4-E 生還⁉︎ 本当にこれでよかったか?
五秒でわかる前回のあらすじ
「こんな展開も分かってたけど! 分かってたけど‼︎」
「——あっ! 帰ってきたのだ!」
制服の異様に長い袖を振り回しながら、伏見さんがピョンピョン跳ねていた。
「あー、ほんと大変だったわぁー!」
「……アルカ、もうあんな無理したらだめ」
私の両側ですぐると百合ちゃんが同時に喋った。お互いにそれを認識すると、睨み合いに発展してしまった。そんな彼らの手を引き、私は小走りであとの3人の元へ寄った。
「——ごめんなさい! 遅くなって!」
たはは、と笑うと、そんな私を不機嫌そうに見つめていた鬱穂くんが、ぽつりと口を開いた。
「……すぐる……ボールは……?」
「いやなんで俺に聞くんだよ……見つかったよ。アルカが木ぃ登って取ったんだ」
「…………ふーん……」
手渡されたボールをじんわり見始める彼に、私は首を縦に振って答える。
——まあ、厳密には「話を合わせるために」、だが。
→説明しよう!
前回の戦いの後、助けに来てくれたエルが、夜咲兄弟含め周辺の人間たちに「レーテー(記憶改変する魔法)」を使った! そのため、みんなの記憶が改変されているのである!
ちなみにお察しの通り、ハイジン事件は「ボールをアルカが木に登って取った」になっているらしい!
本当なのかわからないが、人間の彼らの話からしてそうなってると推測できたぞ!
と、言うことで、「そうなんだよねー」と適当に相槌を打っておいた。
「ええっ⁉︎ 本当ですわ白雨さん切り傷が……!」
「たくさんあるのだ!」
「た、大した傷じゃないよ! 唾つけときゃ治るし」
すごく心配してくれてる……少し罪悪感あるな……
私のその言葉を聞くや否や、関城さんの顔がみるみる嫌悪感を増していった。
「全く! だから私は言いましたのよ、外は危ないって! こんなに時間もかかってこんなに傷だらけ……というかなんで夜咲さんが登らなかったんですの⁉︎」
「……私は登れないから」
「俺が行ったらもう登ってたからなぁ……」
「ごめんなさい……二人とも夜咲さんでしたわね……」
…………キーンコーンカーンコーン
関城さんの言葉を遮るようにして、昼休みの終わる鐘が鳴り始めた。
そしてみんなが鎮まり返ったところに、私は関城さんに話しかける。
「関城さん、わがまま許してくれてありがとう! お礼と言っちゃなんだけど、放課後、二人も一緒に野球しようよ!」
「ちょ、ちょっと! それは強引過ぎますわ! そんな野蛮なことに誰も加わるなんて……」
そこまで言うと、関城さんは少し俯いた。
「それに、私は走れませんことよ……」
彼女は自身の足元を見た。そして、そこに無いはずである、ブランケットの下の『片足』を手で摩った。
「——走れなくてもできる」
それを言ったのは、私の後ろにいた、この中で一番小柄な女の子。
百合ちゃんだった。
その言葉に影響されたか、周りの私たちも自分の言葉を次々と並べられるようになる。
「そうだな。まあ百合もいつもは球拾いだが、楽しそうにしてるし」
「そうだよ! ちなみに、ルールは打てれば勝ちだからね‼︎」
すぐるの言葉に私もうなずく。伏見さんも、ぴょこぴょこ跳ねながら、関城さんの椅子の後ろに回った。
「関城サマが走りたかったらワタシがイスを押すのだ!」
「わ、わわわかりましたわ! やればよいのでしょうやれば!」
彼女は少し驚いた顔を見せたが、少しすれば、いつもの気の強い、輝くような美人の笑みに戻った。
「でも、残念でしたわね……私はコツを掴むのが得意ですのよ! 皆さんのこともボコボコにして差し上げますわ‼︎ オーッホッホッホ‼︎」
*
「あーっ! カーブボールはずるいぞアルカ!」
「アルカ、その調子」
「さっきのボールどうなったんですの⁉︎」
「初見なのに捕ったのだ! やっぱり関城サマはすごいのだ‼︎」
「ボールを相手の足元にシューッ!」
「…………ふっ……超☆エキサイティング…………」
そして私たちは、放課後、日が暮れるまで遊んだ。
時々百合ちゃんが見つけた蟻の行列をみんなで眺めたり、甲子園の真似で砂をかき集めたりと、まあ、ずいぶんとのんびり休憩しながら。
笑って、転けて、泥だらけになるまで。
幸せとは、その瞬間に出会うまでに、生きていてよかったと思うことだと私は考える。
今日のこの日を
私は幸せと認識した。




