第二部 第9話 観光ツアー
無言聖域
第二部 門戸温泉郷編
ここまで読んでいただきありがとうございます。
門戸温泉町は、少しずつ「異世界の町」として形を持ち始めています。
そして今回、西署内に設けられた「門戸温泉郷担当部(仮)」へ、ココア達四姉妹がやって来ます。
通路管理。
異世界住民。
観光客。
現実側では到底追いつけない問題ばかりですが、それでも話はどんどん進んでいきます。
一方で、こちら側は相変わらずマイペースです。
作品の設定や登場人物については、作者ブログでも少しずつ整理しています。
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門戸温泉郷担当部(仮)
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手書きだった。
本当に。
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『門戸温泉郷担当部(仮)』
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殴り書き。
テープで貼ってある。
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吉見がそれを見る。
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「終わってる」
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山城が疲れた顔で言った。
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「まだ始まったばっかだ」
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西署の一角。
今は仮住まい。
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だが。
そこにはすでに大量の資料が積まれていた。
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通路。
異世界。
行方不明者。
門戸温泉町。
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普通じゃない案件しかない。
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その時だった。
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ガチャ。
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ドアが開く。
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ココア。
黒姫。
ソラ。
錫。
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四姉妹勢揃いだった。
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吉見が小さく言った。
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「増えた」
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山城が頭を押さえる。
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「嫌な予感しかしない」
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ココアがニコッと笑う。
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「と、言うわけでね!」
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吉見が即答した。
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「何がだ」
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ココアが止まる。
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「え?」
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少し考える。
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「今のわからなかった?」
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吉見が真顔で答える。
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「わかるわけないだろ」
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ココアは気にしない。
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「通路が安定したじゃん?」
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「だから門戸温泉町に」
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「そっちの人達を観光目的なら入れてもいいよって」
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沈黙。
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山城が止まる。
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「……は?」
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ココアは普通に続ける。
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「人によっていられる時間違うみたいだけどねー」
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黒姫が静かに補足する。
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「入れない人もいます」
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吉見が顔をしかめる。
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「なんだそれ」
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山城も続ける。
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「どういう仕組みなんだ」
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黒姫は静かだった。
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「適合です」
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「世界樹への」
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空気が少し静かになる。
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その横。
山城の後輩が必死に記録していた。
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録音。
録画。
メモ。
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だが。
錫が静かに言った。
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「無理です」
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後輩が止まる。
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「……は?」
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その瞬間だった。
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バチッ!!
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火花。
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後輩が悲鳴を上げる。
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「うわっ!?」
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携帯が真っ黒になった。
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熱い。
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思わず落とす。
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「マジかー!!」
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錫が静かに言う。
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「ですから」
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「無理だと」
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後輩が床の携帯を拾う。
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画面が死んでいた。
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「あああぁっ……」
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ココアが少し申し訳なさそうに言う。
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「ごめんねー」
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山城が真顔になる。
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「お前らの仕業か」
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ココアが即答する。
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「あたしじゃないよ?」
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「触ってないし」
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黒姫が小さくうなずく。
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「事実です」
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錫が静かに言う。
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「通路付近では電子機器への干渉が発生します」
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吉見が頭を抱えた。
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「報告書どうしろってんだ……」
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ソラが初めて口を開く。
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「手書き」
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山城が遠い目をする。
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「昭和か」
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その瞬間だった。
ココアがぱっと笑った。
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「それより!」
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全員嫌な予感がした。
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ココアが続ける。
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「実はね!」
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「旅行会社からツアーの申し込みがあったんだよ!」
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沈黙。
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吉見が止まる。
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山城も止まる。
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後輩が壊れた携帯を持ったまま固まる。
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「……はぁ?」
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ココアは普通だった。
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「温泉郷ツアー!」
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「異世界観光!」
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「泊まり込み!」
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吉見が机を叩いた。
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「何考えてんだ!!」
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山城も立ち上がる。
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「帰ってこないやつもいるんだぞ!!」
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空気が張る。
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だが。
黒姫が静かに言った。
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「だから選別されます」
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ソラも続ける。
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「世界樹が拒否します」
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錫が小さくうなずく。
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「危険な者は入れません」
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吉見が止まる。
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「……世界樹が?」
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ココアが笑う。
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「そ!」
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「だから意外と安全!」
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山城が頭を抱えた。
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「安全の基準がおかしい……」
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その瞬間だった。
ドアの外で。
小さく風が揺れた。
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玲桜が静かに現れる。
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そして。
一言。
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「ちなみに」
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全員が玲桜を見る。
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玲桜は静かに言った。
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「すでに予約は埋まり始めています」
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吉見が崩れ落ちた。
第二部第9話を読んでいただきありがとうございました。
今回は、「異世界を管理する」ということが、どれほど無茶なのかがかなり強く描かれる回になりました。
通路の記録を取ろうとして電子機器が壊れたり、そもそも「身元確認」の概念自体が成立しなかったりと、現実側は完全に手探り状態です。
特に錫の能力による電子干渉は、今後も西署側をかなり悩ませることになりそうです。
また、「異世界観光ツアー」という言葉まで飛び出し、門戸温泉郷が少しずつ“観光地”として扱われ始めていることも描かれました。
もちろん危険もあります。
ですが、黒姫達の言う通り、世界樹そのものが「拒否」や「選別」を行っているため、完全に無秩序な状態ではありません。
そして最後には、玲桜から「すでに予約が埋まり始めている」という、とんでもない現実も告げられました。
門戸温泉郷は、想像以上の速度で「町」として広がり始めています。
ブログでも世界観や登場人物について整理していますので、よろしければそちらもご覧ください。
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