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無言聖域ーーデグーたちの記録  作者: おじさんヒーロー
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第二部 第3話 西署担当者

無言聖域

第二部 門戸温泉郷編


ここまで読んでいただきありがとうございます。


門戸温泉町の存在は、ついに「現実側」の機関にも認識され始めました。


今回登場する吉見と山城は、西署で長年“説明不能案件”を扱ってきた担当者達です。


行方不明者、帰還不能者、そして通路。


彼らは最も現実側に近い立場でありながら、最も境界へ近づいてしまった人間達でもあります。


一方で、未唯達の日常は、相変わらず少し騒がしく、少し普通ではありません。


作品の設定や登場人物については、作者ブログでも少しずつ整理しています。


https://applebrother.wordpress.com/

ピンポーン。



玄関の音が響く。



リビングの空気が止まった。



ココアが小さく言う。



「市役所?」



マロくんが嫌そうな顔をする。



「帰れって言う?」



いっちゃんが静かに言った。



「それだけじゃ済まないだろ」



未唯は玲桜の膝の上のまま。


少しだけ不安そうだった。



たすくがため息をつく。



「……出るか」



玄関へ向かう。



ガチャ。



立っていたのは二人だった。



スーツ姿。


だが。


普通の役人ではない。



たすくが止まる。



「……西署」



男が小さく頭を下げた。



「吉見です」



隣の男も続く。



「山城です」



静かな声だった。



たすくが聞く。



「……なんでここに」



吉見が答える。



「呼ばれました」



たすくが嫌な顔をする。



「誰に」



その瞬間だった。


後ろから玲桜の声がした。



「私です」



吉見と山城が玲桜を見る。


空気が少しだけ変わる。



山城が小さく言った。



「本当にいたんだな」



玲桜は静かだった。



「ええ」



吉見が家の中を見る。



未唯。


ココア。


黒姫。


マロくん。


いっちゃん。



そして。


普通ではない空気。



吉見が小さく息を吐く。



「報告以上だ」



たすくが聞く。



「何の報告だよ」



山城が答える。



「市内行方不明者」



空気が静かになる。



西署。



最初から。


通路に最も近かった場所。



消える人。


帰れなくなる人。


突然現れる人。



説明不能案件。



だからこそ。


吉見と山城は。


最初から特殊任務へ回されていた。



「行方不明者取扱担当官」



表向きは。


ただそれだけ。



だが実際には。



「境界流入案件担当」



山城が静かに言った。



「通路が開いてるの、西署なんだよ」



たすくが顔をしかめる。



「……やっぱりか」



吉見がうなずく。



「昔から妙な報告はあった」



「山へ入って帰れない」



「知らない町へ出た」



「同じ時間を繰り返した」



「知らない子供を保護した」



未唯が少しだけ止まる。



山城が未唯を見る。



「……君みたいにな」



空気が静かになる。



玲桜が言った。



「今回、市役所が動き始めました」



吉見と山城の顔が変わる。



「そこまで行ったか」



ココアが聞く。



「そんなにヤバい?」



山城が真顔で答えた。



「役所はヤバい」



全員がうなずいた。



玲桜が静かに続ける。



「門戸温泉町は、すでに“存在する町”として認識され始めています」



吉見が小さく言った。



「世界樹か」



たすくが止まる。



「知ってんの?」



吉見は少しだけ苦笑した。



「西署なめるな」



その瞬間だった。


未唯が小さく聞いた。



「……敵?」



吉見は少し考えた。



そして。


静かに答えた。



「いや」



少し笑う。



「どっちかっていうと、巻き込まれ組だ」

第二部第3話を読んでいただきありがとうございました。


今回は、西署側の吉見と山城が正式に門戸温泉町へ関わり始めました。


彼らは異世界を完全には理解していません。


ですが、「普通では説明できない何か」が存在していることだけは、長年の経験から理解しています。


また、未唯がたすくを「お兄ちゃん」と言い切る場面や、玲桜の膝を当然のように特等席扱いしている場面など、未唯の“帰る場所”としての感情も強く描かれています。


そして最後には、スピネルとクルミも姿を見せました。


美しく、静かで、圧倒的。


現実側の人間から見れば、まさに「最強」としか言いようのない存在達です。


ここから先は、西署、市役所、そして異世界側、それぞれの立場がさらに交差していくことになります。


ブログでも世界観や登場人物について整理していますので、よろしければそちらもご覧ください。


https://applebrother.wordpress.com/

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