第二部 第11話 呼ばれました
無言聖域
第二部 門戸温泉郷編
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回の第11話では、新たに着任した安城という女性警官について、さらに描かれていきます。
異世界。
通路。
世界樹。
普通なら避けたくなるはずの案件。
ですが安城は、自らこの部署を志願していました。
そして彼女自身もまた、「呼ばれた」と感じています。
それは偶然なのか、それとも――。
少しずつ、“こちら側”に適合する人間達も現れ始めています。
作品の設定や登場人物については、作者ブログでも少しずつ整理しています。
https://applebrother.wordpress.com/
西署。
門戸温泉郷担当部(仮)。
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空気は妙に静かだった。
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市役所側は押されている。
完全に。
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そして。
その中心にいるのは。
安城だった。
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ビシッとした制服。
冷静な視線。
静かな圧。
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吉見が小さく言った。
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「安城」
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安城が視線だけ向ける。
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吉見が苦笑する。
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「お前、大変なところに回されたな」
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山城もうなずく。
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「普通なら断る」
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「ていうか逃げる」
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後輩が真顔で言う。
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「自分なら有給使います」
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安城は少しだけ止まった。
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そして。
静かに言った。
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「いえ」
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「志願しました」
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沈黙。
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吉見が止まる。
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山城も止まる。
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ココアが「えっ」と言った。
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「まじで?」
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マロくんも驚く。
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「なんでまた」
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安城は静かだった。
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少しだけ。
考えるように目を閉じる。
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そして。
小さく言った。
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「呼ばれました」
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空気が止まる。
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玲桜の目が少しだけ変わった。
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黒姫も静かに安城を見る。
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吉見が聞く。
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「……誰に?」
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安城は少し困った顔をした。
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「わかりません」
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「ただ」
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静かな声。
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「気づいたら」
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「ここへ行かなければならない気がしていました」
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ココア達が少し静かになる。
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山城が小さく言った。
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「……通路か」
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玲桜が静かにうなずく。
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「適合者ですね」
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安城が玲桜を見る。
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「適合?」
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玲桜は落ち着いたまま答える。
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「世界樹に拒否されない人です」
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空気が静かになる。
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吉見が頭を抱える。
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「増えた……」
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後輩が小さく聞く。
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「つまり」
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「異世界側に受け入れられてるってことですか?」
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玲桜は静かに答えた。
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「はい」
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安城は少しだけ黙った。
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そして。
小さく息を吐く。
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「……なるほど」
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その瞬間だった。
外で。
小さく風が揺れた。
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通路。
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玲桜が窓の外を見る。
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安城も自然にそちらを向いた。
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吉見が気づく。
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「見えるのか?」
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安城は少し考えた。
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「見えるというより」
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静かな声。
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「わかるんです」
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ココアが嬉しそうに笑った。
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「やっぱり呼ばれてる!」
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黒姫が小さくうなずく。
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「こちら側ですね」
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安城が少しだけ苦笑する。
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「警察官なんですが」
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マロくんが笑う。
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「もう無理」
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山城が遠い目をする。
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「こっち来ると大体そうなる」
第二部第11話を読んでいただきありがとうございました。
今回は、安城がなぜ門戸温泉郷担当へ来たのか、その理由が少し描かれました。
彼女は単なる異動ではなく、自ら志願しています。
そして「呼ばれた」という感覚。
これは未唯達が経験してきたものと、どこか似ています。
玲桜の言う「適合者」とは、単に能力があるという意味ではありません。
世界樹や通路側に“拒否されない者”。
つまり、“こちら側”へ入る資格を持つ者でもあります。
また、西署側も少しずつ「異世界を否定する段階」を越え始めています。
理解はできなくても、現実として受け入れるしかない。
そんな空気が強くなってきました。
ここから先は、安城自身もさらに深く門戸温泉郷へ関わっていくことになります。
ブログでも世界観や登場人物について整理していますので、よろしければそちらもご覧ください。
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