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無言聖域ーーデグーたちの記録  作者: おじさんヒーロー
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第二部 第5話 任せた

無言聖域

第二部 門戸温泉郷編


ここまで読んでいただきありがとうございます。


西署側も門戸温泉町の存在を無視できなくなり、現実側と異世界側の距離は少しずつ近づき始めています。


ですが、その一方で、こちら側にはこちら側の「流れ」があります。


今回の第5話では、スピネルとクルミ、そして玲桜達の立ち位置が少しずつ見えてきます。


静かな会話の中にも、それぞれの役割や信頼関係が描かれる回になります。


作品の設定や登場人物については、作者ブログでも少しずつ整理しています。


https://applebrother.wordpress.com/

リビングは静かだった。


⸻


吉見と山城は。


まだ少し固まっている。


⸻


目の前には。


スピネル。


クルミ。


⸻


「最強」


そう言われても。


否定できない何かがあった。


⸻


空気そのものが違う。


⸻


たすくが小さくため息をつく。


⸻


「……まあ」


⸻


「慣れるしかない」


⸻


吉見が真顔で言った。


⸻


「無理だろ」


⸻


山城も即答する。


⸻


「無理ですね」


⸻


ココアが笑う。


⸻


「大丈夫大丈夫」


⸻


マロくんが言う。


⸻


「慣れる」


⸻


いっちゃんが小さく言った。


⸻


「たぶん」


⸻


吉見が頭を抱える。


⸻


「不安しかない」


⸻


その瞬間だった。


クルミが静かに口を開いた。


⸻


「気にしなくていい」


⸻


全員がクルミを見る。


⸻


クルミは落ち着いたまま。


静かに続けた。


⸻


「玲桜に任せた」


⸻


空気が少し変わる。


⸻


玲桜は静かだった。


いつも通り。


⸻


スピネルも小さくうなずく。


⸻


「私たちは口を出さない」


⸻


その言葉で。


吉見と山城の顔が少し変わる。


⸻


「……任せる?」


⸻


山城が玲桜を見る。


⸻


玲桜は若い。


少なくとも見た目は。


⸻


だが。


クルミもスピネルも。


当然みたいに玲桜へ任せている。


⸻


吉見が小さく言った。


⸻


「責任者なのか?」


⸻


玲桜は少し考えた。


⸻


そして。


静かに答える。


⸻


「管理担当です」


⸻


ココアが吹き出した。


⸻


「担当ってレベルじゃない」


⸻


黒姫がうなずく。


⸻


「だいたい玲桜」


⸻


たすくが小さく言った。


⸻


「まあ、そう」


⸻


その瞬間だった。


クルミが机を見る。


⸻


「さて」


⸻


静かな声。


でも。


空気が自然に整う。


⸻


「ここで」


少しだけ笑う。


⸻


「出していただいたお茶をいただくとしよう」


⸻


全員が止まる。


⸻


たすくの母が淹れたお茶。


まだ湯気が立っている。


⸻


クルミが湯のみを持つ。


ゆっくり。


静かに。


⸻


一口。


⸻


空気がさらに静かになる。


⸻


山城が小さく思った。


⸻


(なんだこれ)


⸻


怖い。


のに。


落ち着く。


⸻


スピネルも湯のみを持つ。


⸻


長い黒髪が揺れる。


⸻


美しい。


ただそれだけで。


空気が変わる。


⸻


スピネルが小さく息を吐く。


⸻


「……おいしい」


⸻


たすくが少し照れたように笑う。


⸻


「普通のお茶ですよ?」


⸻


クルミが静かに言った。


⸻


「普通が一番難しい」


⸻


その瞬間。


リビングが静かになった。


⸻


未唯は玲桜の膝の上。


玲桜は静かにお茶を飲む。


⸻


ココア達は騒いでいる。


⸻


なのに。


どこか落ち着いていた。


⸻


吉見が小さくつぶやく。


⸻


「……異世界なんだよな」


⸻


山城が答える。


⸻


「たぶん」


⸻


その瞬間だった。


外で。


小さく風が揺れた。


⸻


玲桜の目が少しだけ変わる。


⸻


「通路」


⸻


全員が止まる。


⸻


玲桜が静かに立ち上がる。


⸻


未唯も自然に降りる。


⸻


クルミが小さく言った。


⸻


「任せた」


⸻


玲桜がうなずく。


⸻


「はい」


⸻


その瞬間。


門戸温泉郷へ。


新しい誰かが来た。

第二部第5話を読んでいただきありがとうございました。


今回は、大きな戦いではなく、静かな会話の中で「こちら側」の空気が描かれる回になりました。


クルミの


「玲桜に任せた」


という言葉。


そしてスピネルの


「私たちは口を出さない」


という言葉。


これは単なる放任ではなく、玲桜への強い信頼でもあります。


また、圧倒的な存在であるスピネルやクルミが、普通にお茶を飲み、静かにその場へいることで、「日常」と「異質さ」が同時に存在している空気も描かれています。


そして、たすくの家族が自然にこの場から離れていることも、「普通側」の人間としては正しい反応なのかもしれません。


ここから先は、西署側がさらに深く門戸温泉郷へ関わっていくことになります。


ブログでも世界観や登場人物について整理していますので、よろしければそちらもご覧ください。


https://applebrother.wordpress.com/

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