旋律に導かれて
午前6時 いつものように目覚ましのアラームの音で目が覚めた••••
と思って時計を見るとまだ午前5時30分
なぜか体が重たい。昨日の疲れが残っているんだなとおもって寝返りを打つと
『ニャァァァァァァァ』
とびっくりするような声が部屋に響く。何事かと完全に目が覚めてしまった。
そのにいたのは昨日何時の間にか家に居座っていた猫のトラだった。
『朝からうるせーよ もっと静かにできねーのか』
トラは怠そうにゆっくり起き上がると
『てめぇのせいだろこのくそやろうが!』
と爪をたてて飛びついてきた
しかしここは俺の陣地 布団だ
勢い良く布団をあげトラを素早く布団に丸め込んだ。
中からは悔しそうな鳴き声が聞こえてくる。
さすがに可哀想だと思って布団から出すとその瞬間 頬に爪がかすった。
近くににあった鏡で見て見ると頬に薄く切り傷ができていた。
ただでさえ 昨日身体中に傷ができているというのにこれ以上傷を増やすわけもいかないので今日のとこは引いておくことにした。
『ったく 俺を布団で包むなんてふざけたマネしやがって次やったらただじゃすまねーぞ』
と生意気に言う。
俺はそんなことはさておき早く起きてしまったから何をしようかと悩んでいた。
冷蔵庫は空っぽ。保存食などもないからどうすることできない。
『仕方ないから今日はコンビニで済ませるか。』
と早々に身支度をはじめる
トラといえばまだ寝足りないのか大きなアクビをしている。
そういえばトラは何を食べるのだろうか。
猫缶ならそこらへんのスーパーで売っているが人間と一緒の飯となると食費が心配される。
『お前ってなに食うんだ?』
何気なく尋ねると
『そりゃ決まってるだろ魚だ魚 それも特別うまい刺身のやつな』
この贅沢者が。 俺でさえ最近刺身を食べていないのにふざけた猫だ。
『仕方ない もう出かけるからお前もこい』
と荷物を持ってトラに向かって言ったつもりだったのだがなぜかトラはもう扉の前にいる。
どれだけ腹が減っているんだ。
そう思いながら 俺とトラは近くの料理店で飯を食べた。
コンビニでもよかったのだが何故か新鮮な魚が食べたくなったのだ。
最近の料理店はペットも一緒に食べれるような所が増えており案外そういう心配はなくなっている。
飯を食べ終わると午前6時30分だった。
飯も食べ学校の用意も出来ている。
特にやることがないので学校に向かった。
学校までは5kmほどだがゆっくりこいで30分掛かった。
着いたと同時に学校正面にある大きな時計が午前7時を告げる鐘がなる。
駐輪場に自転車を置き学校に入ると。
どこからかピアノの音が聞こえてきた。
俺はピアノの音のなる方にいくとそこは音楽室だった。
中にはいるとそこには 半透明のピアノを弾く一人の少年がいた。
少年は俺に気づいたらしくピアノを弾くのをやめた。
『あ。ごめん邪魔したな。すまない。』
と俺は素直に謝る。
少年は立ち上がり近寄ってくる。
『いえいえ こちらこそすみません。耳障りな音を出してしまい申し訳ありません。』
と丁寧な言葉遣いで返してくる。
どこかのアホ猫にも学んで欲しいものである。
近寄ってきた少年を見ると少し小さい160cmくらいだろうか。
小柄で言葉遣いがよく顔もいい。
女子からはモテモテだろう。
『しかしなんでピアノなんか弾いてたんだ?』
と俺は尋ねてみる。
『趣味なんですよ。僕才能ないからこの間の審査でEだったんですよ。だから趣味でしてたピアノを弾いてたんです。』
と少年はどこか悲しそうに言ってくる。
この少年も未来を期待されていないのだろうか。いらない存在だと。
この少年を見ると俺と同じようで悲しくなってしまう。
『そんなことないさ。たとえランクが低くても俺よりかは増しだろうし。』
これくらいしか言える言葉が見つからなかった。
『貴方よりかはって貴方はどうなんですか?』
と予想通りの答えが帰ってくる。
この少年なら俺のことを言ってもいいと思った。
『俺か? 俺はな•••無能力だ』
というと少年は唖然とした。
それもそうだ。今知り合った人が無能力だなんて普通では考えられないのだから。
『無能力ですか•••。大変ですねそれは。』
と俺のことを貶すことなく言う。
俺はすこし反応に困ったが、この少年はいいやつだと確信した。
『だからさ、別に落ち込むことないよ。』
と俺は笑いながら言う。
少年もすこし笑いながら
『そうですね。悩んでいたのが嘘みたいです。貴方とは仲良く慣れそうです。』
と少年は手を伸ばす。
俺も少年の手を取り握手を交わした。
俺のことの知ってしかもそれを受け入れてくれる。俺にとっては最高の人だった。
『それで。良ければさっき弾いてたのもう一回きかしてくれないか?』
と言うと。
少年は嬉しそうに『はい』とだけ言って椅子にすわった。
少年がピアノを出し 素早い指取りでピアノを弾いていく。
その曲調は優しそうで温かい、そしてどこか懐かしさを感じる。
ゆったりとしたフレーズから音をあげ楽しそうなフレーズに変わる。
まるで昔を思い浮かべるような感じだった。
曲が終わる。
俺は無意識の内に感動を覚えていた。
最高だった。今までに聞いたことがない。
こんな曲があったのかと目を疑うほどであった。
『どうですか?』
と少年は不安そうに言ってくる。
『最高だ。』
と俺は一言でいった。
その言葉に少年は安心したようで、ピアノをしまい荷物を手にとる。
時計をみると午前7時45分
生徒がそろそろ学校にくる時間だった。
『今日はありがとうございました。またよろしくお願いします。』
というと少年は笑顔で音楽室をあとにした。
俺も荷物を持ち自分のクラスに向かった。




