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NEW・アルカディア!  作者: 祝 冴八
[DAY5]確執への抱擁
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33/64

5-B 特訓! 今日の汗は明日のビルド!

5秒でわかる前回のあらすじ

「ンママァ〜〜〜……♪ just killed a men……」


 ここは「訓練場」と称されたトレーニング場。

 天使軍の軍基地に備えられている、天使軍のための施設。その二階の、ランニングコースを私達はぐるぐると回り続けていた。


「——最近ずっと、敵がウヨウヨしているのは勘付いてますよね、アルカさん?」

「た、確かに……ハイジンやハイジュウには、よく会うかな……」

「そうですね。外界がそのように変わってしまった今、私達もそれに対抗できるよう、己の体を改造していかなければなりません」


 そう言いながら、マニさんは私の横をぴったり寄り沿って走っていた。体感30分間ほど続けて走っているが、一切息を切らしていない。こんなの人間業ではない……あ、そっか天使だったわ。


「改造って? 筋トレのこと?」

「筋トレは基礎です。戦闘をするための、軸です」

「筋トレじゃないの?」

「……まあ、人によりますが、アルカさんの場合は、ええと……」


 マニさんは足に着けていたエフェークオスを取り外し、恐らく時間を確認したのであろう、「よし」と呟くと、私に走るのをやめるように指示した。


「……そうそう、アルカさんはかなりスピードがあります。ですが安定性がありません。人から少し引っ張られただけでバランスを失うでしょう」

「なるほど?」


 私は軽く頷いた。


「アルカさん。戦闘には何が必要だと思いますか?」

「え……うーん、きんにく……?」


 私はクールダウンとして歩きながら、腕組みして考えた。すると、相手は怪訝そうな顔でこちらを覗いた。


「……本当にそう思ってます?」

「えっ……いや……エルのこと考えたら……そうかなって……」


 そう言いながら、私は一階を見下ろした。そこにはエルがいる。さっきまで体に重りをつけて腕立て伏せをしていたのだが、今は足の上にタイヤのような重りを乗せて、腕の力だけで体を支えるなどという、私の理解が追いつかないトレーニングをしていた。


「……あの人は人外ですから……」

「えっと……でも天使の時点でマニさんも人外だよね?」

「……エルさんはそれ以上に、なんですよ」


 しばらく歩いていた私達は、次に階段を降り、エルのいる部屋へ入っていくことになった。


「アルカさんは、戦っている時何を考えていますか?」

「うーんと……相手の動きを読んで……それより速く動く……かな」

「そうですね。大まかに言えば、戦闘に必要なのは強さと速さ、そして観察力や判断力です」


 彼女は口を動かし続ける。


「本当に軍人レベルになろうと思ったら、忍耐力なども求められますが、アルカさんにはそこまで植え付ける必要はないでしょう」

「なんで?」

「軍人ではないからです。泥沼に漬かったり雪山で遭難する訓練、やりたいですか?」

「や……やめときます……」


 ——ガシャンッ!


 部屋の奥で大きな音がした。横目で確認すると、エルがバーベルを下ろした音だった。

 ……うわあ、なんかすごい量の重りついてるよ…………


「アルカさんはあそこまでやる必要はないです」

「うん……」


 私は力無く頷いた。もし彼と真っ向勝負したら、私はどこまで対抗できるのだろう……想像しただけで恐ろしい。


「さて、とりあえず……腹筋や背筋を鍛える時、アルカさんは何しますか?」

「え、うーん、プランクとか?」


 私はその場にしゃがみ、四つん這いになって両肘を着く仕草をしてみた。

 すると、マニさんの顔が一瞬歪んだ気がした。


「アルカさん、プランクははじめにやるべきではないです」

「え⁉︎ そうなの⁉︎」


 マニさんは首を一回縦に振ると、自分のお腹の辺りを人差し指で差した。


「まず、一言で腹筋、と言ってもいろんな腹筋があるんです。プランクはそのいろんな筋肉を一斉に使うので、ひとつひとつの筋肉に、十分な刺激がいかないんです」

「ええっと……つまり、重いものを大人数で持つ時、一人で持つより軽く感じる……みたいな時のカンジ?」

「そういうことです。その一人一人の力がもっと強かったら、どうですか?」


 腕を組んで、私はすこし考える。


「もっと軽くなる……?」

「その通り。なので、まずは一つずつ刺激して、最後に全部使うようにした方が効率がいい、と言うのが私の理論です」

「なるほど……!」


 私は自分の腹を覗いた。人並みには割れていると思っていたが、これらの筋肉はまだ100%の力を出していなかったのか。

 マニさんは「それを踏まえて」と、私と目線の合う高さまでしゃがんだ。


「腹筋の主な筋肉を教えます。まず一つが『腹直筋(ふくちょくきん)』。シックスパックができるところです」


 彼女は、自分で着ていたTシャツをめくってみせた。すると、想像以上にバッキバキに割れたお腹が現れた。


「腹直筋はヒトの身体に縦に付いています。主に起き上がったりするときによく使います」

「へぇ……」


 私は自分の腹をもう一度見た。マニさんに比べたらなんてだらしのない身体なのだろう、と考えると、俄然やる気がでてきた。


「二つ目が『腹斜筋(ふくしゃきん)』です。どこにあるかわかりますか?」

「えっと……『斜』だから、斜め……?」


 その通り、と彼女は指を鳴らす。


「腹斜筋は、表皮近くの外腹斜筋と、深部にある内腹斜筋がありますが……ううん、そこはまあいいでしょう」

「うーん……でも何となくわかるよ!」

「そうですか。自頭が良いようでよかったです」


 あれ、なんか褒められてしまった。エルはいつも大袈裟に褒めるなぁと思ってたけど、優しい人って案外みんなそうなのかもしれない。

 シンブ? とかはわからないけど、フクシャキンとやらがあると言うことだけは理解したつもりだ。


「最後に『腹横筋(ふくおうきん)』です。腹直筋や腹斜筋よりもっと奥の方にあります。いわゆるインナーマッスルというものですね」

「インナーマッスル知ってる!」

「そうですね。この筋肉は、胃や腸などの臓器を支えてるので、とっても重要なんですよ——と、いうわけで」


 彼女はようやくお腹を隠し、両手を叩くようにして合わせた。



「まずはこれらの腹筋を部分別に鍛えます! が! そのあとは腕・脚・背筋も同じように鍛えます!」

「お、おお!」

「そして更に複数の筋肉を組み合わせて使うトレーニングをします!」

「はい!」

「今週中にパルクールまで行くのが目標です!」

「……え? ぱ、ぱるく……? …………いや、とりあえず、はい!」


 マニさんの勢いに釣られ、私も勢いで返事してしまった。

 彼女の顔を見ると、いつも以上に艶を増しているように感じるような……




「——問答無用! さあ! ビシバシ行きますよ! アルカさん!」



 爛々と輝く彼女の左目の奥に、小さな火が灯っているのを見た気がした。


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