第25話 帰る場所
ここまで読んでいただきありがとうございます。
未唯は通路を開き、向こう側へ踏み込み、ついに母と兄のもとへ辿り着きました。
第25話では、未唯が初めて「帰る場所」を認識していきます。
そして、兄の名前も明かされます。
戦いや境界だけではなく、未唯自身の気持ちにも少し変化が生まれていく回になります。
作品の設定や登場人物については、作者ブログでも少しずつ整理しています。
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通路が静かだった。
さっきまでの圧力が消えている。
なのに。
空気だけが変わっていた。
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未唯が立っていた。
玲桜の隣に。
まだ袖を握ったまま。
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花が揺れていた。
やさしく。
祝福するみたいに。
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ココアが戻ってきた。
「終わった?」
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マロくんが言った。
「まだじゃない?」
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いっちゃんが周囲を見る。
「静かすぎる」
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玲桜が静かに言った。
「観測されています」
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未唯が聞く。
「まだ見てるの?」
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玲桜はうなずいた。
「はい」
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通路の奥。
上位存在の気配は消えていた。
だが。
完全には消えていない。
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管理者側が言った。
「監視継続」
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黒姫が小さく笑った。
「気に入られた」
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未唯が困った顔をする。
「えぇ……」
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その瞬間だった。
ナオリがふらついた。
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兄が支える。
「母さん!」
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未唯が駆け寄る。
「母さん!」
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ナオリは弱っていた。
かなり。
長く逃げ続けていた傷だった。
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ナオリが未唯を見る。
涙が浮かんでいた。
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「……大きくなった」
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未唯が泣きそうになる。
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兄が小さく笑った。
「ほんとにな」
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未唯が兄を見る。
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「お兄ちゃん」
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兄が言った。
「透真だ」
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未唯が止まる。
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兄が少し照れたように笑う。
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「忘れてただろ」
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未唯の目から涙が落ちた。
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「……透真お兄ちゃん」
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その瞬間だった。
花が揺れた。
通路が静かに光る。
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玲桜が小さく言った。
「安定しています」
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ライくんが言った。
「固定された」
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小雪が静かに回る。
空気が整う。
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管理者側が言った。
「個体接続を確認」
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ココアが聞いた。
「なにそれ」
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玲桜が答えた。
「帰属です」
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未唯が聞く。
「帰属?」
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玲桜は未唯を見た。
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「帰る場所を認識しました」
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空気が静かになる。
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未唯が止まる。
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今まで。
ずっと。
逃げていた。
一人だった。
怖かった。
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でも。
今は違う。
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未唯の隣には玲桜がいた。
ココア達がいた。
透真がいた。
ナオリがいた。
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未唯が小さく言った。
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「……帰ってきた」
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その瞬間だった。
花園の花が一斉に揺れた。
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通路が光る。
境界が静かになる。
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管理者側が止まった。
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「帰属完了」
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空気が変わった。
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玲桜が目を閉じる。
「終わりました」
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黒姫が言った。
「長かった」
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マロくんが笑った。
「腹減った」
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ココアが言った。
「わかる!」
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いっちゃんがため息をつく。
「緊張感」
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未唯が少し笑った。
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その瞬間だった。
通路の奥で。
小さく。
何かが動いた。
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玲桜の目が変わる。
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「……まだいます」
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花が揺れた。
静かに。
警告するみたいに。
第25話を読んでいただきありがとうございました。
今回は、未唯が「帰ってきた」と感じる場面を書いています。
玲桜、ココア達、そして母ナオリと兄・透真。
未唯の中で、「一人ではない」という感覚が少しずつ形になり始めています。
また、管理者側からも“帰属”として認識されたことで、通路や境界も未唯へ適応し始めました。
そして最後には、まだ消えていない別の気配も残されています。
ここから先は、「帰ってきた後」に何が起きるのかも描かれていきます。
ブログでも世界観や登場人物について整理していますので、よろしければそちらもご覧ください。
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