですか!?」
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玲桜が静かに答える。
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「はい」
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「通路を通ります」
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完全に終わった顔になる。
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後輩が小さく言った。
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「辞表間に合いますかね」
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吉見が即答する。
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「もう無理」
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安城だけは静かだった。
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「問題ありません」
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市役所側が振り向く。
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「安城さん!?」
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安城は制服の襟を正す。
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「確認もせず管理はできません」
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静かな声。
だが。
迷いがない。
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ココアが目を輝かせる。
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「好き」
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黒姫もうなずく。
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「強いですね」
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玲桜が静かに歩き出す。
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「こちらです」
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その瞬間だった。
空気が揺れる。
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廊下の先。
本来壁しかない場所。
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そこに。
小さな光が開いていた。
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通路。
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市役所派遣組が止まる。
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「うわ……」
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「ほんとにある……」
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吉見が疲れた顔で言う。
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「だから言っただろ」
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玲桜が通路の前で止まる。
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そして。
静かに振り返った。
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「拒否される方は入れません」
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市役所側が青ざめる。
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「きょ、拒否?」
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ココアが普通に言う。
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「弾かれるだけだよ!」
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「だけ!?」
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錫が静かに補足した。
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「軽傷で済めばいいですね」
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「怖っ!!」
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マロくんが笑う。
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「大丈夫だって」
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いっちゃんが小さく言った。
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「たぶん」
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市役所派遣組の顔が死んだ。
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その瞬間だった。
玲桜が安城を見る。
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「行けますか」
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安城は迷わなかった。
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「はい」
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そして。
通路へ向かって歩き出す。
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光が揺れる。
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風が吹く。
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その瞬間。
通路が静かに開いた。
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ココアが嬉しそうに言った。
第二部第12話を読んでいただきありがとうございました。
今回は、市役所派遣組が初めて正式に通路を通る回になりました。
これまで「資料」や「会議」でしか存在していなかった異世界が、ついに目の前の現実として現れています。
特に、通路へ入る前の市役所側の反応は、ごく普通の人間としては当然のものなのかもしれません。
一方で、安城だけは迷わず通路へ進んでいきました。
それは彼女がすでに“こちら側”へ適合し始めていることでもあります。
また、玲桜の
「拒否される方は入れません」
という言葉からも分かるように、通路そのものが「選別」を行っています。
つまり、門戸温泉郷は完全に誰でも入れる場所ではありません。
ここから先は、門戸温泉郷そのものの姿や、異世界側の日常もさらに描かれていきます。
ブログでも世界観や登場人物について整理していますので、よろしければそちらもご覧ください。
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