第26話 託されたもの
ここまで読んでいただきありがとうございます。
第26話では、通路の奥から現れた小さな存在――ポップが、未唯へ「あるもの」を託します。
それは単なる力ではなく、世界そのものに関わる重要な種になります。
花園、通路、境界、世界樹。
これまで少しずつ描かれてきたものが、ここで一本につながり始めます。
作品の設定や登場人物については、作者ブログでも少しずつ整理しています。
https://applebrother.wordpress.com/
通路が静かだった。
花が揺れている。
境界も安定している。
だが。
玲桜だけは。
まだ奥を見ていた。
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「……います」
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未唯が聞く。
「向こう?」
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玲桜はうなずいた。
「はい」
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通路の奥。
暗くはない。
怖くもない。
でも。
深かった。
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そこに。
小さな影があった。
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ぽふ。
ぽふ。
小さな足音だった。
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ココアが止まる。
「……え?」
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マロくんが目を細める。
「ちっちゃ」
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いっちゃんが静かに言った。
「子供?」
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小さな影が近づいてくる。
ゆっくり。
ぽふぽふと。
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そして。
通路の光の中へ出た。
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小さかった。
ジャンガリアンの子供。
白くて。
やわらかそうで。
小さな枝を抱えていた。
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未唯が止まる。
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「……ポップ?」
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その瞬間だった。
花園の花が一斉に揺れた。
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空気が変わる。
通路が静かに光る。
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玲桜の目が変わった。
黒姫も止まる。
管理者側すら動かない。
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ポップが未唯を見る。
そして。
嬉しそうに笑った。
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「みーちゃん」
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未唯が目を見開く。
「知ってるの?」
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ポップがぽふっと近づく。
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「さがしてた」
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未唯が聞く。
「わたしを?」
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ポップはうなずいた。
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「うん」
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小さな手を出す。
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そこには。
小さな種があった。
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光っていた。
静かに。
でも。
世界そのものみたいに。
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玲桜が止まる。
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「……世界樹」
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小雪が小さく息を呑む。
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ライくんが言った。
「時間が重い」
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管理者側が静かに言った。
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「確認」
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ポップは未唯へ近づく。
ぽふ。
ぽふ。
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そして。
小さな手を伸ばした。
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「これ、あげる」
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未唯が止まる。
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「……わたしに?」
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ポップはうなずく。
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「主人がね」
ぽふっと笑う。
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「もっていってあげてって」
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未唯が聞く。
「誰に?」
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ポップが未唯を見る。
まっすぐに。
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「みーちゃんに」
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その瞬間だった。
花園の花が一斉に咲いた。
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通路が光る。
境界が揺れる。
世界が静かになる。
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玲桜が静かに言った。
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「託されましたね」
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未唯が種を見る。
小さかった。
でも。
あたたかかった。
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未唯が小さく言った。
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「……なにこれ」
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その瞬間だった。
種が光った。
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未唯の胸の奥で。
通路が反応した。
花園が揺れた。
世界樹が脈打った。
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管理者側が止まる。
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「適合確認」
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黒姫が小さく言った。
「まさか」
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玲桜が未唯を見る。
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「選ばれたのではありません」
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未唯が玲桜を見る。
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玲桜が静かに続けた。
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「託されたんです」
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未唯が種を抱きしめる。
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ポップが嬉しそうに笑う。
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「みつけた」
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その瞬間だった。
通路のさらに奥。
まだ誰も見たことのない場所で。
巨大な世界樹が。
静かに光った。
第26話を読んでいただきありがとうございました。
今回は、ポップが「世界樹の種」を未唯へ託す場面になりました。
この種は、巨大な世界樹の元になるものです。
そしてそれは、この世界を「命の宿る世界」として確定させるための存在でもあります。
未唯が選ばれたのではなく、“託された”という形になったことで、物語の意味も少し変わり始めています。
また、ポップ自身もただの小さな存在ではなく、世界樹側から来た「届ける役目」を持つ存在として描かれています。
ここから先は、境界や通路だけではなく、「世界が存在する意味」そのものにも近づいていきます。
ブログでも世界観や登場人物について整理していますので、よろしければそちらもご覧ください。
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