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断頭台より愛を込めて  作者: 案山子 劣四
ハッピーハーピィ

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6/21

ハッピーハーピィ①

ネオンが眼下に光る空の世界。都会の喧騒は足元に広がり、音はその場所までは届かない、静寂の世界。


人が、己の肉体のみで到達できないその領域に、2つの人影があった。



「リョウ、遂に23人目が来たって!!」


腕が変質したその羽、高い位置にある太ももと、鋭い鉤爪などの鳥類の特徴を持つ、『ハーピー』の『フリークス』である茉莉花(マツリカ)エリザは、甲高い、興奮した声を上げながら、バタバタと慌ただしく羽を動かして、その男の元に向かった。


リョウと呼ばれた彼、赤城(アカギ)アツトは純白のスーツにとベスト、その下に黒シャツ、赤いネクタイと、一見すると普通のホストのようであった。


ただ一つ違うのは、彼が上空20mに、平然と浮いている事。羽ばたく素振りも見せず、力を込める様子もなく。『ヴァンパイア』の『フリークス』である彼は、余裕のある表情でエリザに微笑む。


「知ってるよ。でも、エリは偉いね。ちゃんと俺に教えてくれたんだ」


そう言うと、手を伸ばして彼女の頭を撫でる。嬉しそうに頬擦りするエリザとリョウの2人の様子は、一見すると恋人同士のようでもあった。



「……ついに始まるんだね。最後の1人を決める闘いが」


均整の整った顔立ちで、真剣な眼差しで呟く。人に見られるという事を常日頃から意識しているからか、やたらと絵になるその表情に、エリザの顔は紅く染まった。



「リョウは、ウチが守るから!」


頭を撫でられたまま、そう言われたエリザの表情は、愛する恋人を見つめるようであったし、子を守る母のような力強いものでもあった。



「ありがとう、エリ」


愛おしむような優しい声色でそう言うと、彼はエリを抱き寄せる。彼女は羽ばたくのを辞めてリョウに抱き着くと、少しの間、甘い静寂が夜の空を占めた。





「……じゃあ、どうすればいいか、エリは分かるよね?」


リョウが耳元でそう囁くと、途端にエリは不安そうな表情を浮かべる。



「ウ、ウチ馬鹿だから分かんない、かも……!」



今にも泣き出しそうな彼女を、指が首元に食い込む程力強く抱き締めて、リョウは続けた。更に優しい声色で。



「なんで分からないのに守るとか言えたの?嘘をついたのかな?俺、嘘吐きって嫌いだな」


「う、嘘じゃない!約束守る!だから、見捨てないで!!ウチ、リョウに捨てられたら死んじゃう!!」


「うん、じゃあどうすればいいか、分かるよね?俺を守る為に、エリは何をしてくれるの?」


「『う、歌姫』をやっつけるから!!ほら、前にリョウ言ってたでしょ!?『鬱陶しい』って!!」


エリザのその言葉に、リョウは露骨にため息をついて、呆れ果てた目で彼女を見つめた。



「……それより、もっと他にあるよね?」



「え?え?……あ、あ!!じゅ、『23人目』、やっつける!!……で、合ってる……?」


後半、エリザの声は消えてしまいそうな程か細かった。静寂の夜の空でなければ、掻き消されてしまうほどに。リョウは抱き締めていた彼女を引き剥がし、無表情で真っ直ぐに、不安で今にも泣き崩れてしまうなエリザを見つめた。



「ご、ごめんなさ「本当に!?ありがとう、エリ!!」


一転、満面の笑みを浮かべ、再び力強くエリを抱き締める。


「……え?」


エリはしばらく惚けた様子だったが、リョウの体温が徐々に彼女に伝わると共に、その表情は明るいものとなっていった。


「う、うん!ウチ、頑張る!」


「ありがとう、エリ。そうだ、行く時、俺の『グール』達を貸してあげるよ。エリが無事に戻って来れるようにって。」


「本当!?リョウめっちゃ優しい!!」


そう言って力強く抱き締め返す彼女は、幸福を噛み締めるように目を瞑る。見下すようにほくそ笑む、リョウとは対極的に。



なんてことは無い。リョウにとってエリザは、恋人でも、母でもなく、ただのエサでしかなかったというだけの事。


金を店まで運び、頼めば何でもする。体を売ることも、人を殺す事も。



愛おしい2人だけの夜空を、エリザは逃すまいと、懸命にリョウを抱き締めた。





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