5-C 交戦! 汗と仲間と本気の目!
5秒でわかる前回のあらすじ
「筋肉部位いえるかな」
「どへぇぇぇぇっ! か、カラダがっ、カラダがぁぁぁっ!」
私はどさり、と全体重をソファーにかけた。
説明しよう! 私は現在進行形で筋肉痛だ!
「お疲れ様。ずいぶんシバかれてたね。大丈夫? アルカ」
そんな私の視野内に入ってきたのは、涼しい顔をしたエル。あたかも私のこの状態が当たり前だと言うように、爽やかな笑顔で私の水筒を差し出してきた。
「うん、なんとか……こんなにたくさんトレーニングしたのは初めてだよ……」
「はは、マニも珍しく熱が入ってたもんなぁ」
私は水筒を受け取ると、半分以上入っていた中身が空になるまで飲み干した。更に、口を開けながら、容器の奥に潜む一滴が落ちてくるまで待ってしまうという貧乏癖がつい出てしまった。
「ち、違いますよ! ただ、アルカさんには現在の状況において個人戦が最低限できるぐらいの実力を……!」
「はいはい、わかったわかった」
彼の隣に立っていたマニさんは、水筒……だと思われる、丸くて小さな容器を振り回してエルに攻撃するが、軽く流されてしまっていた。
すると一呼吸おいて、エルが戯けたように手を後ろで組み、口を開いた。
『信用できないんじゃなかったの?』
——流暢すぎるギャラクアス語の単語が混じっていて、聞き取れなかった。私は首を傾げたが、一方でマニさんは顔を真っ赤にして怒鳴りはじめた。
「そ、それとこれとは違うんですぅッ‼︎」
「ふふ、はいはい」
「もーーーーう! エルさん! 年上をバカにしたら恐ろしいんですからね⁉︎」
マニさんは伸ばした両肘で、体の側面をポスポス叩いていた。
ちなみにエルは、呑気に伸びをして、おまけにあくびまで出し始めた。なんちゅー神経とんじゃお主!
「……エルさん! こうなったら模擬戦しましょう! 模擬戦! 久々にエルさんをボコボコにしたくなりました!」
マニさんがエルの肩を持って揺さぶった——が、相手は一切軸をぶらさない。すごい体幹だ。
少しめんどくさそうにしながらも、エルは彼女と目を合わせて、ぼつりと返事をした。
「……いつ?」
「今日! ——いいや、今すぐです! 今すぐやりましょう、エルさん!」
*
「————ッダァ!」
金属音があがって、互いの足元に砂埃が舞う。
右往左往、まるで自在に変形する物体のように、エルの大剣と、マニさんの大鎌が交わっていく。
——ガキンッ! ズガガガッ! ジャキッ!
重たい衝突、擦れる衣服、焦りの表情。
ずっと目を凝らせていないと、あっという間にそれが視界から消えてしまう。
前のめりになりながら、私はため息をついた。
「すごい……」
私は、彼らとかなり離れた位置で、ベンチに座り、その戦場を眺めていた。
気迫と衝撃が、この離れた位置からも感じられる。というか、実際に地面が揺れているのだ。
——バチィンッ!
その時、エルの体が大きく揺れた。
「あっ……!」
私は思わず声が出てしまう。
マニさんの鎌が、彼の剣を弾いたのだ。その一瞬を突き、彼女は次の一振りで彼の喉を狙う。
——ザッ! ズパンッ!
しかし、エル相手にそう上手くいかない。
彼は顔面スレスレの位置で避けると、次の瞬間彼女の腹部へ蹴りを入れた。その光景に、私は驚愕した。
「うそだ……」
エルの脚は、避ける前に床から離れていた。
つまりエルは、まるで自分がよろけるのをわかっていたような動きをしたのだ。
——本当に隙がない。彼は戦闘中、一体なにをどこまで考えているのだろうか。
「————ッ!」
マニさんは後ろへ吹き飛ぶ……いや、わざとだろう、ずいぶんと大きくエルから離れた。
エルは間髪入れず彼女に迫りに行く。
そんな彼の前方に、一つの光——魔法陣が、立ち塞がった。
「この勝負、もらいました!」
「——『シネストメイト』、『ミゼス』‼︎」
マニさんが、大鎌でその魔法陣を斬り裂いた。それはガラスのように散り、共に何か、巨大なモノを生み出した。
——氷だ。先の尖った氷の塊が、放射状に空中から生えている。衝撃で風が巻き起こり、中で小さな氷の粒が無数に煌めいた。
これを受けた相手は、きっと致命傷を…………
「『シネストメイト』、『シプサード』」
私の瞬きを待たずに、砂埃がなぎ払われた。
三本。それは、人よりも大きい、三本の大剣だった。マニさんを目掛けて、飛んでいく。
このスピードなら、彼女は避けられるだろう。
と思った矢先、彼女の足元がふらり、と崩れたのが見えた。
——ドォォォォォォォォォッ‼︎
猛烈な破壊音が、部屋中に響き渡った。




