第三十一話 「 思いつきの改修機 」昭和十八年 一月
あれから翌週。中野隊には五二型、おさがりの三二型をさと隊が。
おちょ隊、こんかわ隊に二二型が配備され、習熟訓練が繰り返されていた。
そんな中・・・岩井はある人物を訪ねて、整備場にいた。
岩井「伊丹准尉、話がある。」
整備主任「これはこれは飛行隊長!何か御用でしょうか?」
「飛行隊長直々となると、まさか整備ミスとか・・・」
岩井「いや、ミスはない。整備はよく行き届いていて、ありがたい限りだよ。」
岩井がそう答えると、整備主任の伊丹は深々と頭を下げた。
岩井「それより物は試しで聞きたいんだが、こいつに二号銃は積めるか?」
整備主任「二一型・・・いや、二二型ですか。かしこまりました。」
「急いで1日で仕上げます!お待ちくださいませ!」
岩井「いや、急ぎではないんだが・・・」
そう話す頃には、伊丹は図面を書きに行ってしまっていた。
―そして夕刻。
整備主任「ひ、飛行隊長・・・お待たせしました・・・」
岩井「・・・急かしてしまったようだな。すまない。」
整備主任「零戦二二型・・・いや、名付けるなら二二型甲ですな!完成です!」
見事に整備された、改修機「二二型甲」が姿を現したその時。
-空が、岩井を呼んでいた。防空出撃だ。
岩井「それじゃ、早速行ってくるよ。」
整備主任「お、お気をつけて行ってらっしゃいませ・・・!」
第二部隊の即応待機班と岩井は地を離れ、飛び立っていった。
接敵までの道中、エリンギと僚機はこんなことを口にした。
エリンギ「・・・ん?あれっ大尉。いつの間に五二型に・・・五二型かこれ?」
今野「いえ、二一型か二二型だと思いますが・・・」
エリンギ「うぇ?でも二号銃だしなぁ・・・」
岩井「さっき改造してもらったばかりの、『二二型甲』だ。」
ここで、エリンギが重要な疑問を口に出す。
エリンギ「なるほど・・・いや待ってください!二号銃初めてですよね!?」
岩井「安心しな。休暇を利用して習熟訓練はやっていた。」
「800mくらいまでなら狙えるから、安心していいぞ。」
エリンギ「い、いつの間に・・・多分僕が昼寝してた時だろうなぁ・・・」
そこは岩井。いつの間にか二号銃の感覚をつかんでいた。
そんな話をしていると、接敵した。相手はB-17 4機編隊。偵察任務のようだ。
まずはエリンギ隊が、上空から突撃。1機を墜とし、1機を火だるまにした。
少し遅れて、岩井もB-17の上方に回った。
岩井「これが二号零戦か。これなら上昇の遅れが減る。」
「それに、全開で回してもよく冷えるな。一号零戦より冷えるかもしれない。」
そう一人で話しつつ、攻撃を開始。今までの2/3ほどの偏差を取り、引き金を引く。
距離600mにも拘わらず、B-17の固い翼がぽろっと取れた。
一号銃では、至近距離ならあり得るが・・・
岩井「この距離から最大火力が出るとは。これは使える。」
岩井はそう確信した。夕焼けに移る彼女の顔は、少しの笑みがあるように見えた。
帰投後、岩井は実戦での報告もかねて、謝礼の為に整備場へと向かった。
岩井「上出来だったよ。ただ、1つだけお願いがある。」
整備主任「な、なんでしょう・・・?」
岩井「垂直尾翼に、黄色の三本線を付けておいてくれ。」
整備主任「・・・かしこまりましたっ!!!」
整備員たちは即座に足場を組み立て、作業が開始された。
黄色の三本線。それは、「飛行隊長機」の証である。




