第二十六話 「 増援来襲 」 昭和十七年 十二月
本日も、また出撃。地上では、山岳部の制圧を残すのみとなっていた。
本日の担当は、第二部隊。彼らならば、虚無の時間もお手の物だ。
・・・だが、岩井はなんだか呼ばれているような気がした。
岩井「・・・私も行こう。」
こんかわ「やった!大尉殿と一緒に飛べるんですね!!」
さと「大尉が来てくれるってなら、だいぶ楽になりそうですね。」
エリンギ「大尉の話とか、何気に気になりますね・・・あとで是非!」
皆が明るい反応を返す中、一人だけは表情が固まっていた。
FV「いいっすけど・・・どしたんすか?急に。」
岩井「風の知らせってやつだ。勘違いならいいんだがな。」
FV「・・・貧乏くじってやつか。しゃあねぇ、気ぃ張っときますわ。」
熟練の勘は、意外と当てになる。FVはそれを、自身の経験から理解していた。
二人以外は和やかな空気のまま、空へと飛び立つ。空は、まだ青い。
・・・エンジン不調で、2機が途中で帰投したが。
FV「・・・鏑木さん、東重点で頼みますわ。」
鏑木「了解です。」
現地に到着後、暫く。岩井に、一本の無線が聞こえた。
鏑木「・・・東の方向、敵編隊見ゆ。」
散開していた編隊を直ちに寄せ集め、報告のあった方向へと急いだ。
岩井「4発機が12、双発機12か。全機、戦闘用意。」
FV「エリンギ隊・さと隊はB-17、あとは本隊で叩くぞ!」
一同「「了解!」」
エリンギ隊、さと隊が、B-17の上方から襲い掛かる。
エリンギ「・・・新武装にちょうどいい機体ですね。改造してよかったです。」
さと「勝手に改造したんですし、頼みますよ?」
エリンギの乗る鐘馗だけは、改造機。翼内の12.7粍を、20粍に換装してある。
本人曰く事故らしいが、司令にはまだ未報告なのだ・・・
エリンギ「この改造で、弾薬が抑えられればいいけど。」
さと「12.7粍じゃ、堅そうですからねぇ・・・」
まずは一撃。エリンギとさとが、20粍の火力で、2機の固い主翼をへし折る。
一度距離を取ったのち、反転。弾幕のこない位置を探りつつ、再度攻撃を行う。
エンジンを燃やし、B-17が3機、黒煙を出してゆっくりと高度を下げる。
そんな連続攻撃の中、編隊から2機、外れた者がいた。
エリンギ「ちっ!小林伍長、緊急出力開放!」
さと「不味い、宮崎!回避取れ!」
多数の防護銃座が、牙をむいた。雨あられと曳光弾が、空を覆いつくす。
鐘馗は被弾するも、まだ何とか戦える。迎撃機である以上、銃座も考慮済みだ。
だが・・・零戦はそうはいかない。多数の被弾に耐えかね、火を噴いた。
さと「脱出して!急いで!」
搭乗員は辛うじて脱出、落下傘で地上に向け降りて行った・・・が。
衝撃的なことが起きた。
1機のP-38が、落下傘に機首を向けた。だが、岩井はそれを見逃さない。
出来る限りの速度を出し、急降下。P-38の主翼を叩き折り、戻っていった。
さと「へ?今のは・・・」
岩井「・・・奴らはこういう奴らだ。覚えておきな。」
FV「・・・戦場なんて、どこも変わらんすね。」
岩井「ここでは人の命が軽すぎる。・・・慣れてしまったがな。」
その頃FVたちは、護衛のP-38と交戦していた。
敵は扱いになれていないのか、時折旋回してくる。
こんかわ「零戦に曲がってくるとか、何考えてるんですかね?」
FV「まともな教育も、データも無いんだろ。」
「だが油断するなよ。こいつらは重戦だ。速度が乗りゃ、より面倒になる。」
慣れた手つきで敵を墜としながら、ふと、FVが奇妙なことを言った。
FV「そろそろかぁ?大尉、仕上がりましたぜ。」
岩井「了解、助かるよ。」
「さて、行くか。」
岩井はそう言うと操縦桿を引き、弾丸のごとく敵編隊へ突っ込んだ。
まずは、離脱中のB-17を一撃。20粍が、B-17の主翼を激しく叩く。
要塞の羽根が折れるとき、下から迎撃しようとしたP-38は、火だるまになった。
素早い判断から、指揮官機だったのだろう。僚機と思われるP-38が、岩井を追う。
こんかわ「大尉殿!多数来てます!」
岩井「これが狙いだ。気にするな。」
岩井は素早く左に捻り、逆に後ろを取る。その時にはもう、照準のど真ん中だった。
引き金を引き、双胴の機体は2つに裂けた。当然制御出来ず、海面に墜ちていく。
そこにもう1機、零戦が突っ込んできた。
こんかわ「大尉殿!ご無事でしたか!?」
岩井「・・・心配し過ぎだ。だが、ありがとう。」
こんかわの後ろには、片翼がもぎ取られたP-38が1機、回転しながら墜ちていた。
そしてまんまと低空に釣られたP-38達の末路は、悲惨なものであった。
岩井「目の前しか見ないから、こうなるんだよ。」
「FV少尉、あとはよろしく。」
FV「了解!さぁて、どう調理してやろうか・・・」
ある機は燃え、ある機は主翼がもげ、ある機は裂けた。
双発である以上どうしても重くなるP-38は、軽快な日本軍機の的でしかなかった。
そして・・・帰りゆくP-38の姿を見た者は、誰もいない。
残る5機のB-17も、いつの間にか黒煙を噴きつつ帰投していた。




