第三十五話 「 迎えし刻 」昭和十八年 二月
新型機が来て、一週間。司令の下に、作戦命令が下令された。
これを受け、全部隊長が緊急招集を受けた。
司令「潜水艦隊より南方作戦本部に、敵機動部隊発見の報が入った。」
「前回のように行く訳にはいかない。我々も出撃するぞ!」
一同「「「了解!」」」
岩井「まずは索敵が最優先だ。鏑木中尉、どうしても困ったら私も行こう。」
索敵は生死を分けるというほど、戦場では必要不可欠だ。
艦隊の水偵や艦攻、陸軍の偵察機も合わせると、今回は30機以上の索敵網となる。
鏑木「ありがとうございます。新型機を駆使し、最速発見に努めます。」
司令「作戦状況は随時伝える。岩井大尉、現場指揮は頼んだぞ。」
岩井「了解。双方の艦隊規模はどれぐらいだ?」
参謀「ヨークタウン・エンタープライズと、ボーグ級護衛空母2隻らしい。」
「味方は第六航空戦隊、飛鷹・隼鷹と、増援で瑞鳳が来る。」
「基地航空隊は、陸軍飛行第62戦隊と、海軍の第203航空隊だ。」
司令「・・・頼もしい戦力だな。」
参謀「ですが、これでやっと対等です。・・・気は抜けませんね。」
数ある頼もしい味方戦力の中に、グリムは聞き馴染みのある部隊を見つけた。
飛行第62戦隊。友人ぺいの、異動前の部隊である。
グリム「おお!ぺいさんのいた部隊ですね!これは期待できそう!」
FV「えっとこれで戦力差が・・・?」
「こっちが244、向こうが228っすか。結構な決戦っすね・・・」
井上「おお!数でも勝るとは!やる気が出てきました!」
岩井「あくまで総数だがな。だが、いいことだ。これなら部隊を分けられる。」
数的有利の予定となり、部隊長たちは喜んだ。
ただそんな中、司令部の面々は難しそうな顔をしていた。
司令「偵察の際、気を付けて欲しいことがある。」
「複数の新型機の情報と、新方式の対空砲火が確認されているのだ。」
参謀「報告もほとんどない『未知の対空砲火』だ。注意した方がいい。」
そして、鏑木の方を向いてこう言った。
司令「触接の際は、くれぐれも艦隊に近づきすぎるなよ。」
鏑木「かしこまりました。十分注意した上で、敵編隊の動向を注視致します。」
岩井「我々も新型機への更新で、実質練度が下がっている。」
「・・・必ず先手を取りたい。敵艦隊と戦闘機隊だけは、先に見つけてくれ。」
「慢心はするな。索敵と先制を、第一とする。」
急ぎ会議を終え、滑走路では総勢89機が、そのエンジンを轟かせていた。
あまりの機体の多さに、人の声も、波の音も。全てかき消されてしまう。
この数を一飛行隊で運用できるのは、我々285隊しか存在しなかった。
岩井「285隊全機、これよりソロモン海へ向かう。」
「全機、発進用意。部隊ごとに離陸せよ。」
飛行隊長、岩井の零戦二二型甲が地を離れたことを皮切りに、
第一部隊、第二部隊、第三部隊と、次々と翼が空に舞い、岩井を追う。
そして、約十分後。基地上空の空は、無数の飛行機雲で覆いつくされた。
司令「・・・お前たち、頼んだぞ。」
参謀「・・・無事を祈る。」
「そして山内司令。我々の準備も整いました。」
司令「分かった。行こう。」
「空だけが、戦場という訳ではないからな。」
―もう、同じ轍は踏まない。
そう決意して、岩井達はソロモンの海へと急いだ。
今度こそ、味方空母を護りきるために。




