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片思いしていた元同級生がうちの本屋でバイトを始めたんだが!?〜彼女は毎日のようにリビングまで上がり込んでくるし、距離感おかしくない?〜  作者: 早野冬哉
第三章

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36.いとこが来る、インタビュー練習

「ちょっとアンタ! テレビの取材受けるってホントなの?」


 大学を歩いていると、聞き覚えのある声が飛んできた。振り返ると、金髪ロングのいとこ──乃亜が腕を組んで立っていた。


「本当だけど」


「大丈夫なんでしょうね? アンタがテレビでヘマしたら身内のアタシまで恥をかくことになるのよ」


「大丈夫だって。準備は順調に進んでるし」


 すると、乃亜は苛立たしげに投げやりな声を出す。


「そうじゃなくて、アタシはアンタがインタビューを受けるんじゃないかって気にしてるのよ! アンタそういうの苦手でしょ? ……で、アンタはインタビュー受けるの?」


「受けるけど……」


「ハァ……」


 僕が答えると同時に、乃亜は額に手を当てて盛大にため息を吐いた。


「……しょうがないわね。アタシが直々にアンタのインタビューの練習に付き合ってあげるわ」


「そんなことしなくても──」


「よくないわよ! アンタ昔もそう言ってグループ発表で大恥かいてたじゃない! ……とにかくアタシが面倒見てあげる。反論は認めない!」


「ぐっ……分かった」


 痛いところを突かれて、僕は頷くことしかできなかった。


「決まりね。じゃあ今日アンタの家行くから。取材って来週の火曜日なんでしょ? 時間ないからビシバシしごいてあげる。覚悟しときなさい!」


 別にいいんだけどなぁ……まあ、インタビューは正直自信なかったし、せっかくだしありがたく思おう……。


 その日、僕と乃亜は昼までの講義が終わると、僕の家へと直行した。


***


「どうかなっ?」


 乃亜は僕の家に来るとまず最初に、テレビ局から事前に知らされたインタビューの質問に対する僕と優花それぞれの回答をメモした紙を確認していた。


「そうね……まず透。アンタの回答は悪くないわ。ムカつくけど、テレビ映えが分かってるじゃない」


「そ、そう?」


 よかった……。


 ポップ作りとか店をどうやって売っていくかとかを考える時にお客さんのニーズを意識してきたからか、僕はなんとなくテレビが何を求めているか分かった。


 次に乃亜は優花の方を見て、苦虫を噛み潰したような顔をした。そして乃亜は前髪の先を指でつまむようにして弄りながら、苦笑いの混じった声を出す。


「優花はちょっとかしこまりすぎよ。国王への謁見じゃないんだからもっと崩した表現使った方が映りがいいわ」


「そうなんだ。わたしこういうの初めてだから全然分からなくて……乃亜さんはすごいねっ!」


「べ、別にすごくなんかないわよ! このくらいテレビとかネットとか見てたら誰だって分かるわ。だって透でさえ分かってるんだし」


 優花に褒められた途端に顔を逸らし、あからさまに照れる乃亜。その姿が、僕に懐いてくれていた頃のかわいい妹みたいだった乃亜と重なって──。


「やっぱり乃亜はかわいいな……」


 そんな言葉が、つい僕の口から漏れてしまった。


「は、はぁ!? アンタ何言ってんのよ!」


「あ、いや……その、何でもない……」


 ああ……! 何言ってるんだよ僕は……! 乃亜はもう子供じゃないんだ。キモいだろ……!


「アンタはいつまでアタシのお兄ちゃん気取りなわけ? キモいんですけど!」


「ごめん……」


 顔を真っ赤に染めた乃亜に睨まれて、僕は俯く。


「乃亜さん落ち着いてっ? 透も悪気があったわけじゃないんだよっ?」


 見かねた優花が乃亜をなだめてくれる。


「でもこいつ──」


 反論しようとした乃亜は、優花の顔を見た途端黙り込んだ。優花は僕と反対側を向いていたから、彼女がどんな表情をしていたかは分からない。


「優花あんた……っ! ハァ……分かったわよ!」


「ごめん……」


 盛大にため息を吐く乃亜にもう一度謝ってから、僕は顔を上げた。


「じゃあ次、アタシが質問するから答えてみてちょうだい。とりあえず優花もこのままの答えでいいから」


「分かった」


「まず優花からね。『桐山書店の魅力は何だと思いますか?』」


「それは、ポップ──店員がおすすめの作品を紹介するために作り店内に飾ったもの──が多く、お客様ご自身のご慧眼によってご愛読されたい書籍を散策できるところにあると、わたしは思います」


 優花は完璧な営業スマイルを浮かべ、字面からは全く想像できない抑揚のあるはっきりした声で質問に答えた。


 やっぱりすごいけど……硬すぎでしょ……!


 いくら優花が太陽のように眩しくてかわいい笑顔を浮かべ、鈴を転がすような耳心地のいい声で話そうとも、答えの文面の硬さは誤魔化せていなかった。


「うん。まあ……優花は話し方は文句なしの合格ね。……じゃ、次アンタやるわよ」


「うん……」


 なんか緊張してきた……。


 急に喉が渇く感覚に、僕は唾を呑んだ。


「じゃあいくわよ。『お客様のために心がけていることは何ですか?』」


「は、はい。私たち店員は、お客様のニーズに合わせた本の魅力を紹介し……えっと、少しでも多くのお客様に極上の読書体験を送っていただくため……の、えっと、お手伝いをできるよう努力しております……」


 僕は何度も躓き、最後は声が小さくなりながらもなんとか最後まで言い切った。けれど、優花も乃亜も何も言ってくれない。


「ど、どう……?」


 恐る恐る聞くと、乃亜は白い目を向けてきた。


「……アンタよくそれで最初、アタシの手伝いを断ろうと思ったわね」


 ジト目を向けてくる乃亜。僕は自分が不甲斐なくて、何も反論できなかった。


「ごめん……」


「ハァ……」


 乃亜は顔に手を当ててため息を吐く。優花の方を見ると目が合って、僕と優花は同時に苦笑した。


 すると乃亜は、疲れた目つきで僕と優花を交互に見る。


「相っ変わらずイチャイチャと……」


 乃亜は何か呟いた後、僕たちに向かって人差し指を突き出した。


「アタシは店のテレビ映りを確認してくるわ。アンタたち文か受け答えのどっちかはできるんだから、アタシが店に行ってる間に教え合ってなさい!」


 そう言って乃亜は階段を下りていく。彼女の背中が見えなくなった後、僕と優花は顔を見合わせる。


 数秒の沈黙が流れた後、優花が先に口を開いた。


「……と、とりあえずやろっ?」


「そ、そうだね……」


 こうして僕たちは、インタビューの練習をすることになった。

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