出会い
目が覚めると、そこは路地裏だった。
薄暗い空間。湿った石畳。鼻を突くような嫌な臭い。
「……ここ、どこ……?」
頭の中が疑問符でいっぱいになる。
けれど、それを考えるより先に、身体が悲鳴を上げた。
――お腹が空いた。
――喉が渇いた。
それは、今まで経験したことのないほどの飢えだった。
身体を起こそうと腕に力を込める。けれど、思うように動かない。
どうにか自分の身体を見下ろして、私は息を呑んだ。
「……え?」
身体が、小さい。
まるで小学生くらいの子どものようだった。
身につけているのは、服と呼ぶのもためらうほどのボロ布。手足は細く、肌は泥や埃で汚れている。
そして何より――身体に力が入らない。
お腹が空いている。
喉が渇いている。
ただそれだけなのに、立ち上がることすらできない。
「……夢、だ」
そう呟いてみる。
きっと夢だ。
こんなこと、現実に起こるはずがない。
そう思いたかった。
けれど、冷たい石畳の感触も、乾ききった喉の痛みも、空っぽの胃が締めつけられるような感覚も、あまりにも生々しかった。
怖い。
さっきまで何をしていたのかも、どうしてここにいるのかもわからない。
それなのに、頭の中に浮かぶのは一つだけだった。
――死にたくない。
どれだけ起き上がろうとしても、身体は言うことを聞いてくれない。
指先に力を込める。
腕を動かす。
足を踏ん張る。
それでも、身体はぴくりとも動かなかった。
「いや……」
声が震える。
「こわい……」
涙が滲んだ。
「誰か……」
助けて。
そう言いたかった。
けれど、もう声を出す力すら残っていない。
視界がぼんやりと霞んでいく。
意識が遠ざかる。
――このまま死ぬのかな。
そう思った、その時だった。
ふと、誰かの気配を感じた。
重たい瞼を、どうにか持ち上げる。
そして――目が合った。
薄桃色の、さらさらとした髪。
宝石のように輝く、エメラルドグリーンの瞳。
白く、折れてしまいそうなほど細い腕。
そして、賢さとあどけなさを同時に感じさせる、愛らしい顔。
その少女を、私は知っていた。
何度も何度も、ゲームの画面で見てきた。
けれど、目の前にいる少女は、私が知っている彼女よりずっと幼い。
それでも、見間違えるはずがなかった。
「……リリアン?」
掠れた声が、口からこぼれる。
美しい少女は驚いたように目を見開いた。
そして、その日。
私の世界は、一変した。




