第20話 向こう側の世界
ここまで読んでいただきありがとうございます。
第20話では、未唯達がついに通路の向こう側へ踏み込みます。
これまで「境界」や「通路」として描かれてきた場所が、初めて“向こう側の世界”として現実になります。
そして、未唯の母と兄との再会。
さらに、追っ手とは別の存在も動き始めます。
物語が大きく進む回になります。
作品の設定や登場人物については、作者ブログでも少しずつ整理しています。
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未唯が踏み込んだ。
通路の中だった。
光が揺れていた。
距離が流れていた。
上下も。
左右も。
遠さも。
近さも。
曖昧だった。
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玲桜が言った。
「接続維持しています」
声だけが届く。
後ろはまだつながっていた。
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未唯が前を見る。
兄がいた。
その向こう。
倒れている母も。
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未唯が言った。
「母さん!」
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その瞬間だった。
空気が変わった。
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兄が叫ぶ。
「止まれ!!」
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未唯が止まった。
次の瞬間。
通路の横が裂けた。
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黒い影が現れた。
追っ手だった。
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ココアが飛び込んだ。
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衝撃が止まった。
光が揺れた。
距離が歪んだ。
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ココアが言った。
「ほんとにいたね」
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追っ手が動く。
だが。
マロくんが前に出た。
重い。
速い。
圧倒的だった。
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空気が弾けた。
追っ手が吹き飛ぶ。
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いっちゃんが動く。
受ける。
流す。
崩す。
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攻撃が通らない。
位置が違う。
間合いが違う。
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兄が目を見開いた。
「……なんだこいつら」
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ココアが笑った。
「味方!」
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その瞬間だった。
母が苦しそうに顔を上げた。
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未唯が駆け寄る。
「母さん!」
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母――ナオリが未唯を見た。
涙が浮かんだ。
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「……生きてた」
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未唯が泣きそうになる。
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ナオリが震える声で言った。
「だめ」
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未唯が言う。
「助けに来た!」
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ナオリが首を振る。
「捕まる」
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兄が言った。
「未唯!」
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その瞬間だった。
さらに奥で。
空気が割れた。
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巨大な影だった。
今までとは違う。
圧力が違う。
存在が違う。
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黒姫が言った。
「本隊」
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玲桜が静かに言った。
「違います」
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空気が止まった。
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玲桜が続けた。
「管理者側です」
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全員が止まった。
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影が近づいてくる。
ゆっくりと。
だが。
圧倒的だった。
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兄が未唯の前に出た。
傷だらけだった。
それでも立った。
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「下がれ」
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未唯が言った。
「やだ」
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兄が振り向く。
初めて。
ちゃんと笑った。
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「大きくなったな」
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未唯の目から涙が落ちた。
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その瞬間だった。
巨大な影が止まった。
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そして。
静かな声が響いた。
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「……鍵を確認」
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空気が凍った。
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玲桜の目が変わる。
「未唯」
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未唯が振り向く。
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玲桜が静かに言った。
「見つかりました」
第20話を読んでいただきありがとうございました。
未唯はついに自分の意思で通路へ踏み込み、母ナオリと兄のいる向こう側へ到達しました。
しかし、追っ手だけではなく、さらに別の「管理者側」の存在も現れ始めています。
未唯が“鍵”であることも、向こう側に正式に認識されました。
ここから先は、単なる追跡や逃亡ではなく、「境界そのもの」に関わる話へ進んでいきます。
ブログでも世界観や登場人物について整理していますので、よろしければそちらもご覧ください。
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