黒塗りの車
門戸温泉郷には手を出せない。
だから外にいる者が狙われることがあります。
外の世界には、不思議雑誌がある。
「ウー」という雑誌だ。
霊だの宇宙人だのの情報雑誌で、
信じているのは子どもくらいだ。
だが、
その雑誌にも本当のことが書かれているページがある。
「無言聖域の全て」
毎回三ページだけ載っている。
証拠はない。
写真もない。
あるのは、
記憶があいまいになった観光客の証言だけだった。
ただし、
今月号には一枚だけ本物の写真が載っていた。
黒塗りの車の屋根に、
メイド服の少女が立っている写真だった。
ココアだった。
突然現れた黒塗りの車が、
たすくの横に止まった。
そのまま車の中へ引き込まれた。
眠らされたらしい。
外の世界に暮らしているから、
目を付けられたのだろう。
走り去る車の屋根が、
ドン、と音を立ててへこんだ。
「止まりな!」
止まらないよね。
ココアはそう言って、
車の屋根をぶち抜いた。
中に潜り込む。
眠っているたすくを抱えたまま、
外へ飛び出した。
「じゃあねー」
車の前に錫が立っていた。
運転手の制御を失った車が、
進路を外れる。
そのまま川に突っ込んだ。
汚くて、
臭いと有名な川だった。
「無茶苦茶するなぁ」
要が言った。
「はぁ?」
「のぼるなら一発で粉砕してるし、
いっちゃんとマロくんならずっと遊ばれて許してもらえないと思うよ?」
「私って優しい」
※西署記録補足
本件関係者の一部は現在所在不明。
ただし本人たちは元気に勤務していると報告されています。




