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推しの悪役令嬢を救いたいだけなのに、いつの間にか神様になってました  作者: 櫻 美澪
第1章 メイド編

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出会い

目が覚めると、そこは路地裏だった。


薄暗い空間。湿った石畳。鼻を突くような嫌な臭い。


「……ここ、どこ……?」


頭の中が疑問符でいっぱいになる。


けれど、それを考えるより先に、身体が悲鳴を上げた。


――お腹が空いた。

――喉が渇いた。


それは、今まで経験したことのないほどの飢えだった。


身体を起こそうと腕に力を込める。けれど、思うように動かない。


どうにか自分の身体を見下ろして、私は息を呑んだ。


「……え?」


身体が、小さい。

まるで小学生くらいの子どものようだった。


身につけているのは、服と呼ぶのもためらうほどのボロ布。手足は細く、肌は泥や埃で汚れている。


そして何より――身体に力が入らない。

お腹が空いている。

喉が渇いている。

ただそれだけなのに、立ち上がることすらできない。


「……夢、だ」


そう呟いてみる。


きっと夢だ。

こんなこと、現実に起こるはずがない。

そう思いたかった。


けれど、冷たい石畳の感触も、乾ききった喉の痛みも、空っぽの胃が締めつけられるような感覚も、あまりにも生々しかった。


怖い。


さっきまで何をしていたのかも、どうしてここにいるのかもわからない。


それなのに、頭の中に浮かぶのは一つだけだった。

――死にたくない。


どれだけ起き上がろうとしても、身体は言うことを聞いてくれない。


指先に力を込める。

腕を動かす。

足を踏ん張る。

それでも、身体はぴくりとも動かなかった。


「いや……」


声が震える。


「こわい……」


涙が滲んだ。


「誰か……」


助けて。

そう言いたかった。

けれど、もう声を出す力すら残っていない。


視界がぼんやりと霞んでいく。

意識が遠ざかる。


――このまま死ぬのかな。


そう思った、その時だった。


ふと、誰かの気配を感じた。

重たい瞼を、どうにか持ち上げる。

そして――目が合った。


薄桃色の、さらさらとした髪。

宝石のように輝く、エメラルドグリーンの瞳。

白く、折れてしまいそうなほど細い腕。

そして、賢さとあどけなさを同時に感じさせる、愛らしい顔。


その少女を、私は知っていた。

何度も何度も、ゲームの画面で見てきた。

けれど、目の前にいる少女は、私が知っている彼女よりずっと幼い。


それでも、見間違えるはずがなかった。


「……リリアン?」


掠れた声が、口からこぼれる。

美しい少女は驚いたように目を見開いた。


そして、その日。


私の世界は、一変した。

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