↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/44

第四話 「 第二部隊長 」 昭和十七年 四月

285隊は、2つの制空部隊により構成されている。

第一部隊の隊長は、グリムこと「平沼 義雄」中尉。

第二部隊の隊長は、「田中 達也」中尉だったのだが・・・


司令「岩井大尉、第二部隊の尉官を集めてくれ。緊急会議だ。」

岩井「了解。・・・何があった。」

司令「田中中尉が、結核で倒れた。・・・医官によれば『絶対安静』とのことだ。」

  「おそらく作戦には間に合わないだろう。よって、代理を決める。」


かくして、第二部隊の尉官3人が呼び出された。

吉田・藤田・清水の3名。全員少尉である。


司令「皆、集まってもらってすまない。」

  「第二部隊の部隊長を決めたい。我こそはというものはいるか?」


沈黙。誰も、手を挙げることは無かった。


岩井「・・・何か事情があるようだな。」

司令「急だしこうもなるか・・・ひとまず事情を聴きたい。話してくれ。」


決まらないことには、この会議を終わらせることはできない。

そこでまずは、全員から話を聞くことにした。


吉田「ではまず私から・・・自信はあります。ただ・・・」

  「昨年の健康診断で、免疫が弱いことを指摘されまして・・・」

  「自分が欠ける可能性がある以上、部隊長は不適と判断しました。」


少々悔しそうに、頭を下げる。

吉田は自身の希望より、任務の持続性を選んだ。


司令「・・・そうか。残念だ。だがその通りだな。流石に部隊長不在は厳しい。」

  「免疫に関しては・・・あとで医官と相談しよう。」

吉田「ありがとうございます。」

司令「ではそのまま、藤田少尉。君はどうなんだね?」


行動予定に医官との連絡を入れながら、次の者へと話をつなぐ。


藤田「はっ。空戦は得意な方ですが、」

  「その力を出せるのは、指示を下さる方がいらっしゃるからです!」

  「ですので小隊長の方が、自分はより一層活躍できると思います!」


先日、岩井に筋があると褒められていた藤田だが、あくまで個人の技量。

彼はそのことを、十分に理解していた。


岩井「ああ、いい判断だ。次、清水少尉。」


岩井はそれを褒めつつ、次へと流した。


清水「はい、その・・・過去に一度、判断ミスで部下を危険に晒しました。」

  「同じ状況が起きたとして、今度は正しく判断できるかというと・・・」

  「自信がありません。」


よほどの危機だったのか、若干涙が浮かんでいる。

それを見た司令と岩井は、深く聞くことは無かった。


岩井「・・・そうか。」

司令「事情は分かった。無理に押し付けるわけにはいかないからな・・・」

  「うーむ・・・どうしたものか。」


それぞれ理由は違うが、24の翼を率いる「部隊長」には、敷居が高かった。

だが、彼ら以外に第二部隊の尉官はいない。

手詰まりに見えたその時、岩井が策を思いついたかのように立ち上がった。


岩井「・・・当てはある。まあ、当人はやりたくないだろうがな。」

  「昔、同じ空で共に戦ったことがある。適正はあるはずだ。」

司令「・・・岩井大尉がそこまで言うなら、任せよう。」


そう言って、翌日とある人物の所を訪れた。傭兵出身のFV軍曹だ。

昼間から酒保で酒を嗜みつつも、机には地図と敵機の資料が。


岩井「FV軍曹。調子はどうだ?」

FV「ぼちぼちっすねぇ。予想よりは悪くないっす。」

  「そういえば、うちら第二の部隊長、誰か決まりました?」

岩井「いや、どうもいい人材がいなくてね。まあ、一人当てはいるんだ。」

FV「へぇ、そんな人が。ちなみに何方さんです?」


そう聞かれて、隣を向いた。


岩井「空戦経験も豊富、人望もある。指揮経験も何度かある人物だ。」

  「名前は・・・古谷文治。」

FV「へぇ、古谷・・・ちょま、自分っすか!?いやいや、たかが軍曹っすよ!?」

  「グリムさんはいいっすけど、他の尉官に変に目ぇ付けられたくねぇですし、」

  「自分はやめといたほうがいいんじゃないですかねぇ。」

岩井「・・・なるほど、分かった。」


案の定、FVは首を横に振った。だが、それで諦めるわけにはいかない。

ここで諦めては、第二部隊をまとめる者がいなくなる。

二度の交渉を終え、岩井はとある切り札を持って、再び交渉することにした。

今日もFVは、いつもの場所にいた。


岩井「確か理由は、士官じゃないと駄目ってことだったな。」

FV「ええ、中隊長・・・ましてや部隊長なんて、士官じゃないとダメでしょう?」

  「傭兵崩れの自分にゃ、受ける資格も金もツテもありませんぜ。」

  「まっ、あったなら別に受けてもいいっすけど。」

岩井「では、士官になればいい。ということでいいんだな?」


一見、意味の分からない返しに聞こえる。だが、不器用に定評のある岩井だ。

絶対に、何か裏がある。

それに、このまま部隊長不在はまずい。


FV「・・・ま、そうっすね。やりゃいいんすよね?やりゃ。」

岩井「そういうことだ。」

FV「はぁぁ・・・大尉には恩もありますし?引き受けますけども。」

  「部隊のやり方は、自分に決めさせてくださいよ?」

岩井「ああ、好きにしてくれ。」

  「私も司令も、『部隊』になればそれでいいと思っているからな。」


そして翌日。FVの階級章が一新された。


FV「へぇ、『特務士官制度』っすか。こんなのあったんすねぇ。」

司令「ああ。お前のような、才があるものを無駄にしない為の制度だ。」

  「それでは改めて、よろしく頼むぞ。」

  「・・・第二部隊長、古谷文治 飛行少尉。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。