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無言聖域ーーデグーたちの記録  作者: おじさんヒーロー
35/45

第二部 第5話 任せた

無言聖域

第二部 門戸温泉郷編


ここまで読んでいただきありがとうございます。


西署側も門戸温泉町の存在を無視できなくなり、現実側と異世界側の距離は少しずつ近づき始めています。


ですが、その一方で、こちら側にはこちら側の「流れ」があります。


今回の第5話では、スピネルとクルミ、そして玲桜達の立ち位置が少しずつ見えてきます。


静かな会話の中にも、それぞれの役割や信頼関係が描かれる回になります。


作品の設定や登場人物については、作者ブログでも少しずつ整理しています。


https://applebrother.wordpress.com/

リビングは静かだった。



吉見と山城は。


まだ少し固まっている。



目の前には。


スピネル。


クルミ。



「最強」


そう言われても。


否定できない何かがあった。



空気そのものが違う。



たすくが小さくため息をつく。



「……まあ」



「慣れるしかない」



吉見が真顔で言った。



「無理だろ」



山城も即答する。



「無理ですね」



ココアが笑う。



「大丈夫大丈夫」



マロくんが言う。



「慣れる」



いっちゃんが小さく言った。



「たぶん」



吉見が頭を抱える。



「不安しかない」



その瞬間だった。


クルミが静かに口を開いた。



「気にしなくていい」



全員がクルミを見る。



クルミは落ち着いたまま。


静かに続けた。



「玲桜に任せた」



空気が少し変わる。



玲桜は静かだった。


いつも通り。



スピネルも小さくうなずく。



「私たちは口を出さない」



その言葉で。


吉見と山城の顔が少し変わる。



「……任せる?」



山城が玲桜を見る。



玲桜は若い。


少なくとも見た目は。



だが。


クルミもスピネルも。


当然みたいに玲桜へ任せている。



吉見が小さく言った。



「責任者なのか?」



玲桜は少し考えた。



そして。


静かに答える。



「管理担当です」



ココアが吹き出した。



「担当ってレベルじゃない」



黒姫がうなずく。



「だいたい玲桜」



たすくが小さく言った。



「まあ、そう」



その瞬間だった。


クルミが机を見る。



「さて」



静かな声。


でも。


空気が自然に整う。



「ここで」


少しだけ笑う。



「出していただいたお茶をいただくとしよう」



全員が止まる。



たすくの母が淹れたお茶。


まだ湯気が立っている。



クルミが湯のみを持つ。


ゆっくり。


静かに。



一口。



空気がさらに静かになる。



山城が小さく思った。



(なんだこれ)



怖い。


のに。


落ち着く。



スピネルも湯のみを持つ。



長い黒髪が揺れる。



美しい。


ただそれだけで。


空気が変わる。



スピネルが小さく息を吐く。



「……おいしい」



たすくが少し照れたように笑う。



「普通のお茶ですよ?」



クルミが静かに言った。



「普通が一番難しい」



その瞬間。


リビングが静かになった。



未唯は玲桜の膝の上。


玲桜は静かにお茶を飲む。



ココア達は騒いでいる。



なのに。


どこか落ち着いていた。



吉見が小さくつぶやく。



「……異世界なんだよな」



山城が答える。



「たぶん」



その瞬間だった。


外で。


小さく風が揺れた。



玲桜の目が少しだけ変わる。



「通路」



全員が止まる。



玲桜が静かに立ち上がる。



未唯も自然に降りる。



クルミが小さく言った。



「任せた」



玲桜がうなずく。



「はい」



その瞬間。


門戸温泉郷へ。


新しい誰かが来た。

第二部第5話を読んでいただきありがとうございました。


今回は、大きな戦いではなく、静かな会話の中で「こちら側」の空気が描かれる回になりました。


クルミの


「玲桜に任せた」


という言葉。


そしてスピネルの


「私たちは口を出さない」


という言葉。


これは単なる放任ではなく、玲桜への強い信頼でもあります。


また、圧倒的な存在であるスピネルやクルミが、普通にお茶を飲み、静かにその場へいることで、「日常」と「異質さ」が同時に存在している空気も描かれています。


そして、たすくの家族が自然にこの場から離れていることも、「普通側」の人間としては正しい反応なのかもしれません。


ここから先は、西署側がさらに深く門戸温泉郷へ関わっていくことになります。


ブログでも世界観や登場人物について整理していますので、よろしければそちらもご覧ください。


https://applebrother.wordpress.com/

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