第16話 向こう側
ここまで読んでいただきありがとうございます。
未唯が通路を開く存在であることが明らかになり、ついに通路の向こう側と接続する場面に入ります。
第16話では、未唯が助けに行こうとしている相手――兄との距離が、初めて明確に描かれます。
同時に、これまで外から観測されていた存在が、通路を通じて追跡してくる可能性も見え始めています。
物語が一段階進む回になります。
作品の設定や登場人物については、作者ブログでも整理しています。
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通路が開いていた。
花園の奥だった。
光が揺れていた。
静かな光だった。
だが。
さっきより近かった。
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未唯が立っていた。
通路の前に。
玲桜がそばにいた。
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玲桜が言った。
「安定しています」
未唯はうなずいた。
「うん」
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遠くで音がした。
ぶつかる音。
地面が揺れる音。
戦っている音だった。
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未唯が言った。
「いっちゃんたち?」
玲桜は答えた。
「時間を作っています」
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未唯が通路を見る。
光が揺れている。
奥が見えない。
でも。
何かがいる。
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未唯が一歩進んだ。
通路が少し広がった。
光がやわらいだ。
距離が近づいた。
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玲桜が言った。
「そのままで大丈夫です」
未唯はもう一歩進んだ。
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その瞬間だった。
光の奥で。
影が動いた。
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未唯が止まった。
息が止まった。
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玲桜が言った。
「見えています」
未唯が言った。
「うん」
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影が近づいた。
ゆっくりと。
確かに。
こちらに向かっていた。
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未唯が言った。
「……いる」
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遠くで声がした。
はっきりとは聞こえない。
でも。
確かに届いた。
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「未唯」
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未唯が震えた。
目を見開いた。
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未唯が言った。
「……お兄ちゃん」
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光が揺れた。
距離が近づいた。
影が形を持った。
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人だった。
立っていた。
通路の向こう側に。
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玲桜が静かに言った。
「接続しています」
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未唯が一歩進んだ。
通路がさらに開いた。
光が強くなった。
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兄がこちらを見ていた。
確かに見ていた。
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未唯が言った。
「ほんとにいた」
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兄が言った。
声は弱かった。
でも。
はっきりしていた。
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「来るな」
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未唯が止まった。
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玲桜が言った。
「理由があります」
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兄が続けた。
「追われてる」
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その瞬間だった。
通路の奥で。
別の影が動いた。
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玲桜の目が変わった。
「確認しました」
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未唯が言った。
「なに」
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玲桜が答えた。
「追跡です」
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光が揺れた。
距離が歪んだ。
通路が不安定になった。
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遠くで。
衝撃音が響いた。
いっちゃんたちの戦闘だった。
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玲桜が言った。
「時間がありません」
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未唯が言った。
「でも」
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兄が言った。
「未唯」
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未唯が顔を上げる。
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兄が言った。
「開けるな」
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その言葉で。
通路が一瞬止まった。
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未唯が言った。
「助けにきた」
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静かだった。
でも強かった。
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兄が少しだけ笑った。
疲れていた。
でも。
安心した顔だった。
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「知ってる」
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その瞬間だった。
通路の奥で。
影が一歩近づいた。
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玲桜が言った。
「来ます」
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光が乱れた。
距離が崩れた。
通路が震えた。
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未唯が言った。
「……間に合う」
第16話を読んでいただきありがとうございました。
通路の向こう側にいる兄と未唯が、初めてしっかりと認識し合う場面になりました。
ただし、それは同時に「追われている状態」での再会でもあります。
前衛が時間を作り、玲桜が通路を安定させ、未唯が鍵として動く――
それぞれの役割が重なり、物語はさらに緊張感のある段階に進みます。
続きでは、追っ手との本格的な衝突と通路の不安定化が描かれていきます。
よろしければ引き続きお読みください。
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