4-F 鎮静! 映えある今日にサヨウナラ!
五秒でわかる前回のあらすじ
「超⭐︎エキサイティング‼︎‼︎」
「今回……アルカさんに集りましたよね、ハイジン」
「…………そうだね」
「何か、胸騒ぎがします」
「奇遇だね。僕もだよ」
*
「エル、お風呂上がったよ!」
ナウ、日本家屋の我が家。
私がガチャリとドアを開けると、黙々と座卓に向かっているエルがいた。
「……また本読んでるの?」
「うん、そうだよ」
「あれ、マニさんは?」
「マニは軍基地へ帰ったよ」
「なーんだそうなの」
そうだよ、と相槌を打ちながら、一ページだけをパラリと捲る。
「ねえ、今なんの本読んでるの?」
表紙を見ればギャラクアス語。でもまだ私には文法がわからない。
「評論文だよ」
「ふーん、面白い?」
「面白い……かもしれないね。別に好きではないけれど」
好きじゃないのに読むんだ……何故だ……私は本は好きな物を読むべきだと思う。あれかな、買ったけどいざ開いてみたら面白くなかったってやつかな。
「色んな人の意見を知ってた方が、後々楽になるからね」
おい作者! 今の地の文描き直して‼︎ 恥ずかしいこと言ったから!
「そ、そうなんだ、すごいね……」
「なにもすごくなんてないよ。実際、ただ読んでるだけだし」
彼はまた本をパラリと捲った。
体感だが、彼の読書速度はかなり速いとわかる。
「ねえ、私も一緒に読んでもいい? 読めないけど」
すると彼は少し不思議そうな顔をした。しかしすぐに、いつもの優しい笑顔へと移ろい、本をうつ伏せにして卓上に置く。
……それ本が傷つくよとか言わない。言わないぞ私は。
「いいよ。じゃあ、わからないところがあったら教えるね」
気がつくと、私の身体が持ち上げられていた。
ひょいっと移動させられ、彼の股の間にちょこんと座らされた。
「はい、これで読みやすいと思うよ」
彼は私の身体の横から腕を伸ばして本の端を持って広げた。
まあつまり、構図として、私の前にある物から、「本→私→エル」の順番になっているということだ。
確かにエルは私よりだいぶ身長が高いので、彼の視界からさほど障害にはなっていないようだ。
「……ここ、読めない」
「ここかぁ……うん、単語自体が『始まり』だけど、この文法だと『開闢』の意味だと思うよ」
「かいび……? え? なに——?」
そんな風にしながら、彼は私のペースに合わせてゆっくりページをめくってくれる。綴られた文字はほとんどわからない。だが、時々知っている単語を見つけ、それらを繋げて文を想像しているだけでとても楽しかった。
ただ、今の体勢、密着しているので当然なのだが、とてもちょうどいい感じに暖かい。風呂上がりであるにもかかわらず、その上人肌に触れているというダブルパンチである。つまり、めちゃくちゃ眠くなってきた。
——エルだったら、私がこのまま寝ちゃっても許してくれそうだな。
寝ぼけていたか、不覚にもそんな思考が頭をよぎった。
——だめだよ。寝るならもっとスッと寝ないと。
——大丈夫だよ。寝ちゃえ寝ちゃえ。
私の頭の中の天使と悪魔……! どっちも意見一緒やんけ‼︎
などと思ったがしかし、争う前に目蓋が無意識に閉じてしまった。
静かに紙の擦れる音と、窓の向こうの虫の声が子守唄になり、私の眠気をより誘いに来る。
——彼が父親の寝巻きを着ていたからか、
私の口がポツリと溢してしまった。
「————お父さんの、匂いがする…………」
久しぶりな、そんな暖かさに包まれながら。
私はゆっくりと夢の中へ落ちていくことになった。
「アルカ、君は…………いつも僕の想像を超えるね」
「……君が光じゃなかったとしても……もしかしたら僕は、君を手離すことはないかもしれない」
少年は、少女の髪を静かに撫でた。
4章はこのお話で終了となります。毎日投稿にお付き合いいただき、誠に有難うございました。皆様ごゆっくりお休みくださいませ。




