第13話 玲桜くん
ここまで読んでいただきありがとうございます。
第13話では、通路を開く存在である未唯と、境界を管理する側の玲桜くんとの関係が少し動き始めます。
花園と通路が関係する場面では、未唯の感情が境界の安定にも影響しています。
本作の世界観や登場人物については、作者ブログでも少しずつ整理していますので、あわせて読んでいただけるとうれしいです。
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「ここなら大丈夫です」
玲桜が言った。
静かな声だった。
優しい声だった。
未唯は少しだけ安心した。
⸻
道場の端だった。
人が多い場所だった。
でも。
未唯は少しだけ離れて立っていた。
まだ慣れていなかった。
⸻
玲桜が近づいた。
「大丈夫ですか」
未唯はうなずいた。
「うん」
少しだけ考えて。
もう一度言った。
「大丈夫」
⸻
玲桜は少しだけ笑った。
その笑い方は静かだった。
驚かせない笑い方だった。
⸻
未唯が聞いた。
「こわくないの?」
玲桜は答えた。
「未唯は怖くありません」
⸻
未唯が言った。
「通路」
玲桜はうなずいた。
「はい」
⸻
未唯が言った。
「開いちゃう」
玲桜は言った。
「大丈夫です」
迷いのない声だった。
⸻
未唯が少しだけ近づいた。
玲桜の袖をつかんだ。
小さく。
そっと。
⸻
玲桜は何も言わなかった。
そのまま立っていた。
⸻
未唯が言った。
「ここにいていい?」
玲桜は答えた。
「はい」
⸻
その瞬間だった。
花の匂いがした。
道場なのに。
風はないのに。
花園の匂いだった。
⸻
ライくんが言った。
「反応してる」
小雪が静かに言った。
「安心してる」
⸻
未唯が言った。
「玲桜くん」
初めて名前を呼んだ。
⸻
玲桜は少しだけ驚いた。
でも。
すぐにうなずいた。
「はい」
⸻
未唯が言った。
「すき」
静かな声だった。
小さな声だった。
でも。
迷いはなかった。
⸻
道場が静かになった。
誰も笑わなかった。
誰も止めなかった。
⸻
黒姫が言った。
「早い」
ココアが笑った。
「いいじゃん」
⸻
玲桜は少しだけ困った顔をした。
でも。
優しく言った。
「ありがとうございます」
⸻
未唯がもう一度言った。
「玲桜くんのそばがいい」
玲桜は答えた。
「ここにいます」
⸻
その瞬間だった。
空気が安定した。
距離が整った。
通路の揺れが止まった。
⸻
ライくんが言った。
「固定された」
小雪がうなずいた。
「うん」
⸻
玲桜が静かに言った。
「未唯は大丈夫です」
⸻
未唯は玲桜の袖を握ったまま言った。
「うん」
第13話を読んでいただきありがとうございました。
未唯が玲桜くんを「安心できる存在」として選んだことは、通路や花園の安定にも関係しています。
これまで描かれてきた
帰れなくなる花園
黒い娘
黒塗りの車
エルフの娘
といった出来事が、少しずつ一つの流れとして重なり始めています。
ブログの方では物語の背景や登場人物についてもまとめていく予定です。
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続きも読んでいただけたらうれしいです。




