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第三話 「 初めての演習 」 昭和十七年 四月

そして翌週。部隊分けが終わり、初めての隊内演習が行われる事になった。

隊員たちが一番気になっていたのは・・・飛行隊長、岩井の実力。

そこでまず話に上がったのは、精鋭部隊「加藤隼戦闘隊」の元 小隊長。

グリムこと平沼中尉と、その力量を比べてみる事にした。


岩井「ほう、一騎打ちか。久々にやるな。」

FV「あら、そうなんですかい?」

岩井「向こうの演習だと―」


二人が話していると、声援が会話を遮ってきた。


第一隊員「部隊長!応援してます!」

グリム「う、うん!ありがと!頑張るよ!」


その反応に違和感を感じ、部下はグリムの顔色を見た。

グリムは笑顔で答えたが、どちらかというと・・・「苦笑い」だった。


グリム「・・・ただ、雪奈大尉が相手だとなー。」


部下の期待に応えるべく、聞こえぬようにそっと呟いた。


岩井「さて、そろそろ時間だ。行こうか。」

グリム「行きましょう!・・・勝負にならないと思いますけど。」

岩井「勝負は時の運、そんな言葉もあるな。」

グリム「・・・それもそうですね!いざ、尋常に!」


まるで西園寺・・・ぺいのようなことを言いながら、二人はそれぞれの機体へ。

グリムが乗る機体は、上昇・速力・エネルギー保持に優れる飛燕。

「三式戦闘機一型乙」という、陸軍の新鋭戦闘機だ。

対して岩井は、「零式艦上戦闘機二一型」。これに曲がり勝てる機体は、ほぼいない。


―交戦開始。高度は、グリムが若干優位。

ここで曲がれば、全てが無駄になる。そう思ったグリムは、機首を引き起こした。

飛燕がエンジン音を響かせ、垂直に近い角度で突き上がる。


グリム「これなら、雪奈大尉でも流石に・・・え?」


背後を見る。岩井の零戦は、照準こそ合わないものの・・・

確実に、6時を取っていた。


グリム「嘘でしょ、ゼロ戦だよね・・・?ついてきたのって・・・」


上昇を続けていると、反応が鈍くなってきた。


グリム「しかたない、一か八か、少し角度を・・・あっ。」


一か八か、速度を戻そうと上昇を緩めた。

・・・それが隙になったことを、グリムは瞬時に理解した。

機首が少し下を向く。速度は戻り始め、再び高度を稼ぎはじめた。

だがその隙を、零戦の照準器に捉えられた。


岩井「まあ、そう来るよな。」


理論上、回避行動を取ることはできた。だが・・・できなかった。

この状況から、零戦の機動性に勝る動きができるとは思えなかったのだ。

開始の合図から、僅か5分。判定は岩井に下った。


おちょ「・・・あのゼロ戦、改造されてたりする?」

ぺい「小杉殿、岩井殿のことですぞ?機体に改造など入れる訳が。」

おちょ「・・・それもそうか。」


その後の2本目、3本目も、戦い方を変えたが結果は同じであった。

まさしく、「勝負にならなかった」のだ。


グリム「だから言ったんですよ・・・雪奈大尉とは極力やりたくないって。」

   「にしても、零戦なのによく吊り上げに乗りましたね・・・」

岩井「だって、その方が油断するだろ?」


図星だった。岩井は、戦術の裏をかいたのだ。

地上に戻った岩井は、表情一つ変えずに、並んでいる隊員たちにこう問いかけた。


岩井「・・・それで、次は誰なんだ?」


その後、他の隊員たちが挑むも・・・もれなく全て、返り討ちにあった。

納得できない隊員たちが1小隊4機で挑むも、照準すら付けられない始末。

実力確認をしていた司令を含め、岩井以外の全員が理解に苦しんでいた。


隊員1「司令、隊長のあれ、おかしいですよ・・・なんですかあの腕は・・・?」

隊員2「たまたまとか?例えば、機体の不調とか・・・」

隊員2「部隊長、調子出なかったとかですかね?」

グリム「・・・だといいんだけどね。」


納得できない隊員たちに、ぎこちなく笑いながら返す。


司令「元第五○航空戦隊とは聞いていたが、ここまでとは・・・」

岩井「一騎打ちはともかく、これぐらいは教練だと普通だったぞ?」


皆が驚く中、岩井はケロッとした顔で返す。


隊員たち「「え、なんですかその教練・・・一航戦ならともかく、五〇ですよね?」」

司令「そういえば、お前たちは陸軍出身だから知らないのか。」

  「海軍第五○航空戦隊は、教導隊だ。対抗部隊としても有名だな。」

グリム「昔に話は聞いたけど・・・航空隊の先生だからね。」

   「そりゃ、なかなか勝てないよ・・・」


そう語るグリムの顔には、少々疲れが見えていた。

その様子を見て、すかさず声をかける者が。


中野「平沼中尉、大丈夫ですか?よかったら使ってください。」

グリム「集中しすぎちゃったかな・・・いつもありがと!」


それを受け取り、タオルで汗を拭き、水筒の水を飲む。


FV「・・・にしても相変わらず、あの時みたいにえぐい戦法使いますねぇ。」

  「あれで手抜きってのが怖ぇよ・・・」

  「ってか大尉、さっきの話の続きって・・・」

岩井「基本的に多数相手だった。ただのそれだけだ。」


振り返り、隊員達の方を向く。


岩井「今回で皆の特徴は掴めたから、あとは教えるだけだな。」

隊員たち「「宜しくお願い致します!岩井隊長!」」

岩井「・・・調子のいい奴らめ。」


そう語る岩井の顔には、かすかに笑みが浮かんでいた。

翌日から岩井による教練が始まり、来る初陣へと準備を進めていた。

-だが。しばらくして、とある重要な問題が起きてしまった・・・

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