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片思いしていた元同級生がうちの本屋でバイトを始めたんだが!?〜彼女は毎日のようにリビングまで上がり込んでくるし、距離感おかしくない?〜  作者: 早野冬哉
第三章

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37.教え合い①

「じゃあ、先に優花の答え直す?」


「うん。よろしくお願いしますっ!」


 インタビューの受け答えは完璧だが回答内容がひどい優花と、回答内容は問題ない代わりに受け答え自体がダメダメな僕。まずは僕が優花の回答内容の修正を手伝うことになった。


Q:『桐山書店の魅力は何だと思いますか?』


A:『それは、ポップ──店員がおすすめの作品を紹介するために作り店内に飾ったもの──が多く、お客様ご自身のご慧眼によってご愛読される書籍を散策できるところにあると、わたしは思います』


 さっきも聞いたけど、文字で見るともっとひどいな。


 優花から渡された回答メモに書かれたその他の回答にも目を通していく。その間、僕は苦笑いを止められなかった。


「優花の文、敬語が多いし言い回しも硬いし……悪役貴族にくっついてるごますり商人みたいだね」


「わたしの回答そんなにひどいのっ!?」


「……な、内容は悪くないと思うよ……けど、言葉選びはちょっと……」


 僕が目を逸らしながらフォローすると、優花は分かりやすく肩を落とした。


「ひどいんだ……」


「うん……けど内容はいいと思うから、敬語をもうちょっと柔らかいやつにして語彙を小学生でも分かるくらい簡単にすれば大丈夫だと思うよ。……あ、あとポップの説明はポップの前にした方が分かりやすいと思う」


「やってみる……」


 それから五分後。僕は優花が書き直した回答を見る。


『それは、店員おすすめの作品について紹介しているポップを多く店内に飾っていることで、お客様自身が自分で読みたい本を探せるところだと思います』


 よかった……普通だ。


「どうかな……?」


 珍しく声を抑え、自信なさげに聞いてくる優花に、僕は頷いた。


「たぶん大丈夫かな」


「ホントに?」


 うっ……近い……!


 前のめりになって距離を詰めてくる優花に、僕は一歩後退る。その際揺れた優花の黒髪からは、今日もシャンプーのいい匂いがした。


「うん……」


「よかったぁー。わたしがダメダメだったら透たちにも迷惑かかるもん」


 そう言って優花は胸を撫でおろす。それから一呼吸おいて、優花は僕を見た。


「ありがとう透っ! 次はわたしが透に教えるねっ?」


「うん。よろしく……」


 インタビューの受け答えか……上手くできる気がしないなぁ……。


「じゃあ透。まずは笑ってみて?」


「こう?」


 言われた通り笑顔を作る。そのために頬に力を入れて無理やり口角を上げる。結構キツいなこれ。


 そんなことを思いながら優花を見ると、彼女は黙り込み肩を震わせていた。


 えっ……? 僕何かした……?


 優花の反応がなくて不安になる僕。けれど次の瞬間、優花が漏らした笑い声に、僕の不安は杞憂に変わった。


「ふっ……あははっ! 何その顔っ? 普段通りに笑えばいいんだよっ?」


 腹を抱えて笑う優花。笑われている恥ずかしさよりも、カラカラと笑う優花の笑顔がかわいいと思う感情の方が強くなってしまう僕は、かなり末期なのかもしれない。


「そ、そんなにひどいの……?」


「うんっ! 鏡見てきなよっ!」


 言われた通り洗面所の鏡を見ると、そこには両目を逆さ三日月にし、吊り糸で吊られているかと思うほど不自然に口角が上がった僕の顔が映った。


 これは誰だって笑うわ……。


 鏡に映った自分の顔を見た途端、僕の表情は自然な自嘲に切り替わる。そして次に襲ってくるのは羞恥心。


 えっ……あれまって!? さっきこの顔を優花に見せたんじゃ……!?


 そう思ったが最後、全身の血が沸騰したように体が火照り、変な汗が首筋を流れる。


 うわぁああぁああぁあぁ! 恥ずかしすぎるってこれ! どんな顔してリビングに戻ればいいんだよ!?


 洗面台の前に膝から崩れ落ちる僕。次の瞬間、耳元から澄んだ声がした。


「透? どうしたのっ?」


「あ……いや、その……」


 最初小首を傾げていた優花は、僕の、自分でも分かるくらい赤くなった顔と泳ぎまくった目を見て、ニヤニヤと口元を歪ませる。


「透。わたしにあんな笑顔見られて恥ずかしかったんだー?」


「うるさい……」


 からかうような声で僕を煽ると、優花は人差し指で僕の頬をつついてくる。僕は何も言い返せず、優花から目を逸らして羞恥プレイに耐えた。


 そうして優花に何度も頬をつつかれ、少しは心が落ち着いた頃。僕はゆっくりと立ち上がった。


「と、とりあえずインタビュー練習の続きしない……?」


「あははっ! すっごい分かりやすく話逸らすね。まあいいんだけどさっ!」


 よかった……話逸らさせてくれた。


「じゃ、じゃあリビング戻ろう?」


「うんっ! いいよー!」


 こうして僕たちは、インタビュー練習の続きをするため、リビングに戻った。

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