第四話 出雲霊戦記
四年後――
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夜の出雲。
無数の光が大地を埋め尽くしていた。
かつて神話の王国と呼ばれたその地は、今や霊力工学によって発展した巨大都市へと姿を変えている。
空には監視ドローン。
地上には霊子通信網。
高層ビル群の窓には青白い光が灯っていた。
その中でも一際高い観測塔の屋上。
一人の少女が夜風に髪を揺らしていた。
白と赤を基調とした戦闘用巫女装束。
袖口には情報端末。
腰には霊子カートリッジ。
足元には霊力増幅機構を内蔵したブーツ。
古代の巫女と最先端技術を融合させた戦装束。
首元では翡翠色の勾玉が静かに揺れている。
神崎マリア。
十七歳。
出雲反乱軍技術開発主任。
そして。
八尺瓊勾玉の管理者。
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「ノエシス」
マリアが呟く。
首元の勾玉が淡く発光した。
『何だ、マリア』
「ドローンから見える位置を教えて」
『二時十分方向』
『風速五メートル』
『距離五百八十メートル』
『地上高四メートル』
『目標確認』
まるで当たり前のように答える声。
人類の叡智を宿す神器。
ノエシス。
十三歳の頃から変わらない友人だった。
マリアは腰の端末を操作する。
空中へ青いホログラムが展開される。
上空を旋回するドローンの映像。
夜の路地裏。
黒装束の男。
「いた」
マリアの瞳が細められる。
霊光ガンを抜く。
銃身内部へ霊子弾が装填される音が響いた。
『左へ〇・三度補正』
『風の流れが変わった』
「了解」
スコープの中で世界が静止する。
距離。
気流。
霊力濃度。
呼吸。
心拍。
全てが数値となって視界へ流れ込む。
『そこだ』
マリアは迷いなく引き金を引いた。
轟音。
赤い閃光。
次の瞬間。
黒装束の男は地面へ崩れ落ちた。
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「これで十二人目」
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「おいおいおい!」
背後から声が響く。
振り返る。
黄色いジャケット。
青い髪。
太陽のような笑顔。
出雲王朝の紋章を背負う青年。
緋沙良命だった。
「そういうのは俺に任せとけって!」
「俺なら三秒で終わる!」
マリアは即答した。
「私は二秒だった」
一瞬の沈黙。
「ぐあああああ!」
緋沙良が頭を抱える。
「そういうところだぞお前!」
マリアは小さく首を傾げた。
「小次郎は何秒?」
「聞かなくていい!」
だが。
背後から老人の声が返ってきた。
「〇秒じゃな」
緋沙良は天を仰いだ。
「ほらな」
因幡小次郎。
出雲最強の剣豪。
伝説の居合使い。
老人は湯呑みを傾けながら平然と言った。
「雑兵相手に時間などかからぬ」
「だよなぁ!」
緋沙良が盛大にため息を吐く。
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「にしてもよ」
「次から次へと変なもん作るよな、お前」
「頭どうなってんだ?」
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マリアは少し考える。
そして。
首元の勾玉を指で弾いた。
「ノエシスが教えてくれるから」
『当然だ』
『人類の叡智を宿す神器様である』
『この程度、朝飯前だ』
「だそうよ」
「聞こえねぇんだよ!」
緋沙良が叫ぶ。
「いやでも、その服とか端末とかドローンとか全部お前が作ったんだろ?」
「まぁな」
「十分すげぇよ!」
マリアは少しだけ笑った。
四年前なら見せなかった笑顔だった。
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夜空を見上げる。
満天の星々。
太陽のように人を照らす緋沙良。
剣一本で全てを斬る小次郎。
そして。
未来を見つめ続ける自分。
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『マリア』
ノエシスが静かに告げる。
『敵はまだ終わっていない』
『徐福も』
『八咫烏も』
『動き始めている』
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マリアの瞳から笑みが消えた。
「わかってる」
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星は夜を照らすために存在する。
闇が深いほど。
その光は強く輝く。
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勾玉を巡る戦いは。
既に始まっていた。




