第九話 「 休暇返上 」 昭和十七年 七月
翌日。本来は休日であったが・・・隊員たちは、けたたましい警鐘とともに起こされた。
戦場になれた部隊長たちは、慣れた手つきで指示を出し、緊急発進。
高度4000に到達する頃には、ラバウルの空は白み始めていた。
岩井「飛行隊長から各機、目標を確認した。」
「敵はB-18 24機、および直掩のP-38 8機。これより迎撃を開始する。」
グリム「了解!よし、第一部隊!派手にいくよ!」
グリムの一声と共に、第一部隊が突撃。
液冷エンジン特有の鋭い咆哮を上げ、爆撃機群の横腹へ食らいつく。
ぺい「左翼から失礼しますぞ。落とせぬはずがありませぬ。」
おちょ「第四小隊、これより仕掛けます。被弾には十分注意してください。」
中野「第二小隊、深追いは厳禁です。基本に忠実な連携を維持してください。」
ぺいが古風な言い回しで僚機を鼓舞し、飛燕の旋回性能を活かして敵の背後を取る。
おちょは零戦の軽快さを活かし、爆撃機の防御銃座の死角を突いて一撃を見舞う。
その下層では、中野が冷静に戦況を見つめていた。
第一部隊が爆撃機群に攻撃を始めた頃、少し下の高度でも戦いが起きていた。
FV「さあ、ひと稼ぎと行きますかぁ。さと飛曹長、右のP-38宜しく。」
さと「了解。英語で降伏を勧めてやりたいところですが・・・」
「今は撃ち落とすのが先ですね。」
さとは軽妙に答えながらも、敵の双胴戦闘機P-38に対し完璧な編隊飛行で対抗する。
FVは零戦の操縦桿を鮮やかに捌き、敵機を次々と照準器に収めていった。
FV「おっと、そっちは行き止まりやで。・・・ほな、さいなら。」
FVの放った20粍機銃がB-18のエンジンを貫き、炎と黒煙が上がる。
やがて炎は機体を包み、機体は地面へと墜ちていった。
空は機銃掃射の曳光弾で編み上げられた。グリムは笑いながら敵陣を掻き回す。
グリム「よし、捕まえた!これで二機目だね!」
グリムの飛燕が急降下からの引き起こしでB-18の腹部を切り裂いた。
しかし、敵の弾幕も激しい。
田中「ぺい中尉、右からお迎えが来てますよ!」
ぺい「承知。ですが、拙者の後ろは取らせませぬぞ!」
ぺいは僚機の田中二飛曹と見事な交差を見せ、迫る敵を退けた。
戦場の中央、一際凄まじい軌道を描く一機があった。岩井雪奈の零戦である。
彼女の機体は、まるで意志を持っているかのように弾丸の隙間をすり抜け、
最短距離で敵の急所を突いた。
岩井「まずは一機、と。次はあれか。悪いが、大事な部下だ。やらせはしないよ。」
岩井は正面から突進してきたP-38に対し、寸前でひねり込みを敢行。
一瞬で背後を取ると、短い一連射で撃墜した。
そのまま反転し、僚機を狙っていた別のP-38を連続して仕留める。
グリム「雪奈大尉、流石ですね・・・やっぱ人間業じゃないですよ・・・」
岩井は休むことなく爆撃機隊へ突っ込んだ。
二機のB-18が重なる瞬間、その隙間を縫うように機銃を叩き込む。
岩井「墜ちな。」
冷徹な宣告とともに、二機の爆撃機が火を噴き、海へと落ちていった。
数十分の激闘の末、半数近くを失った敵軍は、爆弾を海へ投棄して敗走を始めた。
岩井「深追いは不要だ。各機、損害は?」
グリム「第一部隊、全機健在。数機に被弾ありますが、飛行に支障ありません!」
FV「第二部隊も大丈夫っす。いやぁ、帰ったら酒でも飲みますかねぇ。」
朝日が完全に昇り、ラバウルの美しい海が青く輝き始める。
損害なしという圧倒的な戦果を携え、誇らしげに基地への途についた。




