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NEW・アルカディア!  作者: 祝 冴八
[DAY4]絆よ
30/64

4-E 生還⁉︎ 本当にこれでよかったか?

五秒でわかる前回のあらすじ

「こんな展開も分かってたけど! 分かってたけど‼︎」

「——あっ! 帰ってきたのだ!」


 制服の異様に長い袖を振り回しながら、伏見さんがピョンピョン跳ねていた。


「あー、ほんと大変だったわぁー!」

「……アルカ、もうあんな無理したらだめ」


 私の両側ですぐると百合ちゃんが同時に喋った。お互いにそれを認識すると、睨み合いに発展してしまった。そんな彼らの手を引き、私は小走りであとの3人の元へ寄った。


「——ごめんなさい! 遅くなって!」


 たはは、と笑うと、そんな私を不機嫌そうに見つめていた鬱穂くんが、ぽつりと口を開いた。


「……すぐる……ボールは……?」

「いやなんで俺に聞くんだよ……見つかったよ。アルカが木ぃ登って取ったんだ」

「…………ふーん……」


 手渡されたボールをじんわり見始める彼に、私は首を縦に振って答える。


 ——まあ、厳密には「話を合わせるために」、だが。


 →説明しよう!


 前回の戦いの後、助けに来てくれたエルが、夜咲兄弟含め周辺の人間たちに「レーテー(記憶改変する魔法)」を使った! そのため、みんなの記憶が改変されているのである!

 ちなみにお察しの通り、ハイジン事件は「ボールをアルカが木に登って取った」になっているらしい!

 本当なのかわからないが、人間の彼らの話からしてそうなってると推測できたぞ!


 と、言うことで、「そうなんだよねー」と適当に相槌を打っておいた。


「ええっ⁉︎ 本当ですわ白雨さん切り傷が……!」

「たくさんあるのだ!」

「た、大した傷じゃないよ! 唾つけときゃ治るし」


 すごく心配してくれてる……少し罪悪感あるな……

 私のその言葉を聞くや否や、関城さんの顔がみるみる嫌悪感を増していった。


「全く! だから(わたくし)は言いましたのよ、外は危ないって! こんなに時間もかかってこんなに傷だらけ……というかなんで夜咲(やざき)さんが登らなかったんですの⁉︎」

「……私は登れないから」

「俺が行ったらもう登ってたからなぁ……」

「ごめんなさい……二人とも夜咲さんでしたわね……」



 …………キーンコーンカーンコーン



 関城さんの言葉を遮るようにして、昼休みの終わる鐘が鳴り始めた。


 そしてみんなが鎮まり返ったところに、私は関城さんに話しかける。


「関城さん、わがまま許してくれてありがとう! お礼と言っちゃなんだけど、放課後、二人も一緒に野球しようよ!」

「ちょ、ちょっと! それは強引過ぎますわ! そんな野蛮なことに誰も加わるなんて……」


 そこまで言うと、関城さんは少し俯いた。


「それに、私は走れませんことよ……」


 彼女は自身の足元を見た。そして、そこに無いはずである、ブランケットの下の『片足』を手で摩った。


「——走れなくてもできる」


 それを言ったのは、私の後ろにいた、この中で一番小柄な女の子。

 百合ちゃんだった。


 その言葉に影響されたか、周りの私たちも自分の言葉を次々と並べられるようになる。


「そうだな。まあ百合もいつもは球拾いだが、楽しそうにしてるし」

「そうだよ! ちなみに、ルールは打てれば勝ちだからね‼︎」


 すぐるの言葉に私もうなずく。伏見さんも、ぴょこぴょこ跳ねながら、関城さんの椅子の後ろに回った。


「関城サマが走りたかったらワタシがイスを押すのだ!」

「わ、わわわかりましたわ! やればよいのでしょうやれば!」


 彼女は少し驚いた顔を見せたが、少しすれば、いつもの気の強い、輝くような美人の笑みに戻った。


「でも、残念でしたわね……私はコツを掴むのが得意ですのよ! 皆さんのこともボコボコにして差し上げますわ‼︎ オーッホッホッホ‼︎」



「あーっ! カーブボールはずるいぞアルカ!」

「アルカ、その調子」

「さっきのボールどうなったんですの⁉︎」

「初見なのに捕ったのだ! やっぱり関城サマはすごいのだ‼︎」

「ボールを相手の足元にシューッ!」

「…………ふっ……超☆エキサイティング…………」


 そして私たちは、放課後、日が暮れるまで遊んだ。

 時々百合ちゃんが見つけた蟻の行列をみんなで眺めたり、甲子園の真似で砂をかき集めたりと、まあ、ずいぶんとのんびり休憩しながら。


 笑って、転けて、泥だらけになるまで。


 幸せとは、その瞬間に出会うまでに、生きていてよかったと思うことだと私は考える。


 今日のこの日を


 私は幸せと認識した。


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