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NOESISーノエシスー  作者: 月乃瀬
神崎マリア編ー出雲霊戦記ー
17/19

第四話 出雲霊戦記


四年後――



夜の出雲。


無数の光が大地を埋め尽くしていた。


かつて神話の王国と呼ばれたその地は、今や霊力工学によって発展した巨大都市へと姿を変えている。


空には監視ドローン。


地上には霊子通信網。


高層ビル群の窓には青白い光が灯っていた。


その中でも一際高い観測塔の屋上。


一人の少女が夜風に髪を揺らしていた。


白と赤を基調とした戦闘用巫女装束。


袖口には情報端末。


腰には霊子カートリッジ。


足元には霊力増幅機構を内蔵したブーツ。


古代の巫女と最先端技術を融合させた戦装束。


首元では翡翠色の勾玉が静かに揺れている。


神崎マリア。


十七歳。


出雲反乱軍技術開発主任。


そして。


八尺瓊勾玉の管理者。



「ノエシス」


マリアが呟く。


首元の勾玉が淡く発光した。


『何だ、マリア』


「ドローンから見える位置を教えて」


『二時十分方向』


『風速五メートル』


『距離五百八十メートル』


『地上高四メートル』


『目標確認』


まるで当たり前のように答える声。


人類の叡智を宿す神器。


ノエシス。


十三歳の頃から変わらない友人だった。


マリアは腰の端末を操作する。


空中へ青いホログラムが展開される。


上空を旋回するドローンの映像。


夜の路地裏。


黒装束の男。


「いた」


マリアの瞳が細められる。


霊光ガンを抜く。


銃身内部へ霊子弾が装填される音が響いた。


『左へ〇・三度補正』


『風の流れが変わった』


「了解」


スコープの中で世界が静止する。


距離。


気流。


霊力濃度。


呼吸。


心拍。


全てが数値となって視界へ流れ込む。


『そこだ』


マリアは迷いなく引き金を引いた。


轟音。


赤い閃光。


次の瞬間。


黒装束の男は地面へ崩れ落ちた。



「これで十二人目」



「おいおいおい!」


背後から声が響く。


振り返る。


黄色いジャケット。


青い髪。


太陽のような笑顔。


出雲王朝の紋章を背負う青年。


緋沙良命だった。


「そういうのは俺に任せとけって!」


「俺なら三秒で終わる!」


マリアは即答した。


「私は二秒だった」


一瞬の沈黙。


「ぐあああああ!」


緋沙良が頭を抱える。


「そういうところだぞお前!」


マリアは小さく首を傾げた。


「小次郎は何秒?」


「聞かなくていい!」


だが。


背後から老人の声が返ってきた。


「〇秒じゃな」


緋沙良は天を仰いだ。


「ほらな」


因幡小次郎。


出雲最強の剣豪。


伝説の居合使い。


老人は湯呑みを傾けながら平然と言った。


「雑兵相手に時間などかからぬ」


「だよなぁ!」


緋沙良が盛大にため息を吐く。



「にしてもよ」


「次から次へと変なもん作るよな、お前」


「頭どうなってんだ?」



マリアは少し考える。


そして。


首元の勾玉を指で弾いた。


「ノエシスが教えてくれるから」


『当然だ』


『人類の叡智を宿す神器様である』


『この程度、朝飯前だ』


「だそうよ」


「聞こえねぇんだよ!」


緋沙良が叫ぶ。


「いやでも、その服とか端末とかドローンとか全部お前が作ったんだろ?」


「まぁな」


「十分すげぇよ!」


マリアは少しだけ笑った。


四年前なら見せなかった笑顔だった。



夜空を見上げる。


満天の星々。


太陽のように人を照らす緋沙良。


剣一本で全てを斬る小次郎。


そして。


未来を見つめ続ける自分。



『マリア』


ノエシスが静かに告げる。


『敵はまだ終わっていない』


『徐福も』


『八咫烏も』


『動き始めている』



マリアの瞳から笑みが消えた。


「わかってる」



星は夜を照らすために存在する。


闇が深いほど。


その光は強く輝く。



勾玉を巡る戦いは。


既に始まっていた。

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