第二十八話 「 ソロモン沖海戦 」昭和十七年 十二月
あれから、何度か空戦はあった。少々損耗は出たものの、作戦に支障はない。
地上の戦いはいよいよ大詰め。工兵隊も追加投入され、島の大半を占領済みだ。
本日の担当は、第一部隊。岩井もついて行きたい様子ではあったが、
司令の指示で、ある意味「特別に」休暇を取っている。
中野「雪奈大尉、案の定怒られてましたね・・・」
グリム「そりゃ怒るよ。だって・・・7日目だよ?」
ぺい「相変わらず、あの人は空にしか興味がないですな。」
「それでこそ、あの人でござるが。」
空に慣れている第一部隊は、いつものように気楽に。
しかし凛として、対空警戒にあたっていた。
そんな中、百式司偵から緊急の通信が入る。
―敵機動部隊、見ゆ。正規空母2隻を有する艦隊だという。
中野「機動部隊ですか!?」
ぺい「敵さんも本気みたいですな・・・グリム殿。」
グリム「分かった!・・・司令に連絡するね!」
無線を切り替え、遠距離に飛ばす。そして、司令はすぐさま決を下した。
司令「増援を出す、それまで耐えてくれ!」
グリム「了解!」
燃料、弾薬ともに十分。増援までは戦えるだろう。
第一部隊は、速やかに戦闘行動に移った。
おちょ「敵編隊発見!グラマン27機!」
グリム「了解、おちょさんたち、行くよ!ぺいさん、次に備えてて!」
ぺい「合点承知!」
第一部隊は2隊に別れ、ぺい率いる2班は待機。1班は戦闘機隊を奇襲した。
数は半分なれど、こちらには高度優位がある。
雲の切れ目から襲ったためか、敵は直前まで気づかず、回避が遅れた。
グリム「よーし、殺っちゃおうか!」
おちょ「いいねいいね!それじゃ、突撃!」
飛燕の12.7粍、零戦の20粍が火を噴いた。編隊の約半分を墜とし、乱戦となる。
ある機は墜とし、ある機は墜とされた。空は弾幕で包まれていた。
こうして6機が墜とされるも、最終的には敵の大半、18機を撃墜した。
この損害に、敵編隊は踵を返して反転。空には、一時の静寂が訪れた。
グリム「ぺいさーん!こっち終わったよー!」
ぺい「流石グリム殿。某も負けてはいられませんな!」
その頃、ぺいは別の部隊を見つけた。形状と速度からして、艦爆だろうか。
ぺいたちが襲い掛かる。互いの射撃ののち、弾が掠めあう。
永野「被弾!出力低下!」
僚機の永野曹長が叫ぶ。
ぺい「永野殿だけ戻りなされ!あとは任せよ!」
永野「了解!」
ぺい「・・・飛燕はガラスのエンジンですからなぁ。」
ぺいはそう零しつつ、その確かな腕で2機を墜としていた。
中野も、敵側面から襲い掛かる。狙いを定め、偏差を取る。
1機、もう1機と燃えていき、3機を狙おうとしたが、目前に赤き曳光弾。
中野「・・・っ、死ぬところでした・・・」
間一髪で敵弾を避けた中野は、至急銃座の射角から離脱した。
こうして敵の第一波を撃退した第一部隊だが、倍以上・・・
いや、約3倍の数と戦い、かなりの弾薬と燃料を消費していた。
グリム「弾薬はともかく、燃料が戦えて10分15分・・・」
ぺい「・・・嫌なことは起こるものですな。グリム殿、新手でござる。」
グリム「えっ・・・分かった。数は?」
ぺい「さっきの半分ぐらいですな・・・ただ、まともに戦えば帰れませんぞ。」
すると、上空から4機の戦闘機が現れ、敵編隊に向け弧を描いて突入した。
その特徴的な機影には、見覚えがあった。
おちょ「あれは・・・鐘馗か!」
中野「第二部隊!来てくれたんですね!」
現れたのは、第二部隊のエリンギ隊だった。
圧倒的なその速度は、敵編隊の回避よりも先に機銃弾を投射した。
エリンギ「流石にこの速度は怖いな・・・」
そんなことを言いながらも、先頭にずれていた3機に狙いを定める。
斜めに並んでいた敵機は、次々と解体されていった。
少し遅れて、FVが口を開く。・・・正しくは、すでに口を開いていた。
FV「あー、あー、グリムさん聞こえます?」
グリム「FVさん!助かりましたっ!」
FV「ずっと話しかけてたんすが、その・・・送信ボタン押し忘れてましたわ。」
グリム「ちょっと!?(笑)」
FV「急いでたんでね・・・とにかく、あとはうちらに任せてくだせぇ。」
グリム「了解!お願いします!」
第二部隊も、第一部隊と同じぐらいに奮闘した。
FVの統率により、敵機を分断。出来た隙を、さと隊・こんかわ隊がすかさず墜とす。
敵の攻撃隊は、エリンギ達が蹴散らし・・・敵の第二次攻撃隊も、撃退に成功した。
―だが、司令の元には驚愕の知らせが届いていた。
司令「龍驤と祥鳳が沈んだだと!?」
通信員「はっ、我が艦隊はサラトガ、ホーネットを確実撃沈するも、」
「第二次攻撃により爆撃を受け、祥鳳が沈没!」
「龍驤は、大破炎上し漂流中とのことです!ですが、おそらく・・・」
岩井「第一部隊、第二部隊が交戦したと聞いたが。」
通信員「敵は三方に編隊を分けていたようで、うち二方は壊滅させました。」
「ですが、抜けられた編隊により、被害を受けたとのことです!」
空母決戦は、痛み分けに終わった。戦闘には勝ったが、虚しさが残った。




