第三十二話 「 汎用艦上機 」昭和十八年 二月
対潜体制の強化・輸送用船舶の増強により、本土 ― ラバウルの航路はかなり安全だ。
今では、天気が良ければ二週間に一度の頻度で補給船団が来訪する。
兵器・弾薬・食料と、それに加えて「訓練された兵士達」。
十分な数が、今日も届けられていた。
・・・その中に、またも謎の巨大な単発機が。
岩井「この翼、どこかで見たな・・・」
FV「F4Uじゃないっすか?逆ガル翼っていうんすけど、これは・・・ナニコレ。」
グリム「戦闘機っていうよりは、見た目は襲撃機に近いですね?」
襲撃機とは、対地攻撃に特化した機体。FVの私物機体「IL-2」などがいい例だ。
司令「試製流星とやらの、増加試作機らしい。艦上爆撃機とのことだ。」
井上「失礼ながら、艦上機であるならなぜ我々に・・・?」
「南雲機動部隊に任せた方が、お言葉ですが戦力になるかと・・・」
「あ、一応言いますが鏑木さん、あなた方の腕は凄いと思ってますよ!?」
井上が、素朴な疑問を投げかけた。もっともな質問だが、闇深い理由があった。
鏑木「ありがとうございます。井上さん。」
「ただ、この大きさだとおそらく空母に乗せるのは難しいかと。」
グリム「へっ?艦爆ですよね!?」
グリムが驚くのも、無理はない。この機体は「艦上爆撃機」なのだから。
ではなぜ、「基地航空隊」に送られたのか。
岩井「司令、なんとなく来た理由は分かった。厄介払いだな?」
少し苦い顔をしていた司令だが、その重たい口を開いた。
司令「・・・大本営のせいだ。大本営が無茶を言いすぎた。」
「80番と魚雷を積めて、20粍を積んだ艦爆だと!?無理に決まっている!」
司令の怒りはまだ続く。
司令「おまけに奴らは、80番を抱えた状態で300kt等と言ってのけた!」
「零戦開発の二の舞ではないか!!!」
FV「司令、落ち着いてくだせぇ・・・」
「んで、できたのがこいつと。」
FVがなだめつつ、話をもとの道に戻す。
司令「すまない、取り乱した。ああ、海軍工廠と愛知の、汗と涙の結晶だ。」
「新型エンジンを開発出来た結果、どうにか達成できたらしい。」
グリム「おお!海軍もやっぱりすごいですね!」
岩井「・・・ちょっと待て、『新型エンジン』と言ったが、栄二型の事か?」
司令「・・・整備主任には謝らないといけなくなった。」
岩井「・・・そうか、違うのか。」
機体は試験に移された。艦爆ということもあり、
まずは鏑木と、なんでも乗れるFVが試験した。
その試験で、ヒヤリとすることが起きた。離陸時に滑走路を逸脱しかけたのだ。
鏑木「くっ、トルクが・・・!なんですかこのエンジンは・・・!」
FV「おっ、やばっ。これ下手し2000(馬力)あるだろ・・・」
鏑木が逸脱しかける中、海外機にも慣れているFVは軽々と飛んだ。
試験はまだ続く。重たいからか時間はかかったが、高度5000に到達。
FV「燃費は悪くないか。ちょっと熱いが、ラジエータ開けばまあまあ・・・」
鏑木「FVさん!この速度は・・・!」
FV「おいおいマジかよ・・・550km/hやと!?」
無茶な要求は、ひとまず満たされていた。いいことなのか、悪いことなのか・・・
基地へ戻ると、次は岩井が乗り込み、試験する。ただ、侵入者も2名いた。
岩井「・・・なぜ乗ってきた。流石に無断は困るんだが。」
こんかわ「大尉殿が面白そうな機体に乗ってたので、つい・・・」
試製流星の後部座席には、いつ乗ったのだろうか。こんかわが座っていた。
岩井「なるほど。ではこんかわ少尉、あれが見えるな?」
岩井が示す先には、1機の4発機が見えた。だが、B-17とは少し違うようだ。
こんかわ「あれはB-17・・・いや、B-24ですかね?」
「・・・大尉殿?なぜ全速力で向かってるんです?っていうか速い!」
岩井「言わなくても分かるだろ。」
「―あれを墜とす。」
こんかわ「ですよねぇ!?」
岩井「あ、機体の試験も兼ねているからな。覚悟はしてくれよ。」
こんかわ「絶対やばい動きするじゃないですか!!!」
残念ながら、予感は的中した。
岩井は左右上下に機体を揺さぶりつつ、どこまで動くかを確認していった。
そして、ようやくB-24に狙いを定める。敵の無線アンテナは、何故か折れていた。
南はスコール。なんとなく理由は察した。
岩井「まったく、機首が重くて狙いにくいな。」
そんなことを言いながらも、ピタリと照準を合わせる。
流星の二号銃が重たく響き、B-24の主翼が大きな音を出して折れる。
機体は真っ逆さまに、海面へと突っ込んでいった。
そして、岩井たちの帰投から1時間後・・・
こんかわ「・・・はっ!大尉殿は!?」
いつの間にか気絶していたこんかわは、今頃目を覚ましたのだった。




