4-A プロローグ
「————」
「——へんなの」
彼は無邪気にそう言った。でも、他の人とは明らかに違うのは、この私をどうにか、受け入れてくれようとしている所だ。
「じゃあ、おまえは泣いたことないんだ。すげーじゃん」
その言葉に、少し口籠った。
「あーちゃん、泣ないたことないし、泣き方もわかんない……って、本当に信じてくれるのか?」
彼は頷いた。と同時に、彼の目が右往左往していた、あの滑稽な仕草を今でも鮮明に覚えている。
「し、信じないわけないだろ! で、でも」
「泣けないのは、つかれるとおもう」
わからなかった。彼の言葉の意味が。
自分がみんなと違うこと。おかしなことは、自分でわかっていた。でもだれかに相談しても、トイレみたいに下水に流されていた。だから、彼の声が、慈悲の意味だと気がつかなかった。
そんな私は、もちろん首をかしげた。
するとどうだろう。彼はなぜかうんうんと悩み始めた。
そして、急に立ち上がったと思うと、周りにいた人もびっくりしたぐらい、とても大きな声で叫び始めた。
「——わ、わかった! おれは信じるし、だれにも言わないぞ! で、でも、こーかんじょーけんだ!」
すると、彼は石の土管によじ登った。あぶないよ、と注告する前に、彼はその上に仁王立ちで立ち上がった。
「アルカ! 今からおれたちは『親友』になるぞ! 親友ってのはな、いつだってイチレンタクショーなんだ! どっちがウソついても、うら切っても、だめなんだからな! 」
ここまでぽかんとしていた自分は、この時だけ、こくんと首を縦に振った。
「だからこーかんじょーけんだ。おれは、おまえのヒミツは絶対に守る。だから、おまえは——」
「本当に泣かないように、せいぜい俺にたよること!」
すぐるは、顔を真っ赤にして、にっと笑った。




