第三十話 「 二号零戦 」昭和十八年 一月
翌日。今日もまた、新型機が到着したらしい。
滑走路の脇には、複数種類の戦闘機。
その見た目は、まさしく海軍の主力「零式艦上戦闘機」に違わなかった。
駐機場に集いし司令達や、第一・第二部隊の面々は、十人十色の意見を口にしていた。
参謀「なるほど、海軍は零戦を改良していく形なのですね。」
「確かにこれなら、生産ラインに負担が少ないですね・・・」
司令「・・・裏を返せば、新型機の開発が難航しているということだ。」
「『雷電』なる局地戦闘機を開発しているようだが、いつになることやら・・・」
二人が陰で裏事情を話す中、当の搭乗員たちは、新型の零戦に胸を膨らませていた。
中野「これは・・・二一型ですか?こっちの機体は・・・」
おちょ「桜少尉、それは二二型だよ。こっちは五二型だってさ。」
「性能は・・・あ。詳しそうな人が来た!」
振り返った先には、零戦と言われれば、基地の誰もが思いつく人間がいた。
少なくとも、零戦の扱いで彼女の右に出る者は、この基地にはいない。
岩井「二二型は、三二型の翼端を二一型仕様に戻したものだ。」
「要するに、ちょっと強くなった二一型だな。」
岩井が指を差したのは、左の零戦。ほとんどの外見は、既存の二一型と変わらない。
強いて言えば、エンジンが違うことだろうか。
軽く説明を終え、次は右の零戦を指さした。
岩井「そして五二型は、新たに再設計された零戦だ。二一型より横転性能が改善。」
「自動消火装置を搭載し、さらには新型機銃で火力も高まっている。」
さと「新型機銃!・・・どっかの少尉さんに聞かれなきゃいいですけどね。」
こんかわ「聞かれたら最後、下手したら朝まで止まりませんからね・・・」
第二部隊の面々には、とある鐘馗乗りが頭に浮かんでいた。
FV「いや、あいつなら言わなくても勝手にいじるだろ。(笑)」
「それで大尉、新型機銃って何です?」
岩井「通称『二号銃』。長砲身になり、ベルト給弾式になったおかげで、」
「弾道・威力・弾持ちが改善されたと聞いている。」
こんかわ「大尉殿!この機体使いたいです!」
そう言って、こんかわが指し示したのは・・・左の「二二型」だった。
岩井「ほう。理由を聞こう。」
こんかわ「大尉殿に教わったのは、一号銃の弾道です!実戦でも慣れてます!」
「なので、自分はこっちを使おうと思いました!」
彼女の回答に、ほんの少しだけ口角を上げる。
岩井「流石に見込んだだけはあるな。いい理由だ。」
こんかわ「大尉殿もどれかに変えるんですか?」
岩井「二二型がいいとは思ったが・・・二号銃も試してみたいところだな。」
こんかわ「やったぁ!大尉殿とお揃いですね!」
着実な弟子の成長に、満足げな顔をする岩井だった。
一方、その片隅では・・・司令がなぜか、グリム達に頭を下げていた。
司令「すまない!陸軍機もちゃんと発注したから、もう少しだけ待ってくれ!」
グリム「えっ!?いやいやいや、司令!頭上げてくださいよ!」
云われもない謝罪に、部下たちの、怒涛の反論が始まった。
井上「司令が海軍だから海軍機という訳ではないことは分かっております!」
「お願いですから頭を上げてください!」
ぺい「そうですぞ!ここに来て約1年、1年ですぞ!?」
「司令はそういうことはしないと存じておりまする!」
島田「我々陸軍出身者一同、司令には日々感謝しております!」
グリム達は必死に頭を上げさせた。どうやら、何か勘違いをしたらしい。
司令「そ、そうか・・・?てっきり海軍贔屓と言われると思ってな・・・」
グリム「海軍贔屓だったら、4機で1小隊になんかなってないですよ!」
空母と陸上基地の違いから、海軍は基本、3機1小隊。陸軍は、4機1小隊。
そんな中285隊では、基地航空隊ということで陸軍式を採用した。
井上「なんなら、あの飛燕の整備ですらしっかりと行き届いてますし!」
島田「そんな司令を馬鹿にするやつには、自分が折檻してやります!」
ぺい「左様。某もこの刀で・・・」
司令「西園寺中尉、気持ちはありがたいが軍刀はよしてくれ。」
「そんなことで、君を憲兵送りにはしたくないからな・・・」
海軍軍人ながら、陸軍出身者にも慕われている司令だった。




