第三十八話 「 我が土俵 」昭和十八年 二月
第一部隊が交戦する頃、第三部隊も交戦を開始した。
敵空母はすでに見えているが、恨めしそうにこちらを見るばかりだ。
井上「飛行隊長、なぜ対空砲を撃ってこないのでしょう?」
岩井「何、簡単なことだよ。我々は射程外を飛んでいる。」
「だから急いで迎撃隊を出したんだろうが・・・」
「奴らの低空性能など、たかが知れている。」
そして周囲を見渡し、指示を下した。
岩井「そろそろだな。まずはあの新型機をすべて墜とせ。」
「全機、降下開始。」
一同「「「了解!!!」」」
岩井の指示の下、25機が一斉に降下した。
・・・だがその直後、岩井だけは機首を上げ一言、ぽつりと零す。
岩井「この状況なら、私の援護は要らないな。」
井上隊・島田隊が、新型機「F4U」に向け、一皮むけた隼で攻撃を仕掛ける。
火力は高くないものの、胴体に着いた機銃は、要所を的確に狙っていく。
井上「照準器が変わって、周りも見えるようになった。おかげで狙えるな!」
島田「ですね部隊長!仮にも12.7粍だ!墜ちろ!」
熟練の的確な射撃により、爆撃機のように固いF4Uも、耐えきれず全て墜ちていく。
その間に、田村曹長たちが操る鐘馗が、F4F数機を蹴散らした。
伊藤「反転して攻撃ですか!小隊長!」
田村「待て伊藤!部隊長の指示があるまで一時離脱だ!」
少し遅れて降りてきた零戦と隼が、残敵に狙いを定める。
村上「照準よし、距離200!食らえ!」
中島「えっと・・・この敵にしよう!そこっ!」
高木「1機燃やした!」
1機1機、着実に敵機が墜ちていく。敵も後ろを取ろうと試みるが、機体が動かない。
あれよあれよという間に、軽快な日本機たちに翻弄されていった。
井上「そろそろ行くか!鐘馗隊、再攻撃!」
田村「了解!」
再攻撃で何機か墜とし、離脱しようとした時だった。
島田「伊藤、右上げろ!」
伊藤「すみません!」
伊藤機の右主翼が、海面に白波を立てた。すかさず島田が指示を出し、姿勢を正す。
少し緊迫する場面はあったが、無事に敵編隊を壊滅させた。
井上「どうにか殲滅できたか・・・島田、各機の被弾状況は?」
島田「被弾自体はなさそうに見えます。危ないところでしたね・・・」
安堵した井上達の下に、無線が届く。
グリム「雪奈大尉!こっち殲滅しましたよっ!」
岩井「殲滅か。損害は?」
グリム「ほっとんど誰も被弾なし!」
岩井「了解、よくやった。」
グリムの声は、さも余裕であるかのように聞こえた。
岩井「お前たちもよく頑張った。一旦補給してくれ。」
一同「「「了解!」」」
岩井「そしてすまないが、私にはまだやることがある。基地防空は頼んだぞ。」
井上「了解!」
井上と島田は不安を残しつつも、補給に戻ることにした。
そして増槽をつけたままの岩井は、どこかの空へと飛び去って行った。
・・・何かを、探し求めて。




