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NOESISーノエシスー  作者: 月乃瀬
NOESIS覚醒編
8/19

第八話  剣の王


人には。


生まれながらにして持つ才能がある。



努力では届かない領域。


訓練では辿り着けない場所。



それを人は天才と呼ぶ。



だが。



天才にも種類がある。



知の天才。


技の天才。


肉体の天才。



そして。


それら全てを観測する者。



神崎蓮は静かに空を見上げた。





放課後。


月乃瀬高校。



体育館裏。



数人の男子生徒が騒いでいた。



「見ろよ」



「鬼塚先輩だ」



視線の先。



竹刀を肩に担ぐ一人の男子。



鬼塚刀真。



高校三年。



全国高校剣道選手権。


3連覇。



剣道一家の跡取り。



学生剣道界の絶対王者。



歩くだけで周囲が道を開ける。



そんな存在だった。



剛が顔をしかめる。



「あいつか」



珍しく真面目な顔だった。



「知ってるの?」



澄華が聞く。



「有名人だ」



剛が答える。



「あいつの竹刀はヤバい」



「本気で死ぬかと思った」



蓮は興味深そうに見る。



「そんなに強いのか」



剛は笑った。



「白河より怖ぇよ」





鬼塚の周囲には数人の部員がいた。



全員が剣道経験者。



身体も大きい。



そして。



敵意を隠していなかった。



「お前が神崎蓮か」



鬼塚が言う。



低い声だった。



「白河を壊したらしいな」



蓮は首を傾げる。



「壊してない」



「勝負しただけだ」



その瞬間。



周囲の空気が変わる。



部員達が前へ出た。



「調子に乗るなよ」



「名人を泣かせた天才くん」



「まずは俺たちが相手してやる」



蓮が一歩前へ出る。



だが。



肩を掴まれた。



振り返る。



天城煌だった。



銀色の髪が風に揺れる。



無表情。



ただ静かだった。



「神崎」



煌が言う。



「君は本命だけ見ていればいい」



部員達を見る。



五人。



六人。



七人。



そして。



ほんの少しだけ笑った。



「お手並み拝見といこうか」





次の瞬間。



終わった。



誰も動きを見ていない。



一人目。



地面。



二人目。



地面。



三人目。



地面。



四人目。



地面。



五人目。



地面。



竹刀が宙を舞う。



悲鳴。



衝撃音。



沈黙。



そして。



立っているのは。



天城煌だけだった。



素手。



無傷。



呼吸一つ乱れていない。



剛が口を開ける。



「……は?」



澄華も固まっていた。



(なに今の……)



(見えなかった)



煌は振り返る。



「終わったよ」



まるで。



掃除でも終えたみたいに。





鬼塚刀真だけが笑っていた。



「面白い」



竹刀を握る。



「なら」



ゆっくり構える。



「俺が相手だ」



蓮も前へ出る。



右目が微かに青く光る。



NOESIS起動。



対象解析。



鬼塚刀真。



全国三連覇。



剣道特化。



踏み込み速度。



重心移動。



筋繊維収縮率。



反応速度。



解析開始。



鬼塚の瞳が細くなる。



「なるほど」



初めてだった。



見られている。



そんな感覚。



剣道家としてではない。



もっと深い場所。



存在そのものを。



解析されている。





遠くで。



天城煌だけが笑った。



「なるほど」



誰にも聞こえない声。



「神崎は強いんじゃない」



夕陽が差し込む。



「おかしいんだ」





鬼塚刀真。



学生剣道界最強。



神崎蓮。



知の極致。



そして。



天城煌。



肉体の極致。



三人の運命が。



今。



交差する。





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