↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/9

第2話 その蕎麦は敗北の味

 戦利品のペペロンチーノが入った袋を右手に吊り下げ、鼻歌交じりに自動ドアを通り過ぎるやつを横目に、お会計を済ました。


 もう何回目だよ。このとろろ蕎麦食べるの。マジで飽きたって。


 あぁ、もう最悪の朝だ。


 汗で服はベチョベチョ。ペペロンチーノは奪われる。


 俺がなんか悪いことしたか?!してないよね?!


 クソッ……さっさと教室行くぞ、もう……


 学校は、このコンビニから、チャリで三十秒くらい。ほぼ隣だな。ラストスパートじゃ!



 はい、着きました。


 だが最後の試練。こっから四階までの階段がまぁキツイ。


 この階段を一日に何回も行ったり来たりするわけだから、太ももだけが、ボディビルダー並にムキムキだ。


 それは言い過ぎた。


 はぁ、しんど。マジで何なのこれ。拷問か?受験勉強のための体力つけろってか?これのせいで、毎日疲労困憊なんですけど!

 

 はぁはぁ、着いた。着いたぞぉ、四階。


 教室は……うげ、結構みんな来てんな。いや、何の問題もないんだけど。


 今日の時間割は……よし、四限目体育だ。


 しかも、確か種目はバトミントン。しかもダブルスだったはず。これ女子とペア組めば……


「きゃあ!鎌上君カッコいい!」


 とかなったりして……へへへ……グフッ……



 はい、孤立しました。ペア作るとき、流れに乗り遅れ、無事孤立しました。誰だよクラスの人数三十五人にしたやつ!


 てか学級委員長孤立させるクラスどうなってんだよ!


 あれ……でも確か今日一人欠席いたよな……


 誰か余って……ってお前か、雫ノ宮。


 あー確かにこいつと仲いい奴が欠席してたっけ。


「委員長……余ったからペア組んでくれない?」


 メガネをかけ、長い黒髪を弄くりながら近づいて来たこいつは、雫ノ宮燐香。


 一軍気取りどもに見下されてる系女子だな。それなりに友達もいると思うが。


「いいよ」


 必要最低限は喋らない。


 とか言ってる奴がなんで学級委員長になれたかって?それはまた今度教えてやる。

 

 この一時間限りの関係だ。中途半端に仲良くはなりたくない。


 こいつも可愛そうだな。いつものグループの中でペアを作っていったとき、こいつだけハブられたのだろう。


 恐らくこの後、雫ノ宮はあのグループの中で、散々馬鹿にされるのだろう。


 あのゲキモ委員長とペア組んでたって。


 それは、あまりにも可愛そうだ。


 これには、俺も少し、本気を出さなくては。


 解き放たれよ!封印されし、我が……やめます、虚しいので。


「ま、気楽に頑張ろうや」


 これくらいで丁度いいのだ。これくらいが、俺にとって適切な距離感だ。


 二つラケットを手にとって、片方を雫ノ宮へ手渡す。


 こうして、一時間限りの共闘が幕を開けた。



 そして幕を閉じた。


 え?過程が無さ過ぎるって?や、やめろ!聞くな!


 何回も空振りしまくって、シャトルじゃなく自分の頭をスマッシュしたことも聞くな!


 はぁ、最悪だよ。雫ノ宮も対戦相手もツボってたもん。


 あーやばい。思い出す度に、恥ずかしさで汗が止まらねぇ。


 と、とりあえず昼飯だ。もちろんボッチ飯。


 

 本日のメニューはとろろ蕎麦。これうまいんだけど、残った汁をどうするかが面倒だよな。俺は全部飲んでるけど。


 コンビニの蕎麦なんて、特に食レポすること無いよ。いや美味しいんだけどね?!もう食べすぎたっていうか……


 やべ、ほんと言うことねぇな。もう食い終わっちまうよ。


「てかさ〜さっきの委員長めっちゃおもろくない?普通自分の頭に当たる?マジウケるんだけど」


 おーい、聞こえてますよ。てか、雫ノ宮のグループじゃん。ペア組んでやったんだから止めてくれよ雫ノ宮。


 いや、その場に一番居づらいのは雫ノ宮自信か。申し訳ねぇ。


 さっさと平らげて、どっか行っとこう。


 ガハァ、この汁飲み干すときの背徳感やめれねえ!


 絶対に体に悪いって、わかってはいるんだけど。これが本物の塩分チャージってか。



 よし、どっか散歩行こ。できるだけ誰もいなそうな所に。


 渡り廊下とか、風が気持ちよさそうだな。行ってみるか。 



 渡り廊下、着。といっても教室から数十メートルしか離れていないのだが。


 やっぱり、俺はここが好きだ。ここから、街全体を俯瞰するのが、一年生のときから好きだった。当時は教室が二階だったのに、わざわざここまで来て、こうして暇を潰してたっけ。


 あ、あのうどん屋めっちゃ並んでる。マジでうまいからなぁ、また行くか。一人で。


 あ、あそこでおばちゃんたちが喧嘩してる。落ち着け落ち着け。


 今日は少しばかり風が強いな。台風でも来てるんだろうか。あまりにも風の音がうるさくて、それ以外、耳に入ってこないや。


 隣を横切る生徒達の話し声も、放送部の放送も。何も、聞こえてこない。この場所には俺しかいない。


 最高だ、まさに至福の至り。神。


 さぁてそろそろ帰るか。教室に巣食う女子どもも歯磨きへお出かけしているだろうし。あぁ、気持ちよかった、また来よ。



「あのぉ……先輩?」


 ん……んお!?女子が俺を呼ぶ声。風のせいでよく聞き取れなかったが間違いない。


 運命の出会いとは、こうも唐突に現れるものなのか!


 ふ、振り向けば、恐らく、俺の運命の人がいる……


 胸の鼓動が速まるのが、手を当てなくとも感じるほど、俺の心はバクバクし始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。